私は『天』が好きすぎて、このマンバでのクチコミなどを書く際にも何度名言やネタを引用したかわからないくらいです。 その『天』の東西決戦において、西代表の雀士として一際存在感を放っていた僧我三威を主人公に据えたスピンオフです。 『トネガワ』『ハンチョウ』『イチジョウ』などに連なる、コメディタッチを基調としながら部分的には感慨深いところもある内容となっています。 現代医療によって病から回復を果たし80歳を超えた僧我は老人ホームに入居して静かな余生を送ろうとするも、その老人ホームはボケ防止というお題目で麻雀やパチンコ・パチスロなどのギャンブルが横行し、「ペリカ」による経済活動が行われる安息とは程遠い場所でした。 赤木と僧我の最後の戦いを終えた後の余生がこうなることに若干複雑な想いはありますが、逆にあれだけ怪物然としていた人物が世俗に塗れる瞬間を描いているというところでの味があります。 老人ホームで暮らす主人公の作品もなかなかないので、そういう意味での面白さもあります。老人ホームに詳しくないですが、ジャージがゆるゆるなのは、あるあるなんでしょうか。 闘牌シーンもありますが、1回ツモって捨てるまでに何十秒もかかり、見せ牌のオンパレードな老人たちに、さまざまな玄人技を持つ僧我が負けるはずもなく。 ″僧我は深い森……… 漆黒の闇……… いないっ…! その闇を見通せるものなど… この老人ホームにはっ…!″ といった、原作を踏襲したナレーションには笑いを誘われます。 また、『ハンチョウ』でもコラボしていた雀魂を元にした雀天という麻雀ゲームアプリを遊び出すところでは、大槻や一条や利根川が美少女化されており笑います。 そうした笑える部分も良いのですが、余生という状況を振り返ったときや終わりの時を前にした人々の営みに、やがて誰にでも訪れる未来の一旦を垣間見れる瞬間もあり、何とも言えない感情に見舞われる部分があります。 『天』を読んでいない人でも楽しめるようになってはいると思いますが、読んどいたほうがいいですよ『天』は..!
麻雀全くわからないで表紙買いで読み始めました。 わかんなくても面白い! 雀士プロと女流雀士プロ二つの面が見れるようになってるのすごいです。 二巻が待ち遠しいです。
みなさんは「麻雀」というものにどのようなイメージを持っているでしょうか。マンガで言えば有名なのは「アカギ」や「天牌」「むこうぶち」などでしょうか。いずれにしても、ギャンブルだとか、アングラな世界と近い存在という印象を持っている方が多いのではないでしょうか。 しかし最近、そのイメージを払拭しうる、新しいムーブメントが起こっていることはご存じでしょうか? 2018年、競技麻雀のナショナルプロリーグ「Mリーグ」が発足しました。Mリーグはプロ野球やJリーグと同様、一般企業がスポンサーとなってチームを運営し、囲碁や将棋のようなマインドスポーツとして麻雀を捉えて、賭博行為からの完全分離したプロスポーツとして運営されるプロリーグです。10月に初年度のシーズンが開幕し、全試合がAbema TVで生中継されるほか、パブリックビューイングとして、お酒や食事をしつつ、生の実況解説を聞きながら麻雀の観戦を楽しむという新たな楽しみ方も提供され始めています。 ここまでの説明でマンガ好きの方には何か思い当たる作品があるのではないでしょうか。そうです!「咲-Saki-」の世界観、これが現実世界で生まれようとしている、それがこのMリーグを中心としたムーブメントなのです! そんな近年のムーブメントを反映させ、現実に即した形で競技麻雀の世界を描いている作品がこのゴールデン桜です。 主人公はプロとしての一定の実績はありつつも日の目を浴びることのない生活を送る麻雀プロ・早乙女卓也。彼があることをきっかけに、"女性プロ雀士"として活動を始める所から物語は始まります。 競技麻雀ではかつての競技人口の少なさから女性限定の大会やリーグは存在しますが、基本的には男性と女性がフラットに闘うことのできる競技です。その点は他のプロスポーツや囲碁、将棋などとも異なる点かもしれません。また逆に、人気商売であるという側面から収入面では女性プロのほうが男性を上回りがちであるというのも麻雀プロの1つの特徴でもあります。男性が女装して活動するというのはベタな設定ではありますが、この"男女平等"と"男女格差"という相反する側面を兼ね備える麻雀業界を、フィクションの設定を用いてリアルに表現している作品です。 また、内容以外の部分でもこの作品は現実とのリンクを巻き起こしています。まず、あとがきにも描かれていますが、この作品の1話プロットが完成するのとほぼ同時期にMリーグ発足が発表、慌てて作中にMリーグの描写を取り入れるという経緯があります。更に、原作者の岡田紗佳さんは実際にプロ団体に所属する麻雀プロなのですが、2019年7月に行われた第2期のドラフト会議にて指名を受け、今年からMリーグの選手として闘うことが決定しました。しかも指名したチームの名前が"サクラ"ナイツで作品タイトルとも掛かっているという、何重にもリンクが張られた作品となっています。(ちなみに本作の連載は竹書房の近代麻雀ですが、サクラナイツのスポンサーはまさかのKADOKAWAというオマケつき) それでなくても"現役の選手が(監修ではなく)原作を担当するマンガ作品"というのは他のスポーツではなかなか実現しないことだと思いますし、内容としても麻雀の競技自体の表現は最小限に留められているので、ぜひ麻雀というものに触れたことのない方に読んで頂きたい作品です。 1巻まで読了。
私は『天』が好きすぎて、このマンバでのクチコミなどを書く際にも何度名言やネタを引用したかわからないくらいです。 その『天』の東西決戦において、西代表の雀士として一際存在感を放っていた僧我三威を主人公に据えたスピンオフです。 『トネガワ』『ハンチョウ』『イチジョウ』などに連なる、コメディタッチを基調としながら部分的には感慨深いところもある内容となっています。 現代医療によって病から回復を果たし80歳を超えた僧我は老人ホームに入居して静かな余生を送ろうとするも、その老人ホームはボケ防止というお題目で麻雀やパチンコ・パチスロなどのギャンブルが横行し、「ペリカ」による経済活動が行われる安息とは程遠い場所でした。 赤木と僧我の最後の戦いを終えた後の余生がこうなることに若干複雑な想いはありますが、逆にあれだけ怪物然としていた人物が世俗に塗れる瞬間を描いているというところでの味があります。 老人ホームで暮らす主人公の作品もなかなかないので、そういう意味での面白さもあります。老人ホームに詳しくないですが、ジャージがゆるゆるなのは、あるあるなんでしょうか。 闘牌シーンもありますが、1回ツモって捨てるまでに何十秒もかかり、見せ牌のオンパレードな老人たちに、さまざまな玄人技を持つ僧我が負けるはずもなく。 ″僧我は深い森……… 漆黒の闇……… いないっ…! その闇を見通せるものなど… この老人ホームにはっ…!″ といった、原作を踏襲したナレーションには笑いを誘われます。 また、『ハンチョウ』でもコラボしていた雀魂を元にした雀天という麻雀ゲームアプリを遊び出すところでは、大槻や一条や利根川が美少女化されており笑います。 そうした笑える部分も良いのですが、余生という状況を振り返ったときや終わりの時を前にした人々の営みに、やがて誰にでも訪れる未来の一旦を垣間見れる瞬間もあり、何とも言えない感情に見舞われる部分があります。 『天』を読んでいない人でも楽しめるようになってはいると思いますが、読んどいたほうがいいですよ『天』は..!