僕の名前はジョン・キャントリー。イギリス人。いわゆる戦場カメラマンだ。日本では友人の名前「今井新」で活動している……なぜか? 日本の東北地方は2011年の震災後、独立の機運が高まり、ついには戦闘状態となってしまった。いまや独立を果たそうとしているこの地には、海外の武装組織もやってきて戦況は泥沼化している。その国を調査するため、僕は常磐自動車道を北上し、最前線である福島県に入ろうとしていた。“F”として国外で高く評価される本作は現代美術家・今井新が描いた3.11以後の東北のパラレルワールド。そこにあるのは不都合なフィクションか、それとも――。
「そう遠くもない昔、精華寮は確かに存在した。様々な国の人間が衝突を避けて暮らしたが、建物は燃え尽きてしまった。」 怠惰に生きるごく普通の青年・イマイはMr.コライというホームレスの老人から、精華寮なる建物に住んでほしいと依頼される。そこで青年が見たものは「生活そのもの」であった。Mr.コライは言う。「故郷」とは、人の生まれ育った場所を示す言葉だ。だが必ずしも生まれ育った場所を故郷としなくても良いのだ。かつて実在し、焼失した集合住宅をモチーフに現代美術家・今井新が描く、確かにそこに在った“生活の記憶”。
東京都内に住むイマイ君とミキちゃんのカップルは横浜、みなとみらいのど真ん中・関内に引っ越すことに。「ミキと俺は違うヨコハマが見えてると思う」。煌びやかな景色の分だけ影ができる。関内で暮らす対照的な二人の生活。そこでは、互いの見えなかった部分が忘れ去られた横浜の風景とともに照らし出される。2020年、今井新が関内文庫での個展に出展した作品。