「ひとりでも頑張りなさい」母の教えどおりに生きてきた守は、何でもひとりで解決しようとするクセがある。それに気付いた年下の恋人・カケルは肝心な時に頼られない自分に不甲斐なさを感じていた。けれど一緒にいると守は本当に幸せそうに笑うから、お互いへの想いを信じられている。きっといつかは全部を見せてくれる、そう思っていた矢先、とある事件をきっかけに2人の気持ちはすれ違ってしまって…。
彼の名は透。小説家の西山浩一は、自作の登場人物・トオルにそっくりな彼に思わず声をかけた。17歳、端正な容姿、生意気な口調、そして同じ名前。運命的な出会いに浮かれていたが、似すぎていないか? ある時、トオルに怪我をさせたら透は包帯を巻いて現れた。小説のラストでトオルは死んでしまう。西山はだんだん怖くなってきて…。表題作[とおるの話]ほか、全4編それぞれにかきおろしを加えた三崎汐初期作品集。【収録作品】『喪失につき、』『泥中のはちす』『僕は行くよ』『とおるの話』
毎日、必死に隠してる3人の大学生が抱える、人に言えない恋心。彼女持ちの友達に焦がれる杉村、ノンケに想いを寄せるゲイの遠山、親ほど年上の相手しか好きになれない里。それぞれの気持ちが触れ合ったとき今までの関係じゃいられなくなった。いびつで未熟な彼らの恋が行き着くかたちはどんなだろう?表題作[こんな事になるのなら]のほか[醜くひかる]も収録。
家庭の事情で転校した大沢春介(おおさわしゅんすけ)は、 クラスでひとり浮いている矢河春希(やがわはるき)と 行動を共にするようになる。友達以上に互いが特別な存在となっていたが、 幼いふたりは周囲の環境に振りまわされていって……濃密なネームと心の奥底に触れるような描写で話題をさらった、 三崎汐の連載作がついに単行本化!!
高校生の時からお付き合いしていて、進学を機にいっしょに地元を出たおーすけとみーくん。大学寮では同室だし、ひとも羨む相思相愛――のはずなのに、ふたりのことは、絶対に誰にも言わない約束。この部屋の中だけの秘密の関係が、幸せだけどもどかしいおーすけは……? 城戸大学男子寮305号室にささやかな嵐を巻き起こすことになったふたりの後輩・樹くんの恋もたっぷり収録。電子限定おまけ付き!!
「いいなおまえらは、大した悩みもなさそうで」大人の目にはそんなふうにしか見えないけれど、一人ひとりのちょっとした「ほんとう」は、ときに格好悪くて、ときに切実。お調子者でムードメーカーの倉本、陸上バカで走るとき以外は寝てばかりの佐々木、真面目でちょっと口うるさい江崎、可憐な顔にケンカ傷の絶えない滝田、そしてクラスの誰より大人びて穏やかな瀬尾――ある男子校、たまたま同じ教室で過ごすことになった彼らがそれぞれに秘める、愛と懊脳と恋と劣情は……?
ひそかに想い続けてきた幼なじみ・睦月が、ぽろぽろ涙をこぼしている。そんな夢を内田が見た翌日、睦月の初恋のひとが見つかった。「睦月のよさをわかっているのはこの世界に自分ひとりだけで、もしかすると睦月は一生、俺の隣にいるかもしれない」胸に確かにあった期待を砕かれた内田は、突然のなりゆきを呪わしく思うが――。そこは夢。けれど幻や物語なんかじゃなく、現実の延長線上、はしっこのはしっこで確かに繋がっているところ。夢の中ひとり佇む「彼」と出会った悩み多き青少年は……? 三崎汐が夢とうつつのあわいに紡ぐ連作集、描き下ろしも収録。
やっかみ半分からかい半分で周囲から「スカしている」と遠巻きにされる転校生の秋野。そんな彼にただひとり親切に声をかけたのは、いつもにこにこしていて休み時間には内職に励み、クラスメイトの雑用をささやかな報酬で引き受ける八千代だけ。もうすぐ妹の誕生日だから――そう言って嫌な顔ひとつしない八千代に少しずつ、確かに惹かれていく秋野だが……?表題作ほか、「猫」シリーズ連作と読みきり作品、それぞれのその後を描き下ろしショートとして収録。あまくてときどきチクリと苦い、粒ぞろいの作品集。