
主人公、刃の魅力

漫画ならでは力を持った記憶の伝承
矢口先生が災害を元にして描いたものとしては、三毛別羆事件の『羆風』が有名だと思うが、こちらも壮絶だった。 当時の新聞や写真、聞き取りによる実体験に脚色を加えたドキュメンタリーになっており、単に分かりやすいとか読みやすいというだけでない、語り手としての力を持った作品になっている。

ジャンプらしからぬ作風
2018年2月に週刊少年ジャンプ本誌に掲載された読切。あまりに毛色が違いすぎて衝撃を受けた。全くジャンプ感がない!! 画風・語り口ともに少年漫画の文法を全く意識しておらず、ジャンプの編集部がなぜこれの掲載を決めたのか全くもって謎。チャレンジングすぎる…! ビーム・アフタヌーン・flowersあたり(この辺の雑誌好きです)に載ってそうな、情緒・雰囲気を大事に描かれた「非エンタメ作品」ですごく良かった。 ただジャンプ・ヤンジャン・別マぐらいしか読んだことない層には微塵も刺さらないのでは…?と気になった。

家族の形
父子家庭の弥一と夏菜の元に、カナダから弥一の双子の弟の涼二と結婚したマイクが訪ねてくる。 弥一は、マイクが夏菜に親戚のおじさんと自己紹介したことに違和感を感じる。それは、涼二から以前にゲイだと告白されていた時から心のどこかに引っ掛かりを感じ、カナダに行ってしまった弟と疎遠になったことの原因でもある。 しかし、3週間マイクとの生活を続けていく中で、周りの声や反応、日本でのゲイという存在に対する見えない差別を感じ、自分自身も同じく差別していたことに気付く。 娘の夏菜は、友達にカナダ人のおじさんがいることを自慢し紹介したいが、友人の家族が悪影響を及ぼすという理由でドタキャンされる。 子どもの素直な感覚と、大人の世間体を気にする感覚のズレも、よく描かれている。 ゲイの人への差別、カミングアウトのタイミング、大人のいらない噂話、まだまだ見えないところではびこっている社会に、人間としての家族としての大切なものを教えてくれるとても素敵な作品です。

MRスティールの頭のやつは髪なのか
※ネタバレを含むクチコミです。

全員くたばった方がいい
偏差値、大学ランキング、知名度、就職のしやすさ、モテ、有名人の輩出数…およそ研究という大学本来の価値とは別の部分で日々比べられ、価値観を押し付けられてたらそりゃ悩むよなと思う。 この作品で出てくる話題もほとんどは学業以外のサークルだったりバイトだったり就活だったりで、こんなことに悩んでる時点でくたばった方がいいのだが、ある意味ではこの世代の特権とも言える。実際こういう悩みを持ったことがある人間の方が分かり合える気がする。 私もまだこういう自意識があってゴダールとか観れない。

知ってはいけない魔性の魅力#1巻応援
異常な好奇心を抱えた主人公が、転校先の学校で出会った先輩に恋をする。 ただし、この先輩が「性別不詳」 出会ったときは「女性」だったが、再び出会った学校では「男子生徒」として現れ、主人公は混乱する。 周囲に聞いても、先輩は7不思議みたいなもんだと濁されて、結局どっちかはわからない。 そんな先輩と、ある約束を交わして・・・という流れ。 すごいのは、直接的な性表現はないのですが、それでも滲み出る圧倒的エロス。 私はストレートなんですが、先輩男かもしれないのに思わずグッときましたよ。 男性、女性ではなく「魔性」とは言い得て妙です。 また、上記に加えて、ホラーともとれる不可思議な描写が随所にあって、作品全体に漂う不思議な魅力にひきつけられました。 まだ1巻なのですが、2巻がどうなるのか全く読めないので 続きが楽しみです。

西炯子先生の地元愛
西炯子先生が地元・鹿児島の新聞で連載していた8コマ漫画です。中学一年生の「南のこ」ちゃんを主人公にほのぼのとした日常が描かれています。結構ガッツリ方言も使われていて「げー(家)」とか注釈がないと分かんないのも多かったけど、お酒好きなお父さんがお正月に飲んでるのが焼酎だったり、鹿児島らしさがたっぷりでした!西炯子先生ってもっとクールな人かと思ってたけど故郷愛に溢れた方なんですね。連載時に掲載された作者コメントも漫画と一緒に載っていてそれを読むのも楽しかった。誰かにあげる予定のバレンタインチョコを我慢できずに何個か食べちゃってそのままの状態で渡したことがあると書いてあって驚きました。豪快というかお茶目というか…(笑)いい意味で西炯子先生の印象が変わりました。

2人のラジオが聴きたくなる
コンプレックスを抱える人間にラジオはいつも優しい。滑舌の悪さという相性悪そうなコンプレックスでさえも、ラジオは個性として受け入れてくれる。 ラジオってほんといいものですよね……。 というラジオ賛美のお話ではないんですけど、青春の眩しさが詰まった素敵なストーリーでした。 主人公の桜井りこは滑舌の悪さがコンプレックスで、なかなか人とコミュニケーションが取れない女の子。 入れる部活を探していたところラジオ好きの阿出川と出会い、共に放送部として活動するすることに。 お手伝いはするものの、放送で喋ることは拒むりこですが……。 阿出川がめちゃくちゃかっこいいんですよね。流暢なトークとラジオ愛の深さが魅力的です。 りこちゃんの滑舌を「君の個性で魅力」と言い切るところもかっこいい。この人の言葉には嘘がないんだなと思わせてくれます。踊り場リスナーなのも好感が持てる…サイコゥ! 心を開いたりこちゃんとの掛け合いも面白いし、この放送部のラジオが聴きたくなります。 青春ってラジオって漫画っていいものですね……!

大家と戸建て同居の謎 #1巻応援
恋人(女性)と別れた漫画編集者のお姉さん(27)が心機一転、フラットハウスにお引越し。しかし何故か天井裏には大家さんが住んでいて……という、ちょっとヘンテコな同居百合。なかなか愛らしいです。 顔が良くて甘え上手だけれども、生活力のない大家さん(19)。元々世話焼きのお姉さん、あれこれ手を貸すうちに大家さんに妙に懐かれて、困惑しつつも大家さんは愛らしいので、面食いのお姉さんまんざらでもない感じ。 この大家さん、実はちょっと……どころじゃない秘密があるのですが、この顔の良さ、愛らしさ、納得。その辺の裏事情はまだ詳しく明かされないので、二巻以降の展開も楽しみ。 戸建て暮らしの夢は、やっぱりタイトル通り庭ですかね。最近は戸建てでも庭のない家が多いですが、それは「庭」には夢と共に、面倒な現実もついてくるから。二人が住む家も庭がありますが、早速一巻で夢も現実も見せてくれる。それを二人で楽しく受け止めて過ごす様子はこれからの百合展開を、大いに期待させてくれます。

映画化のこと
原作ファンはあんまりじゃっていわれたけど、 普通によかった。

これが宇宙(リアル)だ!
これが宇宙(リアル)だ! あさりよしとおが描いた、ホンキでホントの空想科学マンガ ※帯より 科学マンガに定評のある あさりよしとお氏のコレもまた優れた作品 オムニバス形式で書かれており、一話一話の読みごたえもしっかりある そして、オムニバスでありながら各話で繋がりを感じさせる作りも、物語を深読みしたい私には好きなポイント 同氏の 小惑星に挑む が はやぶさ にフォーカスした作品だったのに対して、こちらは宇宙生活をテーマに様々な切り口でわかりやすく宇宙について自分たちに教えてくれる いや、難しい部分もあるから、サラッと読んで深く理解したい場合はもう一度読む感じが良いかもしれません 全二巻で完結してしまっているが、また続きを読みたい作品です
※ネタバレを含むクチコミです。