恵比名と麻生は軽音楽部の仲間だった。二人は想い合っていたがお互い思う所があり言い出せずにいた。麻生は趣味の軽音楽部生。卒業したら普通に就職する予定だったが、恵比名はプロ思考で本気でプロになるためチャレンジを続けていた。二人の道は違えている。そうお互い分かっていたのだ。ある夜、恵比名は麻生に口づけをした。耐えきれず逃げ出す麻生の背に掛ける恵比名の声は弱々しく雪に消されて行った。それから五年目の冬。麻生は会社帰りに何となく目に留まった便箋を買う。そして今やプロバンドとして成功した恵比名に手紙を書くことにした。それは二人にとっての小さな賭けであった。
こおはらしおみ厳選作品集「銀色の虚空」(元商業誌作品)富士航空の北見と西百合は一夜を共にしてから疎遠になっていた。西百合が北見を避けていたのだ。そんな二人がランカウイ島で再会する。「HIGH LIFE」(同人誌分再録)「銀色の虚空」後の二人の忍び会い。「五年目の手紙」(元商業誌作品)高校軽音楽部の麻生と恵比名は、惹かれ合いながらも卒業を機にそれぞれ、音楽のプロ、普通のサラリーマン、と道を違える。そんな五年目のある冬、麻生は恵比名にあの日の答えを出す為に手紙を出した。その手紙は二人にとって小さな賭けであった。