つつい先生(=筒井いつき先生)の作品集の中では、白場が活きた画面だ。割と明るい光景、光溢れるシーンを印象的に描きながら、描く感情もどん底の救われなさからは少し遠い。女性達も明るい人がいつもより多い。 だからといって、しんどく無いとは言っていない。 報われない恋、秘めた苦しい心情が多いし、「悪い」事も描く。男の関与も多分にあるが、つつい先生の場合「男の気持ち悪さ」の描写が凄く、そこを読みたい方にはいつも通りの先生です、とお伝えしたい。 ●『あなたと星と夜明けに見た夢』…親友に請われて一緒にラブホ。無邪気にはしゃぐ彼女の一方で……切ない。 ●『メルティーブラック』…部屋の前でずぶ濡れのJKは隣人♂の彼女。「大人」へ背伸びする「子供」の彼女へ募る想いの苦しさ。 ●『指先から滑り落ちるバレッタ』…虐めていた女子に売春の現場を見られる。黙認の見返りに……見事に心をぶん回された。 ●『アストロロジーは廻る』…一人で生きると決めていたのに、星座占いに振り回される。こちらも一緒に心を殴られるが……。
『少女支配』『この愛を終わらせてくれないか』の筒井いつき先生の、別名義の短編集。別名義でも、特有の暗い感情、理解の及ばない暗部の表現は変わらない。 この短編集をやや強引に纏めるなら、〈片想い百合〉ではないかと思う。それは明らかにそう描かれている物から、ある意味での両片想い、素直になれないというレベルの物まで幅広いが、一方通行な残酷さがある。 そしてそこにある暗さ、陰湿さ、負の感情の強さが凄い。つつい先生の作品を一つ読み終わると、生きて帰って来たという謎の安堵が沸き起こる。 ●『お前は私の死んだ妹に似ている』…自分に劣等感を与えて死んだ妹と、瓜二つの後輩が出来た。懐く後輩と、妹を重ねる姉。 (巻末『dear my sister』はこちらの過去話) ●『ジャックポットに微笑んで』…容姿端麗で性格の悪い子の唯一の友達は、彼女を男との恋愛にけしかける。それは伸るか反るかの大博打。 ●『仮定法過去完了』…親友の結婚式。ネックレスをつけてやる手が震える。 ●『見ている』『また、見ている』…綺麗な先輩を見つめる。その視線に先輩は気づいた。 ※異性愛の影のある作品が多いが、男はそっちのけなので私は気にならなかった。
百合姫本誌を買ってない人は、是非読んでみていただきたい読み切り短編集。2018年〜20年までの掲載作。物語の多様さに百合ジャンルの広がりが見て取れる一方、絵柄は「百合姫らしさ」を感じるものが多く、美しくて読みやすい一方、もっとバリエーションがあってもいいかな…と思うと、時々ちょっと異質な絵柄が登場したりして、全体として飽きが来ない。 —— 各作品の感想を、ツイッター漫画のタイトル風に+一言感想で。 ●君とゆく、(嶋水えけ先生) 己の空虚に絶望した少女がお嬢様に世界を教える百合/互いに足りないものを与え合い、支え合う関係性尊い。 ●スノウトーク(純玲先生) 失声の演劇部員が恋したお姉さんと発声練習する百合/声がよく通りそうな冬と、春の訪れによる変化が印象的。 ●渚にて。(tsuke先生) 海が好きな内気女子と唯一の友人が海に佇む百合/最後のシーンに向けて静かに穏やかに進む感じがたまらない。 ●蔓日々草(さかなや先生) 友人の結婚式のドレスを選びながら友人を手放す百合/愛とか恋とかじゃない関係性でもこんなに尊い。泣けるわぁ… ●わたしのこい(のちむゆ先生) 幼馴染の気を引きたくて市販薬で体調悪くなる百合/執着が昏くて重い、そして切ない。薬を悪用している感じが昏さを増す。 ●あの日の続きをしましょうか(もくはち先生) 私に恋する女子高生の情報に聞き覚えがある百合/十数年後に突きつけられる恋と間違い。どんな感情も間違いということはない。 ●ハイドアンドスイーツ(つつい先生) 恋に恋する女の子が現実の恋の怖さを知る百合/それに気づけたこと、教えてくれる存在の大切さ。最後ほっとした。 ●桜日和のへたれなワンコ(辻柚那先生) 姉が担任になったら親友が姉に惚れたかも百合/これは短編にするのが勿体無いかも。姉と妹、親友との過去が見たい。 ●絵の具の匂いがした(柏木ツキコ先生) 絵のモデルをするうち変な先輩に惹かれる百合/自分の無い人が、独特で強い意志を持つ人に惹かれる話は、先を読みたくなる。 ●お誕生日おめでとう。(さかさな先生) そっくりな親友が同じでいたいのに変わっていく百合/思春期の頃の親密さの、距離感の複雑さと切実さに心を揺さぶられる。 ●ないしょの向日葵(篠ヒロフミ先生) 恋人に真面目に進路を考えろと叱られる百合/好きな人の眼差しに触れて変わろうとする成長譚尊すぎる…真剣さは人それぞれ。 ●軽木さんと荒重さん(日野アラシ先生) 軽薄女子と想いが重い女子が恋愛話する百合/全く価値観の異なる者同士が互いにツッコミ合うトークがたまらなく笑える。
美しい同級生に憧れて全身整形した主人公は自信に満ち溢れた会社員生活を送っていたが、美人同級生が後輩として入社してきた。すべてがバレて人生が終わるかと思ったら自分の正体に気づかない様子。しかも愛の告白されてしまった。 美しい同じ顔が2つ並ぶと壮観ですね。ふいに主人公が整形前の肉体で描かれた場面にはヒヤリ。真実も2面あって見応えありました。彼女達の関係の続きが読みたいです。連載にならないかな。
つつい先生(=筒井いつき先生)の作品集の中では、白場が活きた画面だ。割と明るい光景、光溢れるシーンを印象的に描きながら、描く感情もどん底の救われなさからは少し遠い。女性達も明るい人がいつもより多い。 だからといって、しんどく無いとは言っていない。 報われない恋、秘めた苦しい心情が多いし、「悪い」事も描く。男の関与も多分にあるが、つつい先生の場合「男の気持ち悪さ」の描写が凄く、そこを読みたい方にはいつも通りの先生です、とお伝えしたい。 ●『あなたと星と夜明けに見た夢』…親友に請われて一緒にラブホ。無邪気にはしゃぐ彼女の一方で……切ない。 ●『メルティーブラック』…部屋の前でずぶ濡れのJKは隣人♂の彼女。「大人」へ背伸びする「子供」の彼女へ募る想いの苦しさ。 ●『指先から滑り落ちるバレッタ』…虐めていた女子に売春の現場を見られる。黙認の見返りに……見事に心をぶん回された。 ●『アストロロジーは廻る』…一人で生きると決めていたのに、星座占いに振り回される。こちらも一緒に心を殴られるが……。