パトロンを持ちながらも金融業で荒稼ぎし、金こそがすべてだと信条を掲げる令は、取り立て先で弁護士の網淵と出会った。彼の実直さに苛立ちを覚え、取り立てを斟酌する代わりにと、自分を抱くように命じる。この男を自分と同じ暗闇まで引きずり落とし、汚してやれば満足するはずだった。けれど網淵に抱かれるほどに、彼が見せる不器用な優しさに奇妙な感情が湧き上がってきて……。
政治家の父を持つ揺は、幼馴染みの正信に長く想いを寄せていた。だが不正献金が取り沙汰され、父の代わりに秘書である正信の父が逮捕されてしまう。償いたいと正信を訊ねた揺だったが、求められたのは、捌け口として体を差し出すことだった。犯され体は痛みに震えても、心は想い人に抱かれて喜びを覚える。恨まれていると知りつつも、揺は彼の元に通うことを止められず……!
宗教団体に勤める馨は、「神和ぎ」として教祖を癒す役割を担っていた。務めを果たせなければ、教祖の側近・葛城に折檻される。身寄りのない馨を引き取ってくれた教祖への恩返し、そう思ってきたが、務めの度に心が打ちのめされるようだった。そんな時、取材に訪れた太田と出会う。なぜか馨に興味を示す彼に戸惑うが、あたたかな感情で包み込むようなその腕に、涙がこぼれて……。
僧院で修行に励みつつも、魂の片割れとも思うカードマと戯れる日々。そんなアーシャのささやかな幸せは、養父である尊師の死と共に終わりを告げた。母を庇って父を殺害したカードマを救うため、アーシャは欲深い座主に身を任せる。ところがさらに悲惨な事件が起き、カードマは失踪。取り残されたアーシャは、座主の慰み者になっていた。だが、復讐を誓うカードマと再会し――!
精悍な美貌に洒脱なファッション、優雅な仕草と身のこなし――カフェに今入ってきた男は、僕が趣味で書いている小説の主人公に瓜二つ!? 理系でコミュ障な自分と真逆の、理想を体現した男を見て驚く製薬研究員の一彬(かずあき)。しかもその男・水口(みずぐち)は、街で人に絡まれた一彬を颯爽と助け、「あなたとは初対面な気がしない」と甘く囁く。それ以来、なぜか取柄のない自分に積極的にアプローチしてきて!? ※口絵・イラスト収録あり
34歳独身。人たらしの貴生は、結婚願望がありながらも、プロポーズを断られて以来、恋愛から遠ざかっていた。会社帰りに偶然入った店で、美貌のバーテンダー・樹に出会い、寂しそうな笑顔に惹かれていく。男性相手に運命を感じたのは初めてで、つたないながらも、貴生は樹をデートに誘うが……?
宏樹は久坂彰信が好きだ。もういつからかは分からない。彰信は久坂組四代目組長の長男だが、家を継ぐ気はないと言い普通の会社員をしている。無口で無愛想だが、足の不自由な宏樹が通うリハビリセンターの送迎もずっとしてくれている。そして週に数回、宏樹を抱く。友人でもないましてや恋人とも言えない関係を続けて十年以上。彰信の気持ちは見えないけれどこのまま続けばいいと思っていた。しかしある日、予期せぬ久坂組の跡目抗争に巻き込まれて…?
長年付き合っていた恋人に一方的に別れを告げられて一年が経った。ある日飯島佳史は、元恋人の病死を彼の弟・南方修司から聞かされる。悲しみと後悔に暮れる佳史。そのあげく追い討ちをかけるように「病気だと聞かされて兄貴の元から逃げたんだろう?」と鋭く責め立てられ、憎しみの余りか陵辱されてしまう。何も知らされていなかった佳史は修司の誤解に戸惑いを隠せず…?
陸自の特殊任務隊に所属するストイックで秀麗な秋元。数年前の実務任務の怪我で足を負傷し現役を退いて以来、才能ある人材のスカウトマンだ。今度のスカウト対象は、総務大臣の私設秘書兼SPに就く旭。旭に協力を頼むと、思いがけず入隊の条件として秋元の身体を求められた。逸材を手に入れる条件として身体を差し出すことくらいなんでもないこと。抱かれるのは一度きりのはずだったが、最初の任務ののち、ふたたび旭に身体を求められて――?
恋人に突然別れを告げられ、命を絶とうとしていた怪奇作家の了則は、淫靡で邪悪な物の怪の禍に助けられて契約を交わした――。それから禍は、この家に棲みつく代わりに了則の精を吸いとっている。美貌の禍は本来、人の肉を喰らう化け物だ。なのに人のような情や温もりに了則は癒されていく……。けれどもこれは捕食行為で愛情ではない。分かっていながらも惹かれる心は止められず――。