朝に淹れる一杯の珈琲は、自分にとって特別な儀式。 自分の心と体の調子を確認するように、ゆっくりと静かに過ごす朝。ここはオランダの港町にあるカフェ、その名も「KISSATEN」。 「おはよう」。やってきたのはペーター。彼は商店街では知られた存在。来る日も来る日も、商店街の一角にずっと立っている。聞くところによると彼は心の問題を抱えていて、家で一人にならないように「ここに立っている」のだという。 ――私は想像することができる。いつの日か彼がお店に来て、一緒に朝の珈琲を飲みながらおしゃべりをする時間を。その美しい光景を。 ここに来てから私は多くのことを想像できるようになった。それはどうしてだろう。海辺の町で珈琲をつくりながら、私はいつも考えるのだ。