ああ、人生サイアクの日だ―――産婦人科の待合室で、ひとみは思った。カレシに言いつけられ、身ごもった赤ちゃんを堕胎しに来ていたのだ。施術後、心身ともにダメージを負ったひとみは、ふらつく足取りで帰路につき、そこでとんでもない場面に遭遇する。なんと、自分に子供を堕ろさせたカレシが別の女とイチャついていたのだ。「おまえとはもう終わりだ」みじめに捨てられたひとみは、すべてにゼツボウし、踏切に飛び込もうと足を踏み出した…と、何か柔らかいものを踏みつけた感触が…それは一匹の子猫だった。しかも足を怪我していて血まみれだ。自分の自殺のことなど吹っ飛び、ひとみは動物病院へと駆け込んだ。結局、片足は無くしたものの命はとりとめ、『たま』と名付けられたその子猫は、その日から家族の一員となった。父も、母も、そしてひとみも、たまを愛し、たまに癒され、笑いの絶えない幸せな日々が始まった。このかけがえのない素晴らしい時が、ずっと続くものだと思っていたのに―――…?
西川美咲は、小学生の息子・拓実とサラリーマンの夫との三人家族で暮らす、ごく普通の主婦。しかし最近、拓実の学校でのいじめの問題や、それも含めて仕事にかまけて家庭を顧みようとしない夫の態度などに、日々不満とストレスを募らせていた。そんなある日、ふと、それまでほとんどたしなんだことのなかったアルコールを口にし、言いようのない安らぎと癒しを得ることができた。それからだった。まともな食事をとれなくなり、ことあるごとに酒を飲む生活が始まったのは。そしてとうとう、極度の栄養不良と肝機能低下によって倒れ、病院に搬送されることになってしまう。いわゆる“アル中”だった。病院に駆けつけ、家庭を預かる主婦にあるまじきていたらくを非難し責め立てる夫。なんの申し開きもできない美咲。いよいよ離婚か…重苦しい空気が立ち込める夫婦の間だったが、そのとき、拓実がとった思わぬ行動とは―――!? アルコール依存症に陥り、家庭存続の危機に直面した主婦の体験を赤裸々に描く、リアル実体験ドラマの決定版!!