あらすじ桜花賞で2着に入賞して絶好調の上杉圭(うえすぎ・けい)は、カスティリオーニの言葉に「新しい世界」を意識する。一方、人間的に成長した真田(さなだ)は、調教師・大野(おおの)から騎乗依頼されたペリーウィンストンが、上杉の父親が関係している馬だと知る。そして、豪雨の中で発走となった皐月賞で、上杉は騎乗するチェリーブラッサムのみなぎる生命力を感じて……!?
これは競馬学校を卒業した主人公が、プロとして歩んでいく過程を描く成長物語。原案はダービー4勝の武豊で、走らせる側の心理描写は説得力あり。でもこの作品の特筆すべき所はそこではありません。異様に高い競馬濃度、そして深い競馬愛があるということが競馬好きの心をくすぐってくれるのです。全編ほぼ競馬のことのみに終始し、余計な日常はそぎ落とされています。主人公親子の団らんやデート場面でも話題は競馬オンリー。描写も渾身の一筆という体で、競走馬はあくまで大きく力強く、コースのラスト100mは本当に長く険しく見える。そんな舞台で研ぎ澄まされるジョッキーのたくましい精神。読めば間違いなく気合いが入ります。競馬を知らない人でも、きっと熱狂するファン心理がわかるのではないでしょうか。