デメルサは悲しい思い出にとらわれたイギリスを離れ、太陽の光が降りそそぐギリシアの島で新生活を始めようとやって来た。引っ越し先のアパートメントの家主ニコラスは笑顔が素敵な男性で、ずっと凍っていた心がときめくのを感じ、かすかな期待を抱く。しかも彼はデメルサが働くクリニックの医師で、上司だとわかる。しかし、甘い気持ちは新しい職場のあまりの忙しさに吹き飛んだ。ミスをして落ち込んでいた彼女に、ニコラスはやさしい言葉をかけてくれて…。
ルーシーはロンドンの病院を辞め、逃げるようにイタリアへと向かった。本気で愛したと思った男性が大嘘つきだったのだ。身も心もぼろぼろの彼女は妹の代診医をひきうけ、仕事に没頭する。ローマは情熱の街。ハンサムな医者ヴィットーリオにバーで甘くささやかれ、大好きなオペラに誘われても私にややこしいロマンスは必要ない。たとえ彼の謎めいた瞳に自分と同じ悲しみがかいま見えても、恋に落ちて傷つくようなまねは2度としない。そう決めたはずなのに…。
医師のアリッサは8年ぶりに思い出深いパリのクリニックを訪れた。ピエールに出会い、愛しあい、別れを告げたこの場所――きっぱり過去と決別し前に進むため、彼女はここへ戻ってきたのだ。ところが、今はカリブ海の島に住んでいるはずのピエールが、急病で倒れた院長の代理として、なんと同じ医院で働いていると言う。8年前、突然姿を消したアリッサを彼が許しているはずがない。だけど愛するあなたには、別れの本当の理由を知られるわけにはいかないの――…。