概要
「天才」と称賛されながらも、49歳の若さで逝去した孤高の漫画家・坂口尚。 虫プロでアニメーターとしてのキャリアを積み、1969年に「COM」誌上で漫画家としてデビュー。実験精神に富んだ斬新な画面構成、そして完成度の高い洗練された絵柄は、読者に鮮烈な印象を残しました。80年代には抒情性溢れる繊細なファンタジー短編を多数発表。その後はシリアスなテーマを題材にした大作に挑み、「石の花」「あっかんベェ一休」といった傑作を生み出しました。緻密に計算された画面設計、現実と幻想が交錯する重層的なストーリー構成、哲学的な問いに根ざした多元的な世界観......坂口尚という作家を語るには様々な切り口がありますが、一貫して作品世界の中心にあるのは間違いなく「絵」の魅力であると言えます。単なる記号的な役割を超え、「絵」が自立した存在感を持って読み手に語りかけ、言葉よりも雄弁に深遠な物語の世界へといざなうのです。 本展では、坂口尚の「絵」の魅力が凝縮された傑作ショート『イラストファンタジー』全原画を展示する他、初公開となる原画やスケッチ作品等を多数展示します。