いそあそび

楽しく食べて、ほのかに感じて 田舎の海岸の中学生日記

いそあそび 佐藤宏海
名無し

題名を見て 「海って楽しいよ!」「海はいいところだよ!」 という感じのマリン・レジャー漫画かと思って読み始めた。 だが冒頭から出刃包丁を棒の先につけた銛で 魚を狙っていて、あれ、違うみたい、と思った。 更に、あからさまに漁業権無視のサザエ獲りとか始めたので あーこりゃ中途半端なダメなサバイバル漫画かと思った。 ソレも違った。 そのへんは話の導入部、伏線的な展開だった。 父親が事業に失敗し、海岸沿いの田舎で 一人暮らしをすることになった少女。 半自給自足的な生活をせざるを得ず、 海に入って食材を狙うが上手く行かない。 そこに地元の中学生男子との出会いがあって・・ 当初は海の食材の採り方や料理の仕方が中心で、 レジャーとしての捕獲・採取が楽しい、とかの 描写はあまりなかった。 食材ゲット!腹が満たせる、嬉しい! という感じはあっても。 「いそあそび」というより「いそごはん」 という感じがした。 だが、ほとんど常に腹ペコ状態の少女も 意外とタフで前向きなキャラだったりするので 悲壮感とか貧乏くささはあまり感じない。 それでいて食材をゲットしたときには とても嬉しそうな笑顔や仕草を見せる。 なので、「海って楽しいよ!」と ストレートな展開の話で見せられるよりも、 一周回った上で「海って楽しいところなんだな」 と感じさせられた。 サバイバルというほどの厳しい狩猟を行うわけではない。 我を忘れて没頭するほど楽しい遊びをするわけでもない。 海沿いの田舎の集落での生活を、都会暮らしより素晴らしいと 主張しているわけでもない。 友達止まりで恋とか愛にはほど遠い中学生な夏。 面白くは描いているが、それを絶賛しているわけでもない。 海がある集落の生活だから、 食べることとか遊びとか、生活の殆ど全てに海が関わるんだよね、 という感じの、 一見は奇抜な設定のようで、結構色んな部分で 自然体の中学生の海岸物語だ。