“EMBRYO”=胎児、胚などの意。――ある日、学校の裏の森で得体の知れない虫(ワーム)に首筋を刺されてしまったエリ子。その日の放課後、エリ子は図書室で怪しい噂のある司書の安房(あわ)に突然襲われるが、どこからともなく現れた無数の虫(ワーム)たちに安房が噛み殺されてしまい……!!
1994年に講談社のアフタヌーン誌にて発表された小川幸辰の『エンブリヲ』は、虫とヒトとの共生を主題とした“生物學(バイオロジカル)ホラー”として人気を得、2008年には出版社を代えてエンターブレインより復刻版が刊行。新しい世代のファンを獲得し、その色あせない魅力が再び評価された。小川幸辰は、その徹底的にリアリズム的な筆致によって、紙の上に現実を描き上げ、そしてミステリ・オカルト的な幻想との融和を果たすことに成功している。今回の作品は出版社から「『エンブリヲ』の精神的な続編の執筆」を依頼されたことにより企画された。千葉県・印旛沼周辺の河童伝説を題材とし、実際には生息していないはずのもの、しかし多くの報告が寄せられるものを漫画で描き上げることにした。物語は3話から構成される。第1話&2話は80ページ強。しかし第3話は186ページとなった! この重厚かつ真摯な作品は、一度雑誌に連載されてからまとめるのではなく、直接、単行本描き下ろし作品として発表されることになる。舞台は東京都心と国際空港を結ぶ土地に拓かれた“万葉ニュータウン”。照葉樹の暗い森に包まれたこの街で連続失踪事件が起こった。犯人の特徴は、全身をうろこでおおった、まるで獣のような……。唯一無比の民俗学(フォークロリスティクス)ホラーとして、小川幸辰による共生の物語が、ふたたび刊行!
町外れにその威容を誇る古びた洋館、栄光館(えいこうかん)。幼くして両親を亡くした常世田真菜美(とこよだ・まなみ)とその姉・律子(りつこ)は、厳格な祖父・耕介(こうすけ)のもとで暮らしている。耕介の意向に従い律子の婚約が成ろうとしたその当日、老人は惨殺屍体となって発見された。しかも、現場は精妙完璧な密室を構成していたのである……。いったい、何者が、いかにして、呪われた一族の当主を屠(ほふ)ったのであろうか。殺人者が再びその邪悪な牙をむくに及び、謎めいた青年神父・桜総一郎(さくらそういちろう)が真相解明に乗り出す。
虫好きで快活な女子高生、布良ユリ子は、ある日森の中でイモ虫のような昆虫に首筋を刺された。生物部の羊歯野に相談するが、虫の正体は不明。しかしその日から、その虫の仲間がユリ子を守り始める。図書館司書の男に犯されそうになったとき、大量に虫が出現して、司書を殺害してしまったのだ。その虫は、発声器官を持ち、どうやら人間の言葉を理解するらしかった。水質汚染による突然変異か? 新たなる進化の産物なのか?他にも生存限界まで巨大化して死んだ幼虫が見つかる。幼虫のまま成熟するしかなかった虫は、ユリ子の身体に卵を産み付けて構造変化を果たし、成虫になろうとしているのだ。