吉田戦車ウラモトユウコオカヤイヅミ河井克夫島崎譲衿沢世衣子カラスヤサトシ島田虎之介100%ORANGEよしもとよしともフジモトマサル陽気婢小玉ユキ、うめ、萩尾望都藤子不二雄A

前作にあたる『長嶋有漫画化計画』に筆を寄せた目が眩むような錚々たる面々です。

それから11年が経ち、遂に第2弾となる本著が発売されました。

今回の描き手は

あした死ぬには、』の雁須磨子
凪のお暇』のコナリミサト
トクサツガガガ』の丹羽庭
メタモルフォーゼの縁側』の鶴谷香央理
ご成長ありがとうございます』の三本阪奈
往生際の意味を知れ!』の米代恭

の6名。今回は全員女性作家ですが、全員実に絶妙な「今」を描いている方々。長嶋有さんがずっとマンガを愛し続けて広く読まれているであろうことが伝わってくる、一マンガファンとして心が躍る陣容です。

米代恭さんの「三十歳」は、シンプルに米代恭さんの描く表情が良いです。無機質な表情も、真逆の感情を全開にした表情も。主人公の瞳にハイライトが宿る瞬間が堪りません。タイトルにある三十という年齢の、歳を重ねて至る諦観とその裏にまだ残る稚さ。幼い子供のように在れる相手ができて時間を共に過ごすようになる過程、伸びやかになる心の描写も好きです。こういう男女の関係を今描いてもらうなら米代さんというのは非常にしっくりきます。

三本阪奈さんの「舟」の主人公の妄想癖、個人的にはとても共感します。昔から現実を差し置いて空想の世界へ行ってしまうところがありました。妄想ができる脳がひとつあれば、永遠に暇にはならないなと思います。本著の中では最も新しい2022年の短編ということで、マスクを着けた登場人物たちとそれを利用した演出がとてもよく利いていました。思春期の矯正は、特に女の子にとっては外見上の面で嫌な部分もあるものですが、マスクはそれを隠せるという意味では少しありがたい存在でもあるのだなと。リフレインする特徴的なフレーズなども小気味いいです。大人へと漕ぎ出していく彼女たちの姿に、在りし日を重ねます。「表現は読者と年をとっていくだけではダメで、ときには若者に向けて放っていないとダメだ」という、長嶋さんの感性も素敵です。

丹波庭さんの「今も未来も変わらない」は、レンタルビデオ屋でDVDを借りるというほんのひと昔前にあった風景がとても懐かしく感じられる一篇です。私の家の近所のレンタルショップも時代の波に呑まれて潰れてしまいましたが、100円の日にたくさん借りたり延滞金を払わないように必死になったしたことを久しぶりに思い出させてもらいました。
″僕は映画を観た時の「情景」も含めて「映画」だなって思うんです″
というセリフはマンガにも完全に同じことが言えて、いつどこでどのようにして誰との関わり合いの中で読んだのかという記憶と共に自分の中に残っています。それ故に、マンガの帯も挟まっているチラシも私にとっては大事な欠片なのです。余談ですが
″ガムと締切はよくのびるんだよ″
のセリフも好きです。

鶴谷香央理さんの「問いのない答え」は、311の震災を描いた作品。長嶋さんと鶴谷さんの出逢いが、震災の翌日からTwitter上で行なっていた言葉遊びだったそうでそんな現実も上手く反映させた物語となっています。10年前のTwitterは、今より人が少なくて3000RTもされたら珍しいことでした。他愛もない好きなことを介して生まれる緩い繋がりが非常に愛しい自由な場でした。ただ、今はかなり変質してしまってかつてあった楽園の心地良さに想いを馳せます。あの頃から繋がり続けてくれている方に感謝しつつ、繋がりが解けた方々もどこかで元気に暮らしていて欲しいなと思います。日常の細やかな所作や機微が、落ち着いた筆致で描かれ鶴谷さんの良さが短編の中にもよく表れています。コロナなどで塗り潰されてしまった部分もありますが、いつまでも留めておくべき記憶がここにあります。

雁須磨子さんの「三の隣は五号室」は、チャレンジングな原作小説を巧みにマンガに落とし込んでいます。なぜか四号室がないアパートの五号室に住んだ歴代の住人たちのザッピング的な物語です。村田沙耶香さんが原作に寄せたあとがきに書かれている通り、「前の人」というのは不思議な関係です。私も以前住んだ家では引っ越したばかりのときに、ずっと前の人への郵便物が届き続けたことがあります。まったく縁もゆかりもないけれど、同じ空間を共有する他人。内装や機能など知らない間に継承をしていて影響を与え合うひとつなぎの関係。同じ景色の中で何を思い、どのように暮らして生きていったのか。人生のどこかで一瞬でも交わった人ともまた違い、直接関わっていないけど生まれる不思議な関係。小さなアパートの一室がまるで社会の縮図のような人間模様を描いているさまは、奇妙な面白みがあります。

コナリミサトさんの「もう生まれたくない」は、このタイミングで単行本化されたことに運命を感じました。「歯の欠けたベーシスト」「セガサターンのゲーム」と言って、あるバンドを即時に連想できる人は今どれくらいいるのでしょうか。奇しくも一昨日、そのバンドのリーダーは誕生日を迎え、その1週間ほど前に歯の欠けたベーシストの後釜に座ったベーシストが逝去したという報が出て、私は数日間号泣しながら彼の仕事を振り返っていました。そして、昨日バンドリーダーによりベーシストを弔うイベントの発表が行われました。そう、X JAPANです。作中に登場するセガサターンのゲームは『X JAPAN Virtual Shock 001』でしょう。私は人生で初めて行ったライブがXだったので、育ててくれた親のようなバンドです。奇跡の再結成からずっとずっとニューアルバム発売を待ち続けて十数年経ってしまいました。唯一ずっと「コンサートをやりたい」と言ってくれてきたHEATHが8月にYOSHKIと共演してセッションした時も泣きました。そして、この短編でまたXやHEATHのことが思い出されて涙を堪え切れませんでした。ふとしたことで、人はあっけなく死ぬ。そして、永遠に拭えない後悔をする。もう少し、違う選択肢を採れたかもしれないと思いながら……。

長嶋さんのあとがきや、それぞれの作品へのコメントも実に味わい深いです。「漫画は暗くて愉快」という概念、真諦を突いています。

原作ファンの方やそれぞれの作家のファンの方はもちろん、そうでない方も今をときめく感性豊かな方々による豪華なコラボレーションを味わってみてはいかがでしょうか。

読みたい
空の音色
心が晴れやかに澄み渡る音がする #1巻応援
空の音色
兎来栄寿
兎来栄寿
『姫ちゃんのリボン』で一世を風靡した水沢めぐみさんも、昨年で還暦を迎えられたという事実に隔世の感があります。私が生まれる前からずっとマンガを描き続けられている水沢さんですが、未だに作品には優しさや瑞々しさが溢れており敬服するばかりです。 『空の音色』、どうしたって『空色のメロディ』を思い出さずにはいられないタイトルですが、内容は異なります。 漫画家として10年目を迎えるものの直近はぱっとせず行き詰まりを感じていた主人公・花音(29)。ある日、姉夫婦が事故で他界し5歳の姪・音色を引き取って育てることに。仕事や恋愛も大変な渦中で、さらにまったくの未経験である子育てが加わりてんてこ舞いになる花音の奮闘の日々が描かれていきます。 身内が亡くなったことを悼む暇もなく、忙しない上に神経を使い続けなければならない日々の到来。父と母がなくなったという事実すら受け止めきれていない5歳児との向き合い方の難しさが伝わってきます。 お弁当の中では特にたまごやきが好きだという音色のために、たまごやき入りのお弁当を作って持たせるものの残され続けてしまい、些細なことであると頭では理解しながらも心にダメージを負って荒んでいってしまうさまなどはリアリティがありました。子供に悪気はまったくなくても、削られてしまいますよね。 ただ、そうした辛さや大変さを乗り越えて、道端の何気ない風景をゆっくりと眺めながらふたりが段々と距離を縮め家族となっていく描写の暖かさには心をほぐされます。 彼氏がまたダメな男で無神経に人の心を削ってくるのですが、幸いにして友人には恵まれており多香ちゃんのような子が側にいてくれるのはありがたいことだなぁと思います。 かわいくて読みやすい絵柄と水沢めぐみさんらしいハートフルさは、本作でも十二分に堪能できます。ファンの方はもちろん、そうでない方もここから水沢めぐみさんの世界に入るのも良いでしょう。
ワンショットロマンス
6つの青春恋愛短編 #1巻応援
ワンショットロマンス
兎来栄寿
兎来栄寿
『やっと君とめぐり逢えたんだ』、『そんなことより今すぐあそぼ!』、また『マーガレット』にて新連載の「かいじゅうの花束」も始まっている雨花深衣さんによる恋愛短編集です。 本書ではフレッシュな高校生たちによる6つの物語が繰り広げられます。それぞれ簡単に紹介していきましょう。 「瞳のシャッターを押して」 負けず嫌いな性格の詩穂が、高校入学直後に成田先輩に煽られて写真部に入るお話。 詩穂の真っ直ぐで気取らない性格が良いです。そのせいで証明写真が酷いことになっているのも含めて好きです。 「オン ユア マーク」 陸上部で″魔女″の異名を持つ高2の一夏と、保健室の宮城先生に恋するエース大樹のお話。 最後の方の一夏のセリフがとても好きです。こういうの、こういうのが良いんですよ。 「君のこころ」 バスケ部2年の龍二が、隣のクラスの小田原さんはもしかしたら自分に気があるのでは? と思い悩むお話。 皆さんも経験ありますでしょうか。年頃の子は、さり気ない一言や一挙手一投足にさまざまな想像を巡らせてしまうらものですよね。それが勘違いだとしたら恥ずかしいし、勘違いでなかったらそれはそれで大変なのですけど。 「エキストラの心がけ」 自分をモブ自認する16歳の栞里が、バスケ部キャプテンのイケメンを″推し″として強火でファン活動していくお話。 ″神様と付き合いたいとか思う!?″ という言説は、推し活と恋愛の差、より宗教に近い推しへの感情が明瞭に表されていて好きです。 「ふたりで帰ろう」 乃木坂にいそうと頻繁に言われる人気者の美憂が、中1からずっと同じクラスで同じ地元ながら自分を嫌っている青山がいるバスケ部のマネージャーになるお話。 「エキストラの心がけ」と同じバスケ部の物語です。嫌われている所から始まる関係や、メガネ男子が好きな人に刺さるであろう一篇です。 「あの子の元カレ」 友人の千果が、彼氏の高槻くんを差し置いて別の男子と両思いになってしまった報告に付き合わさせられる友理葉のお話。 あまりにあっさりと引き下がってくれた高槻くんの真意がどこにあるのか。それを探る途中でちょくちょく出てくる変顔が好きです。 すべて独立した1話完結のお話たちですが、うっすらとお話とお話の間の関係もあって1冊として読むとまたより楽しめます。 決めシーンの表情の描き方など、雨花深衣さんの絵の魅力も作品を盛り立てています。 真っ直ぐ過ぎず、かといって拗らせ過ぎず。ちょうどいい塩梅のさまざまな青春の光耀を浴びることのできる短編集です。サクッと読める良い恋愛少女マンガはないかとお探しの方にオススメです。
群青のカルテ
精神科医の娘が自殺しかけた理由とは #1巻応援
群青のカルテ
兎来栄寿
兎来栄寿
『37.5℃の涙』の椎名チカさんの新作は、精神科医。 精神科医の夏島凛子(35)は、離婚して娘・悠里(15)の親権を持つ女性。悠里は父親との板挟みには遭っていながらも特に大きな問題なく学校生活を送っていると思っていたある日、悠里が突然ベランダから飛び降り自殺未遂を図り、気がつくと悠里の体に意識が入れ替わってしまったというサスペンスミステリです。 4月の新入シーズンで退職代行も話題ですが、名の知れた大企業のブラックさが露わになることもいまだに日々起きている昨今。本作でも1話からブラック企業で働かされ日々大きなストレスをかけられて病んでしまった女性のケースが取り扱われますが、さまざまな精神科の患者、また精神科に行くべき症状を持つ人の様子も描かれていきます。 実際に精神科医による医療監修も入れて描かれているということで、ケアが必要な人に対しての診断やかける言葉などは本格的です。 「もっと精神病患者が増えればいい」 と『Shrink(シュリンク)~精神科医ヨワイ~』でも言われていましたが、まさにその最初に行くときのハードルの高さ的な部分が描かれています。精神科に行くという行為自体が特別で恥ずべきもの的な意識がある方も多いかもしれませんが、作中のあるキャラクターのように「これは治るもの」という意識を持ててもっと気軽に病院に行くという選択肢が取れるようになれば良いと思いますし、そういう社会を形成していくことを助けてくれる作品です。 友人や知人にも仕事や人間関係の問題で心を悩ませて苦しんでいる人は多いですが、人の心があまりにも軽視され蹂躙されることもある社会で、どうか何より大切な命や心が脅かされすぎないようにして欲しいです。 悠里に何があったのかという物語の根幹の謎が強い引きとして作用しながら、個々のエピソードで人の心の動きに寄り添ってくれる部分が多々ある今の時代に価値を放つ物語です。
ふくふくまんぷく
江戸×人情×料理 #1巻応援
ふくふくまんぷく
兎来栄寿
兎来栄寿
歴史に詳しくなくても楽しめる、心温まる人情グルメマンガです。 江戸後期、文化文政の時代を舞台にした料理人の娘である「ふく」が主人公の物語。母親を亡くして家のことも父の手伝いも率先してこなす健気な偉い子です。彼女が最も興味を示すのは料理。料理本を読み漁って読み書きを覚えてしまったほど、料理にのめりこんで育ちました。 元々は殿様にも仕えて料理を作っていて、 ″お殿様でも棒手振りでも うまいうまいと毎日笑って飯が食えりゃァ それが一番幸せよ たった4文の串にだってそんな力はあるのさ″ という尊敬できる父親と何年も休みなく働いて、遂に念願の料理店を居抜きで開業したものの、宣伝が足りず閑古鳥が鳴き父親は急逝。 ふくは残った借金のカタとして、料理茶屋という名目で女の子たちが男性を接待する店で働かされることになっていきます。 なかなか逆境の多い人生ですが、父親譲りの技術と人を喜ばせたいという想いで料理を作れるふくが、さまざまな人の心を動かす料理を作っていくさまにはカタルシスがあります。始めは偏屈だった人も、ふくの作ったものを頬張った瞬間にそれまでにない表情を見せるのが痛快です。 巻末の参考文献の多さからも解るように、江戸の風俗や食文化を丹念に研究して描いているのが伝わってきます。実際に現代でも手に入る食材を使った料理の数々は、シズル感が強くて幕間ではレシピもマンガで描かれているので実際に作って食べてみたくなります。口の中でしゅわしゅわ溶けると評される霰豆腐など、いいですね。 また、一方で人間ドラマとしての魅力も大きい作品です。食べることは生きること。人が食をきっかけに生きる力を得るシーンもたくさん描かれていて、読んでいるだけでも胸が一杯になります。五話のエピソードなど、特に好きです。 タイトル通り、読むと福を得られた気分になれる作品です。時代的には女性が料理人をやるのには数々の困難があると思いますが、すべて乗り越えていってたくさんの人をますます笑顔にしていく料理を作っていくさまを見続けたいです。
さうのあっ!
きらら発JK×サウナマンガ! #1巻応援
さうのあっ!
兎来栄寿
兎来栄寿
世は大サウナブームです。子供のころは熱いだけで一体何が良いのかまったくわからなかったサウナ。しかし、気付けばいつの間にか私も同年代の方々も30代くらいからみなサウナの虜になっています。しきじにもDESSEにも足を運びました。これが加齢……もとい歳を重ねるということでしょうか。 ところで、マンガ界の鉄板といえば「美少女」と「おっさんの好きなもの」の掛け合わせ。故に、こうした作品が出てくるのも時代が生んだ必然と言えましょう。 今までも「美少女×お風呂」というマンガはいくつかありましたが、完全にサウナに特化した「美少女×サウナ」マンガの真打がきららから登場しました。その名も『さうのあっ!』。フィンランド語にある「サウナに入る」という意味の動詞だそうです。 ゲームや動画鑑賞が大好きで、その時間を削られるお風呂は嫌いで数日に1回しか入らない景山こかげ。 フィンランドからやってきて銭湯に居候しているサウナ大好き少女のリューディア・アラヤ。 クラスの委員長でサウナ知識を語り出すと早口になる清水芹香。 ひとりだけ他クラスで、スーパー銭湯の娘でお嬢様口調の高野槇。 4人の高校1年生たちを中心とした、サウナコメディ4コマとなっています。 ・サウナの効用 ・交互浴の基礎 ・ととのうとは ・フィンランドのサウナと日本のサウナの違い ・アウフグースやヴィヒタについて ・野外でのテントサウナ などなどについて、サウナ初心者であるどころか、そもそもお風呂に入る時間ももったいないという主人公のこかげの視点からサウナに関する知識を0から学んでいくことができる内容となっています。 サウナ後はオロポも良いですが、作中で紹介されるフィンランドコーヒーも飲んでみたいです。その際の「飲料を提供する場合は保健所の許可や手洗い設備などの設置が必要〜」という件からは、昨今の情勢を鑑みた細かい配慮を感じました。 シンプルにキャラクターたちがかわいく、きららジャンプをしているところなどもあり、青春の1ページが楽しく描かれています。 「怪我人の救急搬送」 「歩きスマホに注意のポスターみたいですわ」 など、ちょくちょく挟まれるツッコミにもセンスを感じるものが多くクスッとします。専門知識ネタに偏りすぎることもなく、しっかりとツボを押さえながらメインテーマをバランス良く描いている作品です。 最近はなんだかんだ若い女性でもサウナ好きが増えていますが、この作品がアニメ化されて更なるサウナブームが起こったらますます老若男女問わずサウナに入るようになる世界が訪れるかもしれませんね。元々日本人はお風呂好きですし、それによって健康が増進されていったら良いことだと思います。
薔薇なまいにち
このタイトルとこの表紙で #1巻応援
薔薇なまいにち
兎来栄寿
兎来栄寿
『まんまるポタジェ』や『魔女のてしごと』、『 天使にお願い』や『ビーズの指輪』のあいざわ遥さんの最新作です。 その情報と、このタイトルと少女マンガ的なかわいくファンシーな表紙や扉絵のメインヴィジュアルから一見して看破できる人はあまりいないでしょう。この物語の主人公こまちが、ギャンブル中毒の貧乏少女であるとは。 水原一平さんの事件もあり、今注目を浴びるギャンブラー。最近発売された『ヤングマガジン増刊カケヒキ』では、超人気ギャンブルマンガのシリーズ最新エピソードとなる「エスポワール前カイジ」が掲載されました。人間は根本的に、ランダムから快楽を得る瞬間が好きなんですよね。 特に2割以下の人は非常にギャンブラーに向いたリスクテイカーの遺伝子を持っていると一説には言われています。狩猟採集時代は定住していては枯渇する資源を得るべく、リスクを冒してでも新天地で獲物や食べ物を発見できた者が英雄であったためだとか。多くの人にはギャンブル中毒者のことが理解できなくても、それは生存戦略的に必要な資質であったというわけです。もしかしたら、こまちもそういう遺伝子を持っているのかもしれません。 そうして開始2ページで競馬でスり無一文で食うや食わずの生活をして家賃の支払いも滞りながらも優しい大家さんなどに助けられて何とか生きながらえていたこまちは、バラの育種農場でバイトをすることになります。 その農園にいた育種家の青年・園生は、あけっぴろげな性格のこまちとは対照的に対人スキルに乏しく、しかしバラへの情熱は揺るぎないもの。そんな不思議な凸凹コンビが、まだ見ぬ新種のバラを生み出そうと奮戦していく物語です。 まず、バラの育種というテーマが珍しくて面白いです。そもそもどうやって育てているのか、バラごとにある特徴や高く評価されるためにはどうすればいいのか、ミステリーローズとは何なのかなどなど、読んでいて楽しくなる知識が満載です。 また、主軸となるふたりのキャラクターがとても立っていて、どちらも難があるもののこのふたりの掛け合いだけでも永遠に楽しく物語を引っ張っていけそうだなと感じました。 時折ギャンブルも交えながら展開していく異色の作品となっており、バラの育種に興味がある方、ギャンブラーのヒロインに興味がある方、少し変わった少女マンガを読みたい方などにお薦めです。
大きくなったら女の子
「座席」議論に加わっている人に読んで欲しい #1巻応援
大きくなったら女の子
兎来栄寿
兎来栄寿
数日前から、新幹線の自由席で横に乗ってきた異性の話を巡ってネット上で大激論が巻き起こっています。 「男性は〜」「女性は〜」という主語で意見を述べている人に1度この作品を読んで欲しいなと思います。 本作は、人間が皆″男性″として生まれてきて、その中の1割が14〜20歳ごろを境に性転換して″女性″になり、声が低くなり乳房が大きくなり子宮が発達し男性器が縮小し筋肉・脂肪が増加していくという世界を描いています。社会は″女性″が主導していくもので、″男性″はそれを支える存在。 ただ、少しややこしいのですがこの作中での″男性″は現実世界の女性的な外見をしており、″女性″は男性的な外見で発達した乳房を持っています。 最後にあとがきで明示されているように、単なる男女の反転ではなくマーブルな状態を描いているのが特徴です。 この作品の中で、それぞれのキャラクターが語る性別ごとの役割の話や、「″女性″は」「″男性″は」という話や異性に対する態度は、読み手に応じてさまざまな感情を引き起こしてくれるであろうと思います。現実世界に照応してある人にとっては何も引っ掛からず、ある人にとってはこの上ないもやもやが生じるであろうことをつぶさに描いています。 男性だから、女性だから、″女性″だから、″男性″だから有利なこともあれば、不都合なこともある。ときにはそれに対して、過去から長い時間大量に蓄積したものも含めた不平不満を述べたくなることもあるのは否定し得ません。 ただ、筆者の御厨さんが ″性別や属性で人の中身ややるべきことをひとくくりにするのは、個人の理解をなまけたいがための単なる省エネモードのおこないだと思っています。  何かを集団でくくって語るとき、「今の自分は省エネモードになっている」という自覚はしていたいと思います″ と述べたあとがきにあるように、より本質的には個々人に依拠するものに対して意識せずに大きい主語で語ってしまいがちな状況はあると思います。 どういったものに対して自分の心はどういった動き方をするのか。その形を改めて把捉しておくのに、この作品はとても優れています。 何も個人としての意見を表出するなという気はまったくありませんが、省エネモードで雑な結論に結びつけて誰も幸せになれない不毛なやり取りに発展する前に、今一度立ち止まって一呼吸を置いて本作を読んでから、改めて熟考した後に言葉を紡いで発しても遅くはないでしょう。
ただ大きな猫になりたい
恋愛できない猫好きふたりと保護猫2匹の新生活 #1巻応援
ただ大きな猫になりたい
兎来栄寿
兎来栄寿
恋愛関係でない男女の描き方と、愛を持って描かれる猫にまつわる諸々がとても良いなと感じさせてくれる作品です。 男性からの恋愛や性愛に応えられないという悩みを持ち、両親が残してくれた一軒家に女友達のみおと二人暮らししていたものの、そのみおも3年で彼氏ができて出ていき独りになってしまった公務員の黒木里香。 彼女が保護猫をお迎えしようとするもの、譲渡会で単身者で一緒に世話できる家族も近くにおらず、自分の仕事が大変なときや体調を崩したときに責任が持てないようでは厳しいと断られてしまうところから始まる物語です。 猫が好きだからこそ、ペットショップで買うのは嫌で不幸な子をひとりでも減らしたいという里香の気持ち、同じように保護犬を迎えた身としてとても好感が持てます。しかし、ボランティアの言うことも至極もっとも。命に対して責任を負うということはそれだけ重いものですから。しかし、その後に譲渡会で出会った男性と共に助けた猫を育てていくこととなります。 恋愛関係ではなく一緒に暮らし始める男女の関係を描いた作品としても秀逸です。 互いに異性として恋慕することはできない。でも、日常の些細なことを共にして共感したり、「おかえり」「ただいま」と言える相手がいると安心できるという気持ちは確かに存在する。何より、互いのライフスタイルによって猫のサポートを補い合える。 そうした利害の一致から始まる共同生活の様子もいいです。理想的な部分だけでなく、赤の他人と一つ屋根の下で暮らすことの大変さもしっかり描かれます。それでも、猫たちの存在が潤滑油となり新生活が少しずつ回っていく様子を見ていると、世の中にはこういう形があっても良いと思わせてくれます。 私自身、結婚はするまで微塵も考えていませんでしたが、最近骨折した際にはとても助けられて独り身のままだったら相当大変だっただろうなと思いました。保護犬を迎える際も夫婦であるからと安心された部分もありました。何だかんだで共同生活は助かる部分が多いというのは身に沁みます。 また、猫の育て方や猫との暮らし、保護猫への解像度の高さも本作の美点です。原作者の筒井テツさんは実際にボランティア活動をしているそうで、幕間では保護猫をお迎えしたいと思っている担当編集のFさんとの実録保護猫マンガも描かれます。 作中で保護される要介くんと要美ちゃんはそれぞれの個性と共にとてもかわいく描かれ、このまま何事もなく元気で成長してほしいと願うばかりです。
わたしのお母さん
残酷な現実へ手向けられた願い #1巻応援
わたしのお母さん
兎来栄寿
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世の中には、最早どうしようもなく距離を置く以外に対処のしようがない人や物事が存在します。しかし、それが実の親であり自分がまだ経済的に自立できない子供であった場合は最悪です。絶対に離れた方が良いのに、離れる術がなくその手段を考えることすら封じられたままそれが当たり前なのだと刷り込まれて心身を壊されていってしまいます。 本作の第1話はとにかく読んでいて辛いものでした。小学生の少女トワが、毒親の極みのような実母の星羅とその愛人であるみちおから最悪の虐待を恒常的に受け続ける惨状が描写されます。ゴミ屋敷でまともな暮らしもできず、学校に通う時間に酒を買いに行かされ、些細なことで当たり散らされ暴力を振るわれ、あまつさえ……。現実にも、今も同様の被害を受けて生きている子がいるのだろうと思うと居た堪れなくなります。 この物語は、そんな残酷な現実へ手向けられたひと匙の希望であり救いです。リカワリ星からやってきた異星人によって、母親の存在は乗っ取られ、体はそのままでも中身はまったくの別人になりかわりトワは新たな生活を歩み出すこととなります。 虐待だけでなく、保護者間のカーストやそれが子供たちに伝播してのいじめなど現代社会の闇の部分が多く描かれます。子供同士のやり取りや、心の移り変わりの部分にもリアリティを感じます。ただ、そうした不条理をリカワリ星人が縦横無尽に切り開いていってみせてくれる様はカタルシスがあります。 兎屋まめさんの絵も綺麗で、序盤の星羅の描き方のおぞましさの迫力、さまざまなヴィヴィッドな表情の描き分けも良いです。 余談ですが、街並みの様子からも治安の悪さで知られる東京の某所を舞台にしていると感じられるのは気のせいでしょうか。
ねずみロワイアル
かわいい恐怖の殺し合い #1巻応援
ねずみロワイアル
兎来栄寿
兎来栄寿
『ムムリン』や『オオカミの子』の佐々木順一郎さんのかわいい絵柄で描かれる、残酷なバトルロワイアル。 そう、まさに高見広春さんの『バトル・ロワイアル』と同じようなクラスメイト同士の殺し合いが描かれていきます。1999年に出てリアルタイムで読んだ小説が、四半世紀経った今でもこうして色濃く影響を与え続けてフォロワーを生んでいるのは感慨深いです。 基本的なルールも『バトル・ロワイアル』に準拠しており ・殺し合いは島で行われる ・生徒たちには全員爆発する首輪が付けられている ・島にはランダムで刃物や銃器など武器が配置されている ・1日ごとに禁止エリアが設定され行動エリアが狭まっていく といった具合です。進化しているのは、スマホのような携帯端末でさまざまな情報を得られるということ。ただそれもどこかで充電ができないとずっと使い続けることはできないという制約も面白いです。 殺し合いのゲームが進行する傍らで頻繁にエモーショナルな回想が挟まっていく構成もまた『バトル・ロワイアル』を思い出します。それぞれの同級生たちが、普段の学校生活では見られない陰の姿を持っていたり、非日常だからこそ剥き出しになる感情を表したりといった醍醐味の部分もしっかり描かれていて刺さります。本家も、もちろんゲーム的な部分の面白さもありつつ思春期の少年少女たちが織りなす人間ドラマの模様が名作を名作たらしめた部分ですからね。 同じネズミでありながらそれぞれのキャラクターがしっかり描き分けられているのもすごいです。外見は似ているにも関わらず、それぞれがちゃんと個性的に立てられています。そして、このかわいさがあればこそ本家さながらの酷薄な展開が引き立ちます。 血と裏切りに塗れた島で、彼らの運命はどうなるのか。どのような結末を見せてくれるのか。目が離せません。
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マンガ麺

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「元カノと結婚したい」は叶うのか!? 主人公・市松海路(いちまつかいろ)の前に、7年前に失踪した元カノジョ・日下部日和(くさかべひより)がある日突然、現れた。恋い焦がれ、待ち望みすぎて、元カノ教の敬虔な信徒と化していた市松だったが、彼女の無理難題な要求が明かされて… 「市松君に私の出産記録を撮って欲しいの。」「だから市松君の精子が欲しい。」 『あげくの果てのカノン』米代恭が新時代を切り開く、新しいアンモラル…!? 深呼吸必至の元カノ×元カレ“やり直し”ラブストーリー!!!
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押見修造(漫画家)、驚嘆。村田沙耶香(小説家)、絶賛。高月(こうづき)カノン、23歳。高校時代からストーカー的に想いを寄せる境(さかい)先輩と、アルバイト先の喫茶店で再会を果たす。でも、いけない。先輩は世界の英雄で、そして奥さんのものだから。SF×不倫の異色の恋愛を描くのは、弱冠24歳の俊英。ストーカー気質メンヘラ女子の痛すぎる恋に、共感の嵐です!
崖の向こうで花が咲いてる

崖の向こうで花が咲いてる

同人誌でほそぼそ連載していた高校生椎野くんと桐木くんのじんわりゆっくりラブストーリーです。友達の友達の友達の友達は、自分の友達とはいえないんじゃ?と考えてた椎野は自分に好意を隠さない桐木のことをだんだん意識してしまい…… そんな二人がつきあうまでの3年間の話です。ほんのちょっと勇気を出したり声をかけたりかけられたり。
どう考えても死んでいる

どう考えても死んでいる

名前を強く呼ばれ、気がついた目黒晋太郎は、自分が死んでしまったことを認識する。また名前を呼ばれ、その声のもとに辿りつくと、恋人・翼が怪しげな霊能力者の男に騙されている場面に遭遇。霊能者が翼にキスをしようとしたところで窓を割って妨害するが、翼にはその姿は見えていない。しかし晋太郎がやったと確信する翼は、またその霊能者に降霊を頼んでしまう。そして晋太郎は自分が死んで1年半経ったことを知り、それでも晋太郎に会いたいという翼に、自分も会いたいと願うが……!? 電子限定おまけ付き!!
ロジックツリー

ロジックツリー

女子高生・大瀬良螢は、8人兄弟の5番目。 なるたけ正直に生きて行こうと思っているけど、周囲は皆、いろんなことを偽ったり隠したりしているようで……。三男・椿の恋人が螢の友人だったり、双子の四男・平を差し置いて五男・則だけ声変わり&カノジョが出来たり、螢の気になる編集者・柚木が次男の畔にコンプレックスを抱えていたり。螢を中心に兄弟の悩みと恋愛模様を描いた大瀬良家の物語、開幕!
ややこしい蜜柑たち

ややこしい蜜柑たち

親友(女)に執着して彼氏を寝取ってしまった迷走女をとりまく三角関係ラブストーリー。淡々とした陰気な美人・清見には、ほがらかなモテ女子・初夏しか友達がいない。そんな2人の間に、初夏の新彼・白柳が登場した。都内出身・将来有望・美形…とハイスペな年下大学生だが、中身はフツーでどちらかというと暗い。清見は思った。「初夏はいったいどんな気持ちでこんなつまらない男の子と付き合っているんだろう」と。……そうしてある日、清見はやらかした。起きたらラブホテルで、隣には親友の彼氏が…!!!絶対絶対まずい!!とパニックにおちいった清見は、その日から暴走し始める。親友への対処×やらかした男との距離感=何が正解…!?何もかもがナナメ上の女・清見をとりまく情緒グラグラ三角関係、第1巻!
キッスインブルーヘブン

キッスインブルーヘブン

予定調和な日々を崩してくれるような「ときめき」を求めてる。思いがけないいい波、乗りたくて楽しくてたまらない波みたいな――。欽之介がいつものようにサーフィンをしていると、突然「執事」に声を掛けられる。うちの「坊ちゃま」と別荘でランチをご一緒できませんかと。怪しい誘いに乗って向かった先で、待ち受けていた坊ちゃまは思いのほか歳上で!? これは求めていた、揺れる波のように予測不可能なときめきの予感――!?
感覚・ソーダファウンテン

感覚・ソーダファウンテン

すべての女子におくる、五感にまつわる恋愛オムニバス! 私の視界、君の声、思い出の匂い、あの人に触れたい、あなたと食べるごはんの味…そして今は亡き彼の気配。毎回違った“感覚”をテーマに繊細な描写、リアルな会話で綴る珠玉のストーリー。女は五感で恋をする☆
うそつきあくま

うそつきあくま

嫉妬深い毒舌の先輩作家×健気な元アシの売れっ子作家、漫画家どうしの恋愛愛憎。余利計一は健気なほうだ。先輩作家・宇郷悟が好きだったが、セフレのような扱いに甘んじている。宇郷という男は、嫉妬深い・卑屈・毒舌と3拍子がそろう性格の悪い男で(そしてセックスはねちっこい)、ファンでアシスタントだった余利に手を出したあげく、余利が100万部超の大ヒット作家になるやその腕から放り出したのだった。そして余利が泣いて泣いて立ち直った頃に宇郷はなぜか再び現れ、肉体関係は復活。ふりまわされて心を痛める余利は――?
あした死ぬには、

あした死ぬには、

ものすごく共感できる、老若男女におすすめの傑作です! 四十代女性が直面する体調の変化や人間関係のあれこれに、笑ったり涙したりしつつ うなずきすぎて、私は首が太くなりました……!――三浦しをん、絶賛!! 歳をとるのは怖いですか? ~切実に生きる女子たちの心に寄り添い、そっと背中を押してくれる本。~ 20代ほどがむしゃらじゃない。30代ほどノリノリじゃない。40代で直面する、心と身体の変わり目。立ちはだかる40代の壁。突然の病気、更年期障害、取れない疲労、働き方の変化、お金の不安、これからの人生プラン……私のあしたはどうなるの!? 本奈多子(ほんな・さわこ)、42歳、独身。映画宣伝会社に勤め、ハードワークをこなす日々。ある夜突然、心臓の動悸が止まらず、体が冷たくなって……。もしかして私、更年期障害かもしれない!? 苛々したり、涙腺がゆるんだり、おばさんと言われて悲しくなったり。心身の変化に戸惑いながら、迷いながら、私たちは、あしたを生きる。
キッスインブルーヘブン 分冊版

キッスインブルーヘブン 分冊版

予定調和に思える日々を崩してくれるような「ときめき」を求めている欽之介。ある日、いつものようにサーフィンを楽しんでいると、突然「執事」に声を掛けられる。うちの「坊ちゃま」と別荘でランチをご一緒できませんか、と! 怪しい誘いに乗って向かった先で、待ち受けていた坊ちゃまは思いのほか歳上で!? 格差、歳の差を越えて、夏のときめきが生まれる――!?
黄昏てマイルーム

黄昏てマイルーム

都内で働くOL・八重樫紀子ことキコちゃん(33)が、ある日仕事から帰ってくると部屋の中はがらんどう…。顔だけは百点満点だった元恋人の前髪重男に、家財道具一式をキレイさっぱり持っていかれたのであった。なんにもない部屋をなんとか生活できるレベルにすべく、DIYを始めるキコ。不器用だし手間も時間もかかるけど、自分で作った「ものたち」には不思議なほど愛が湧いてきて…。恋に、仕事に、DIYに、失敗を繰り返しながらも体当たりで成長をしていく、キコの再生ものがたり。初心者でも作れる簡単なDIYのアイデアや、写真で解説するノウハウページも!
燃えよあぐり

燃えよあぐり

コロナ禍、貧困、政権不安定…生きづらさの一途を辿る令和日本。だからこそ時代はこの女!?会社カースト最下層から脱却!?カルチャー界を舞台としたネオ・オフィスサバイバル!!
試し読み
漫画家さんのおいしいさしいれ

漫画家さんのおいしいさしいれ

いくえみ綾、志村貴子、藤村真理、谷川史子、松田奈緒子、高野雀、磯谷友紀、池辺葵、久世番子さんら42人が結集した、女子漫画家のグルメエッセイ最旬アンソロジーです。今までで一番感動したあのケーキ、今も忘れられないあの惣菜、いつか貰いたい憧れのあの和菓子! 定番チョコから、老舗和菓子、人気のクッキー、最新スイーツまで、おいしいグルメ情報が満載です! これらを貰えたら、漫画家さんも原稿アップが早くなること間違いなし(笑)
東京無印女子物語

東京無印女子物語

あふれるヒト、モノ、ユメ――楽しいけど淋しい街(トーキョー)の片隅、小さな6つの恋物語。フィールヤングの人気シリーズ待望の単行本化☆ねむようこはじめ、注目若手作家陣が描くポップでキュートな現代寓話短編集!大学生ののぞみは美大生のカメちゃんと同棲中。上京したてで、周りのスピードについていくのがやっとだったのぞみが、初めて自分らしくいられたのが彼の隣だった。しかし、将来を考えようとしないカメちゃんに不安を覚えるようになり……。(story.1『のこのこ』より)等身大の女の子の気持ちを描いたリリカルな短編6編を収録!!
ひとりで飲めるもん!

ひとりで飲めるもん!

立ち食いそば、牛丼店、ラーメン店…ここが私の飲み処。紅河明(ベニカワメイ)はコスメ会社の広報部に勤務する28歳。仕事もできて、スタイル抜群。憧れる人も多いが、やっかみも多い。そんな彼女の密かな楽しみは、チェーン店、それも居酒屋ではなく、チェーンの丼店、ラーメン店、カフェで食事をとりながらさくっと飲むこと。働く女性に贈るちょいグルメストーリー。ちょい飲みで今日をリセット。一人で飲むから弱音をはける。
魔法主婦マジカルミュー

魔法主婦マジカルミュー

紙のコミックスに未収録のストーリーを一挙掲載!!夫&娘と幸せに暮らす主婦・兵藤美結(30)。実は彼女、正義の戦士・魔法主婦マジカルミューなのだ!魔法少女時代から20年経って主婦になっても邪悪魔人と戦っているミュー、ステッキと間違えてネギを出すミュー、戦闘の後はコスチュームの洗濯をするミュー…。LadiesandGentlemen,目をそらさないで。これが魔法少女のリアルだ…!!
珈琲いかがでしょう

珈琲いかがでしょう

あなたの為の珈琲を…。幸せを運ぶ移動珈琲物語! いい香りに誘われて向かったその先に待っていたのは、素敵な移動珈琲屋さん。店主が淹れる珈琲は、一杯一杯、丁寧に、誠実に、心を込めて淹れられ、なんだか気持ちがほんのりほぐれるような、そんな味。そのお店はあなたの街にもやってくるかも…? 幸せを運ぶ移動珈琲物語第1巻!
don’t like this

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苦手だったこの部屋で、初めて釣った魚を食べた。少しずつだけど確実に、私の「好き」が増えてきた――。吉田めぐみ、職業・イラストレーター。筋金入りのインドア派、一人は嫌いじゃない。「アナタの今の家は 釣りをするのに最高の環境では?」元同僚から届いたメッセージをきっかけに、知らない場所や人と交わるようになり…。ちょっとの勇気が出会いを紡ぐ、“おひとりさま”の希望の物語。
マイペースと歩く

マイペースと歩く

人目を気にして学校生活を送る近藤。そんな彼女の前の席に座っているのは、毎朝寝グセをつけて登校し、マイペースに日々を過ごす高橋だった。とあることをきっかけに、ふたりの距離が縮まって……。『ご成長ありがとうございます』の俊英が描く、ほろ苦く優しい思春期の物語――。
ご成長ありがとうございます

ご成長ありがとうございます

関西在住の三本阪奈さんは、アラフォー主婦で3児の母。変わり者の長女・ケイ(小4)、マイペースな次女・フミ(小1)、ヘタレボーイの長男・ユキ(3歳)、ちょっとツイてない夫(年下)と5人で暮らしています。家族それぞれが自由気ままに生きる日々は、ボケとツッコミが絶えません!! かわいくて、笑えて、元気が出る、5人家族の日常 単行本でしか読めない、描きおろし3編も収録♪
THE BUNGO

THE BUNGO

世界的文学者・大江…もとい、大井健一が提唱した「大江賞」…もとい、「大井賞」の設立が発表された。候補者は「サイドカーに三人」など名作を連発している若手天才作家・長嶋…もとい、長瀬有也だ!
長嶋有漫画化計画

長嶋有漫画化計画

芥川賞・大江賞作家長嶋有の小説を超豪華執筆陣が漫画化!原作者×漫画家、かつてないほど相思相愛!電子化にあたり、長嶋有が11年前を振り返り、そして11年後の現在を語る書き下ろし原稿「電子版あとがきと補遺」を収録。【参加漫画家】うめ、ウラモトユウコ、衿沢世衣子、オカヤイヅミ、カラスヤサトシ、河井克夫、小玉ユキ、島崎譲、島田虎之介、萩尾望都、100%ORANGE、フジモトマサル、陽気婢、吉田戦車、よしもとよしともに加え、藤子不二雄Aが表紙イラストを描きます。※2012年に光文社から発売された同書籍の電子版になります。
パラレル

パラレル

妻と離婚したばかりの元ゲームデザイナーの七郎。常に複数の女を口説いている会社社長の津田。東京のさほど偏差値の高くない私立大学時代に知り合った二人は、長い友人関係を続けている。
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