『本屋の鬼いさん』や『枯れ専女子高生と時かけおじさん』で独特の世界観を提示してきたももたんさんの最新作は、少し切なくて、笑えて、エールを送りたくなる素敵なラブコメです。 不思議な力に守られた一族で悪意を持って近付く者には天罰が下される天恵一族。それぞれが不思議な力を持つ家系で、主人公の心結(みゆう)は人の心の中が見える少女。その能力により苦しんでいたときに稀有な美しい心を持った正直(まさなお)に出逢い、彼が初めての友達兼初恋の相手となります。 しかし、その後とある事情で記憶を失ってしまった正直。15歳になってからお見合いをして、たとえ相手が自分のことを忘れていても振り向いてもらおうと懸命に努力していきます。 多くの女の子がそうしているように正直に可愛く甘えようとしても、いつも絶妙に間違って上手く甘えることができない心結がかわいいです。とにかく主役がふたりとも純朴で優しいことで、ひたすら応援したくなります。心結は恋に生きていながらもそれ以上に人として大事な部分を持っていて、いざというときにはそちらを優先するのが尊いです。お嬢様とはかくあるべきです。この子たちが幸せになれない世の中なんて嘘だッ! と言いたくもなります。 心を読めるというひと匙のファンタジー要素が物語とキャラクターに彩りを添え、正直の記憶が失われていても以前と変わらない心根や所作が切なくもときめきを与えてくれます。 ライバルのアイナが登場後の 「恋とはふわふわして可愛らしいことだけだと思ってましたわ でもそれだけじゃありませんのね 痛くて苦しくて深い海の底にいるみたいなのも 恋なんですわ」 というモノローグなどはたまりません。ここではっきりと良い少女マンガだなぁと思いました。 何とか娘の恋を叶えてあげようとする心結の父親の金持ち特有の強引ムーブも、突っ込みたくなるけど楽しい部分です。 「笑顔が国宝」 「存在がファンサ」 などの心結の中のうちわ芸や、突然出てくる訳知りモブおじなど細かいギャグのジャブ連打も好きです。 巻末描き下ろしはもちろん、カバー下までサービスたっぷりでありがたいです。お見逃しなく。
タイムリープもので当人と仲の良いキャラや聡明なキャラが何かを察するっていう展開はよくあるけど、タイムリープした相手に対する違和感を察知した理由が"枯れ専だから"っていう、目の付け所がシャープすぎる作品。 40歳から17歳の頃にタイムリープしてきた"時かけおじさん"曽根崎君はとりあえずタイムリープがバレないように取り繕って高校生活を送ってるんだけど、要所要所に40歳サラリーマン感、おじさん感が滲み出てしまっていて、そしてそれをあんまり自覚してなかったりする。そしてそんな曽根崎君の様子が"枯れ専女子高生"日向さんの枯れセンサーに見事に引っかかっていく。 "枯れ専"という1つのフックだけでタイムリープという割と使い古された感のある設定がこれほどまでにエッジの効いたものに見えるのか、という新鮮な驚きがある作品。 1巻まで読了
『本屋の鬼いさん』や『枯れ専女子高生と時かけおじさん』で独特の世界観を提示してきたももたんさんの最新作は、少し切なくて、笑えて、エールを送りたくなる素敵なラブコメです。 不思議な力に守られた一族で悪意を持って近付く者には天罰が下される天恵一族。それぞれが不思議な力を持つ家系で、主人公の心結(みゆう)は人の心の中が見える少女。その能力により苦しんでいたときに稀有な美しい心を持った正直(まさなお)に出逢い、彼が初めての友達兼初恋の相手となります。 しかし、その後とある事情で記憶を失ってしまった正直。15歳になってからお見合いをして、たとえ相手が自分のことを忘れていても振り向いてもらおうと懸命に努力していきます。 多くの女の子がそうしているように正直に可愛く甘えようとしても、いつも絶妙に間違って上手く甘えることができない心結がかわいいです。とにかく主役がふたりとも純朴で優しいことで、ひたすら応援したくなります。心結は恋に生きていながらもそれ以上に人として大事な部分を持っていて、いざというときにはそちらを優先するのが尊いです。お嬢様とはかくあるべきです。この子たちが幸せになれない世の中なんて嘘だッ! と言いたくもなります。 心を読めるというひと匙のファンタジー要素が物語とキャラクターに彩りを添え、正直の記憶が失われていても以前と変わらない心根や所作が切なくもときめきを与えてくれます。 ライバルのアイナが登場後の 「恋とはふわふわして可愛らしいことだけだと思ってましたわ でもそれだけじゃありませんのね 痛くて苦しくて深い海の底にいるみたいなのも 恋なんですわ」 というモノローグなどはたまりません。ここではっきりと良い少女マンガだなぁと思いました。 何とか娘の恋を叶えてあげようとする心結の父親の金持ち特有の強引ムーブも、突っ込みたくなるけど楽しい部分です。 「笑顔が国宝」 「存在がファンサ」 などの心結の中のうちわ芸や、突然出てくる訳知りモブおじなど細かいギャグのジャブ連打も好きです。 巻末描き下ろしはもちろん、カバー下までサービスたっぷりでありがたいです。お見逃しなく。