中間管理録トネガワ

利根川もイチサラリーマンだったという話

中間管理録トネガワ 福本伸行 萩原天晴 橋本智広 三好智樹
六文銭
六文銭

「賭博黙示録カイジ」で実質ラスボスだった利根川のスピンオフ的作品。 個人的に、 「金は命よりも重い」 とか 「一千万二千万稼ぐことの難しさ」 (受験を勝ち抜き、就職戦争でも勝ち抜いて一流企業に内定をもらい、そこでも遅れずサボらずミスもせず毎日律儀に会社に通って10年経ってようやっと手にする額~のような下り) といった、お金に対する金言が多く、大人になった今新たな魅力が再発見されている利根川。 「1日外出録ハンチョウ」は読んでいたのですが、なぜかこちらは少し読んだだけで食指が動かなかったんですよね。 というのも、上記のように「賭博黙示録カイジ」の中で、利根川って魅力的な敵キャラなんですよ。 悪には悪の正義があるを地でいく感じで、負け方も、一言で言えば武士の切腹のような潔さで、むしろ格好良かったんですよね。 そこらへんがハンチョウと異なっていて、スピンオフでコミカルに描かれていることに違和感があり手が出せなかったんです。 が、そんな考えにとらわれているのがアホでした。 結論からいうと、めっちゃ良かったです。 利根川の日々の会社での生活が描かれているのですが、「中間管理録」とあるように、上司(兵藤会長)と部下(黒服)の板挟みに会いながらも仕事をこなす様は、サラリーマンのそれで、学ぶことが多かったです。 仕事のこなし方、会議の進め方、部下の動かし方、上司のご機嫌とり、などなどサラリーマンとしては一度は悩みそうな点を、しっかり描いているので、社畜な方は読めば共感できると思います。 大体頑張って→結局報われない感じで終わるオチも含めて、現実の仕事の辛さを突きつけられて身につまされます。 基本的にはギャグよりなのですが、所々仕事や人生?に役立つエッセンスがあるので、やっぱり利根川は魅力的なキャラだと痛感しました。

キン肉マン 読切傑作選 2011-2014

読切傑作選!!

キン肉マン 読切傑作選 2011-2014 ゆでたまご
酒チャビン
酒チャビン

2011〜2014年に発表された読み切りの傑作選とのことです。あまりこの時期のゆで先生について詳しくないのですが、「傑作」ではないとして、こちらに収録されなかった読切作品もあるのでしょうか??むしろ駄作の方が好きだったりもするので、もしあれば読んでみたい気もします。 内容は、どれも初代キン肉マンの時間軸内における、描かれなかった裏エピソードになります。正直玉石混交で当たり外れもありますが、個人的にはマシンガンズの話が一番面白かったです!! ①奇跡の救世主伝説の巻 初出:グランドジャンプPREMIUM 2014年5月号 夢の超人タッグ編の後の出来事で、他の惑星でのピンチを救います。クモのコチラスやハンマーヘッドも登場して豪華です。話としてはシンプルな勧善懲悪ものですね。 ②ベンキマン 〜失われたインカの記憶〜 初出:週刊プレイボーイ 2013年43号 超人総選挙2013で29位となったベンキマンを主人公とした公式スピンオフ。28位がジ・オメガマン、30位がサタンクロスだったので、ベンキマンで良かったと思います。エラード(ソフトクリーム)マンとして超人オリンピックのペルー予選を戦うベンキマンの物語です。前回大会の本戦出場者である銅ベルマンを倒したヒガンテマンと決勝で対戦しました。「ウンコを投げないでください!」はこの時に誕生したようです。 ③ザ・マシンガンズ空白の三日間 初出:週プレNEWS 2011年10月10日・17日掲載分 アメリカ遠征編直前、キン肉マンとテリーマンがマシンガンズを結成するに至った経緯が描かれます。初代の時にスグルが、マシンガンズ結成の経緯を「そいつはあとまわしだ会長」と後回しにしていたようなのですが、30年経過してようやく説明されたようです。わたしは、初代キン肉マンの中でも、アメリカ遠征編から7人の悪魔超人編までが最高に雰囲気も含めて好きなのですが、本作は2011年の作品でありながら、その頃のムードが如実に残っていて、好きでした。ギャグの感じや間がその当時のキン肉マンの感じで、とても楽しく読みました! ④超人血盟軍、結成秘話 初出:ジャンプSQ. 2013年12月号 同誌の6周年にちなみ、超人総選挙2013で6位のアシュラマンを中心に据えた公式スピンオフ。もはや伝説となったソルジャーが牧師に扮するエピソードがあった当日の夜の物語です。初代オマージュのエピソードも出てきますが、作風は完全に最近のゆで先生で、ちょっとわたしの好みとは違うかな、と思いました。もっと泥臭さがあるところがキン肉マンの魅力だと思うんですよね。。 ⑤ラーメンマンとブロッケンJr. 〜恩讐の彼方に〜 本単行本の刊行に合わせた描き下ろし作品です。第21回超人オリンピックのラーメンマンvsブロッケンJr.戦直後、ウォーズマン戦前の出来事です。完全に最近のゆで先生の作風になっていて、いまいちスッと入ってきませんでした。 キン肉マンの魅力は「ダサくてカッコ悪いんだけど、でも一生懸命なところが尊くカッコ良い」というところだと思うのですが、最近の作風は「なんかカッコ良さそうなこと言ってるけど、よく読むとウワベだけで、浅くてダサい」になってしまってる気がするのですよね。。。ラーメンマンとブロッケンJr.にブロッケンマンも絡めた号泣物語で、登場人物も皆感涙するのですが、わたしには伝わってきませんでした。すいません、悪口ではないです!!!!

七色いんこ

裏稼業プロフェッショナル三部作のひとつ

七色いんこ 手塚治虫
酒チャビン
酒チャビン

医者のブラックジャック、タクシードライバーのミッドナイトと並んで舞台役者の七色いんこが活躍する、裏稼業プロ三部作のひとつです!いずれもチャンピオン掲載作品で、こちらはBJ終了後、ドンドラキュラを挟んで1981年〜1982年に連載されたモノです! つくりはブラックジャックなどと似た感じで、一話関係で何かしかを解決していくヒューマンドラマです。役者が主人公だけあって、毎回のテーマが実際の演劇に準えたものとなっています。 最初はかなり面白く、正直中盤は少しダレてきてパワーなくなってくるのですが、最後の最後のまとめ方が圧巻です。再読で結末がわかっていてもゾワゾワします!!ヅカ先の作品でも、そこまで知名度が高い方ではないと思いますが、もう少し中盤が短くてこのラストだったら名作になってたと思います。 途中からホンネが登場するのですが、これがいまいち最後まで効いてこなかったのが少々残念でした。本人はホンネに苦しめられるも、他人から見るとボロ布に見えるってのはアイデアとしては良かったと思います。 ロボットカーの話も、ここ数年自動運転がメジャーになってきてるので、興味深く読めました。 なお、ピーターパンの回では、手塚先生が描いたドラえもん(ヘタです)も登場するので必見です。

競馬狂走伝 ありゃ馬こりゃ馬

最高クラスに近いくらいの面白さ

競馬狂走伝 ありゃ馬こりゃ馬 土田世紀 田原成貴
酒チャビン
酒チャビン

わたしが贔屓にしているマンガ家である土田先生と、元スタージョッキーである田原さんのタッグによる競馬マンガです。駄作のできようがありません。 前半4巻くらいまで一話完結のギャグものなのですが(しかもさすが土田先生のギャグは面白い)、後半にいくに従って、かなりレースの奥深いところまで描いてくる本格競馬マンガに変身していきます。 さすが元超一流ジョッキーの原作(というか監修)が入っているだけあって、必殺技などのファンタジー路線ではなく、徹底してリアルなスポーツとしての競馬が描かれており、読み応えたっぷりです。 出場している全ジョッキーの位置どりや、その時々で考えていることなどが、すごく丁寧に描写されており、競馬が好きな方はまず間違いなくどハマりすることができると思いますし、昨今のソシャゲブームで競馬を見始めたよって方も、深く競馬を知ることができるきっかけとなることは間違いないと思います。 そういった意味で、完全に☆5でいいマンガなのですが、一点、ちょっと特に後半ジメッぽさが過度になりすぎてしまっていて、そこが個人的な好みに合わなかったので、一応4にしておきました。ジメッとした部分は土田先生の持ち味でもありますし、それが熱さや感動につながることが多いのですが、本作品の終盤は少しメメしく写ってしまいました。個人の感想ですが、悪くいうつもりは本当になかったです。すいません。