『マグネット島通信』、『タネも仕掛けもないラブストーリー』の伊藤正臣さんによる、オムニバス形式の恋愛物語です。 思春期の少年少女たちに湧き起こる感情が、さまざまな気象の変化に擬えて描かれています。『天気の子』の番宣ではありませんが、天気ひとつで私たちの気持ちはいとも容易く変わってしまい、しかもそれは恋心と同じようにアンコントローラブルです。 『マグネット島通信』の時に絵の魅力が更に向上して、そこで描かれる島の空気感がとても心地良かったのですが、その描画力が今回は天気という不定形のものを描く際に万全に生かされていると感じます。 基本的に1話完結で、他のお話で登場したキャラクターが別のところでも登場し、全く別の側面を見せてくる構成により人間の多面性を巧みに表せています。ストレートに悪役として描かれる人物にも、もしかしたら裏では何かあるのかもしれないと思わされます。 個人的に特に好きなのは、「天気雨の定理」。中学時代に学年1位と2位だった男女が、高校でも周囲の雑音を遠ざけて勉強に集中したいがために、お互いに付き合っていることにするというお話です。 「梅雨明けモラトリアム」で、タイプではない男子に告白されて真剣に悩む話もリアルで味わい深かったです。
兎来栄寿
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