この作品の舞台は、温暖化や資源の枯渇等、様々な要因から世界情勢が悪化し、世界中で戦争が行われるようになってしまった世界。 そんな世界で生活する人々を描く連作短編集です。 全ての物語に大きく関わってくるのが、単行本の最初に収録されている物語『アップルピエタ』の主人公である赤井柊という男性です。 彼は父親が38人もの人間を殺害した快楽殺人犯で、そのせいで学校を卒業したあとの進路が制限されてしまっていました。 そんな彼と、ある組織が研究していた戦争用の人造人間の試作品「インク」との出会いが描かれる物語ですが、物語の導入からは予想することができない真実がこの物語には隠されています。 この物語を筆頭に、終末世界を舞台にしたSF的な要素を織り交ぜながら、人と人の結びつきや生きる上での倫理観を揺さぶる、そんなエネルギーを秘めた短編集です。
この短編集を読んで、中村朝は、人との距離感を感じながら、最終的には、人間らしさの繋がり、絆を大切に考えている著者なんだろうなぁと感じた。 この短編に収められている作品全てに“愛”を感じる。 『流行り神プロトコル』が好き。
『部長が堕ちるマンガ』でお馴染みの中村朝さんがコミティア等で出された読み切り作品5本を収録して以前に刊行した『きみが小説家をみつけたら』。それに描き下ろしの「天帝少年」を加えてBEAM COMIX名義で出された短編集です。 感動的なお話からサスペンス展開のあるお話まで、シリアスさマシマシで届けられます。突き抜けたテンションの『部長が堕ちるマンガ』でしか中村朝さんを知らない方は、作品内容の違いに驚くかもしれません。 基本的には表紙の色が示している通り明るい未来への希望の光を謳う作品がメインを占めており、読後感は総じて良いです。 饕餮や件、座敷童子など民話や伝承に登場する想像上の生き物が扱われた作品が複数あるのも特色です。作者の趣味嗜好が溢れ出していて、それが心地よい短編集です。 表題作で描き下ろしの「天帝少年」もネーム自体は10年ほど前に描かれた作品だそうですが、綺麗に纏められた読み応えのある良質な一話でした。 絵柄の変遷も辿れるという意味で、貴重な一冊です。『部長が堕ちるマンガ』も大好きですが、中村朝さんにはこういったタイプの作品も今後も読ませて欲しいなと思います。
※ネタバレを含むクチコミです。
最近のギャグマンガの中でも個人的に特にツボに入っている作品です。 上司である純朴で真面目な部長を、悪魔のような腐女子と夢女子の部下二人が沼へと引き摺り込み、あまつさえ部長総受けの同人シリーズをガンガン発行していくというアクロバティックな物語。 実際に存在したらとんでもないのですが、未知なる女性向けオタクコンテンツに中年男性として独自の共感を見出してハマっていき布教者が喜ぶコメントを発していく小山田部長のキャラクターが絶妙です。実在する部長・小山田誠一郎のTwitterアカウント @oyamadaseiitiro をフォローしていると、更に楽しめること請け合いです。 また、とにかく天性のものを感じさせるセリフのセンス。小気味良いテンポで繰り広げられる掛け合いや、強引なルビの面白さなど随所にギャグマンガとして光るものがあります。 この作品自体も楽しみですし、中村朝さんの今後の活躍も併せて楽しみです。
この作品の舞台は、温暖化や資源の枯渇等、様々な要因から世界情勢が悪化し、世界中で戦争が行われるようになってしまった世界。 そんな世界で生活する人々を描く連作短編集です。 全ての物語に大きく関わってくるのが、単行本の最初に収録されている物語『アップルピエタ』の主人公である赤井柊という男性です。 彼は父親が38人もの人間を殺害した快楽殺人犯で、そのせいで学校を卒業したあとの進路が制限されてしまっていました。 そんな彼と、ある組織が研究していた戦争用の人造人間の試作品「インク」との出会いが描かれる物語ですが、物語の導入からは予想することができない真実がこの物語には隠されています。 この物語を筆頭に、終末世界を舞台にしたSF的な要素を織り交ぜながら、人と人の結びつきや生きる上での倫理観を揺さぶる、そんなエネルギーを秘めた短編集です。