アメリカの新しい漫画賞にノミネートされたと聞いて気になって読んでみました! https://x.com/umikusahara/status/1813528575322255379 表題作の「mothers」は交通事故で植物状態になってしまったカップルのそれぞれの母親達の話です。こういうシュチュエーションだと目覚めないことの悲しさを描いたものが多いんですがそうではなく、子供の不在によって母親の内面がクローズアップされるような物語になっています。絵柄はシンプルで温かみのあるタッチなんですが、ストーリーはそういった複雑なものが多いです。なので読んでいて自分の中で蓋をして見ないようにしていた感情が開くような感覚にもなりました。こういう作家さんと出会うことはなかなかないので新鮮です。
新鋭・草原うみさんの初商業連載作品です。 路草で公開されていた珠玉の短編をまとめた『mothers 草原うみ短編集』も6月に発売となるようで、併せて推したいです。 本作の主人公は、5歳からコンサートに出演し10代前半からプロとして活躍しながらも局所性ジストニアという脳の病が発症したことをきっかけにピアノを弾けなくなってしまった越智奏(かなで)。 かつての仲間たちが華々しい活躍をしているのを尻目に、印刷工場のバイトをして日々を凌ぎながら誰とも話さず下を向いて耳を塞いで過ごす日々。 そんな彼を変えるきっかけになったのは、隣の部屋に引っ越してきた33歳のライターの横野絵里と、その6歳のピアノに憧れを持つ息子の陽向多の親子。7年ぶりに向き合ったピアノの音色と人との触れ合いが、奏の失ったものの大きさと大切さを気付かせていきます。 音楽という軸がまずあり、その上で人生で最も大切なものを失くしてしまった青年の再起の物語という軸も並存しています。夢も未来もすべてを無くしてしまい、無気力になり周囲に呪詛を撒き散らすことしかできなくなってしまっていた奏の姿は痛々しいですが、理解もできます。 草原うみさんは、短編からも本作からも痛みや悲しみを掬い取り、そうしたものを描いた上で前に進む普遍的で大事な人間の営みを描くのに長けている方であるという印象を受けます。どうしようもなく人生に訪れる不条理や不遇、他者からの心ない扱いを受ける瞬間。そういったものもありながら、勇気を出して前へ進んでいく人間の気高さや尊さを描ける方です。 この物語のもうひとりのキーパーソンは、かつて奏の音に心酔していて、今は「ネオピアニスト」として動画配信サイト経由で大きな人気を博すようになった真琴。彼との再会によって物語は動きを見せ始め、互いの存在が互いに大きな影響を与えていきます。 個人的には、横野親子との日々の交流シーンが好きです。現代では希薄になりがちな隣近所との関係ですが、そうした赤の他人との繋がりが大きな支えになることもあるというのも良いなと思います。 単行本の表紙絵も非常に良く、回収されるであろうタイトルを表すシーンへと辿り着く瞬間がとても楽しみです。
6月に単行本が発売されるらしく、今のところ4本の読み切りが公開されていて、最終的に何本公開されるのかわからないけどこんなにいい短編を無料で読んで良いのか!?と戸惑ってしまうほど全部いいです。現状、4本の中でいちばん好きなのはティラミスのパフェ。他の話とは違ってわかりやすく嫌な感じの人が出てくるんだけど、最後はどのマンガよりも前向きな気持になれました。もちろん単行本が出たら買って読みます。
アメリカの新しい漫画賞にノミネートされたと聞いて気になって読んでみました! https://x.com/umikusahara/status/1813528575322255379 表題作の「mothers」は交通事故で植物状態になってしまったカップルのそれぞれの母親達の話です。こういうシュチュエーションだと目覚めないことの悲しさを描いたものが多いんですがそうではなく、子供の不在によって母親の内面がクローズアップされるような物語になっています。絵柄はシンプルで温かみのあるタッチなんですが、ストーリーはそういった複雑なものが多いです。なので読んでいて自分の中で蓋をして見ないようにしていた感情が開くような感覚にもなりました。こういう作家さんと出会うことはなかなかないので新鮮です。