じゃあまたね 完全版

清原なつの先生の猫マンガであり自伝マンガでもある

じゃあまたね 完全版 清原なつの
かしこ
かしこ

金沢大学の薬学部に通いながら少女マンガにSFを描いていた清原なつの先生。『じゃあまたね 完全版』は、編集者さんからの「猫のマンガ描きませんか?」という提案をきっかけに描かれたそうで、猫のタイガーを飼い始めた少女時代からタイガーが亡くなる大学卒業までを回想した自伝マンガになっています。 読んでみてオリジナリティに溢れた作品がどうして生み出されたのか少しだけ分かったような気がしました。りぼんでデビューしたのが偶然だったのには驚いたし、ペンネームにまつわるエピソードも面白かったです。就職ではなくマンガ家を専業に選ばれた理由も先生らしいと思いました。 大学生の頃にはすでに花岡ちゃんシリーズも描き始めていたそうで、これから先の清原なつの先生のまんが道も知りたい!というのが正直なところですが、タイガーが亡くなってから40年ペットロスだと語られていたので、これはこれで完結するべき作品なのでしょう。でも気が向いたらぜひ続きを描いてくださいね! ちなみに紙版の単行本には収めきれなかった複数のエピソードが電子版には収録されています。なので電子版はタイトルが『完全版』となっています。

私の保健室へおいで…

人が持つ、しなやかな強さ

私の保健室へおいで… 清原なつの
pennzou
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『私の保健室へおいで…』は2002年にハヤカワ文庫JAレーベルにて発行された作品集だ。収録作品は81年〜90年作までと年代で見れば幅広いが、版元の紹介文に「スタイリッシュなラヴロマン」と謳われている通り、全作に恋愛要素を含んだ統一感のあるラインナップである。 こう書くと、恋愛最中の高揚感であるとかシャープな駆け引きみたいなのを想像されるかもしれないが、清原先生の作品ではもっと引いた視点から恋愛が描かれる。それが清原なつのシグネイチャーとしか言いようのない個性をマンガに宿している。 清原先生は、思い込みや呪縛などによって凝り固まってしまった心がフッと解きほぐされる瞬間を描く。 そういった人が持つしなやかな強さに触れた時、自分の心も軽やかになった気分になる。 この特色は、恋愛要素を主軸とした本書において特に傾向が強い。清原作品における恋愛は誰かと誰かの交流であり、他者により自己が変化することがあるためだ。それが本書を魅力的なものにしている。「新説 赤い糸の伝説」とか本当に最高…… 本書から清原先生に入門した場合、次に読むのは何がよいだろうか。 発表当時のコミックスは絶版であるが、近年に月刊フラワーズでポツポツと発表されている作品を除けば、ほぼ全作品が文庫などで網羅されている。(電子書籍化も文庫については殆ど為されている状況) そのゆえ間口がとても広いので、コレという名前を挙げるのは難しい。各々の関心領域と描かれている題材がマッチしている作品が適していると考える。 本書から遠くないニュアンスのものを読みたいのなら『春の微熱』、もしSFが好きであるなら『アレックス・タイムトラベル』、歴史物であれば『飛鳥昔語り』、性に纏わる領域に関心があるなら『花図鑑』あたりだろうか。これらをまとめた清原先生の総体と向き合うのなら自選傑作集『桜の森の満開の下』。清原先生が生み出した発明的キャラクター・花岡ちゃんが活躍する『花岡ちゃんの夏休み』もいい。 ちなみに、マイベスト清原なつの作品は『春の微熱』収録「群青の日々」です。