まくむすび

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こんな高校生活の幕開け最高!期待の演劇部活マンガにコメントする
まくむすび
創作活動に触れる全ての人々に送る物語
まくむすび 保谷伸
sogor25
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主人公の土暮咲良(つちくれ さくら)は中学の頃から密かにマンガを描き続けていたのだが、本当に些細な、でも本人にとってはとてつもなく大きなきっかけによって、完全にマンガを書くことを諦めてしまう。そこから高校に入学し、新たに部活に入るという段階で出会ったのが"演劇"だった。 創作活動に対して挫折を味わった主人公が、それまでの経験を活かせる、でも全く違う分野で新たな創作活動に光を見出すという物語。個人的には、挫折から新たな才能を発露するという展開を高校1年生までの非常に若い年齢までの中で、しかも1話の導入の段階ではっきり描いていることを凄く新鮮に感じていて、またその導入があるからこそ、作品全体としてはとても軽妙な雰囲気なのに、作品のバックグラウンドに大きな熱量を感じられる作品になっていると思う。 この作品を読んだ時に2作品ほど頭の中をよぎった作品がある。1つは「フェルマーの料理」。こちらは数学の道に挫折した主人公が料理の道に活路を見出すという物語。主人公が目標を見つける経緯には近いものがあり、理系主人公の作品が「フェルマーの料理」なら文系の作品は「まくむすび」と言えるかもしれない。 もう1作が「イチゴーイチハチ!」。こちらも主人公は怪我という形で野球の道に挫折するが、それまでの経験とは全く異なる生徒会の活動に邁進していく物語。個人的には、最初は半ば強引に引き込まれたものの周囲の人々の影響で徐々に演劇部に馴染んでいく咲良の様子が「イチゴーイチハチ!」の主人公・烏谷や幸に重なって見え、今年惜しまれつつも完結したこの作品のロスを抱えるファンの心を埋める作品になってくれるんじゃないか、という期待をしている。 最後に、これは本当に全くの偶然なんだけど、2019年7月19日という日に「創作活動に対して挫折を経験した主人公がまた創作活動に向き合っていく物語」である今作の1巻が発売され読むことが出来たということは私にとっては救いだった。創作をする人であってもそうでなくても、この作品に触れることでどれだけ傷ついても前を向いて歩んでゆける、そんな作品になっていくのではないかと思う。 1巻まで読了
アッコちゃんは世界一
今に疲弊した人へ送られるエール #1巻応援
アッコちゃんは世界一
兎来栄寿
兎来栄寿
『幻滅カメラ』の1,2巻と同時発売となった、鳥トマトさんの短編集です。 「アッコちゃんは世界一」 「三田君は大丈夫」 「マイお兄ちゃん」 の3つの短編が収録されています。 表題作の「アッコちゃんは世界一」から、とにもかくにも最高なので百聞は一見に如かずでまず読んでみて欲しいです。 https://x.com/tori_the_tomato/status/1788949089192923568?s=46&t=S5wm4E-TmT39NBg4BgQsPA 今この瞬間も、現実世界では元々とても素敵であったはずの人がさまざまな理由でその輝きを失わされるということが起きているのでしょう。そうなった時に、物語の中では救いの手が差し伸べられますが現実にはその手となるものは自分自身しかないのではないか。そんな感想を抱く人には、まさに3作品目の「マイお兄ちゃん」が刺さることでしょう。 解像度の高い、現代社会で人間を壊す力を持つストレスの元凶たち。そういったものたちから自分を守れるのは究極的に自分だけで、大切な自分を守ることを諦めたり忘れてしまったりしている人に力を与えてくれる物語となっています。 「三田君は大丈夫」は、東大生の本郷くんとKO生の三田くんがそれぞれ会長と副会長をこなす国際交流サークルのお話です。本郷くんにコンプレックスを持つ三田くんが、自尊心を保つために本郷くんにはできない女の子と遊びまくるという行為に直走っていきます。 言うまでもなく本郷は東大の、三田は慶應のキャンパスがある土地の名前で、ヒロインのキラキラした白金さんや芋な千駄木さんさんも土地のイメージから来ているのでしょう。 こちらも「東京最低最悪最高!」の鳥トマトさんだなぁというのを強く感じさせてくれる作品で、競争社会の歪みが生む空虚さや絶望感が何とも名状し難い読み味をもたらしてくれます。三田くんだけならまだしも、最後の方の千駄木さんのセリフが実にリアリスティックで無情感を呈しているところが好きです。 この作品の並びも絶妙で、「マイお兄ちゃん」で締められることによって全体的な読後感としては非常にスッキリしたものになっています。 いろんなものに負けずに大切なあなたの人生を生きて欲しいという祈りの込められた、素敵な短編集です。
幻滅カメラ
汚泥のような現代を切り裂く刹那の光 #1巻応援 #完結応援
幻滅カメラ
兎来栄寿
兎来栄寿
「東京最低最悪最高!」の流れを色濃く受け継いで、現代を鋭利に刳り取ってみせる鳥トマトさんの新作が1・2巻同時発売となりました。同時発売の『アッコちゃんは世界一』とあわせて3冊同時発売ですが、全部オススメです。 主人公のジゲン(27)は売れないカメラマン。その姉・姫子は、新興宗教の教祖と仮面結婚をして莫大な財力を手に入れ、学生時代からの関係がある社長令嬢でビッチのアメリと恋仲。ジゲンが好きな5つ年上の男性・山田は、アメリと不倫する仲で奥さんとの離婚を画策中と1話目で提示される人間関係からドロドロの泥沼の様相を呈してきます。 そして、それだけでも成立しそうな人間ドラマにひとつまみ盛り込まれるファンタジーが、タイトルにもなっている「性欲を消すカメラ」の存在です。人間の根源を司る三大欲求のひとつを消し去ると、何が起こるのか。さまざまなシチュエーションの人間たちが、どこからどこまで性欲を原動力に駆動しているのかということを目の当たりにできるという意味でも非常に面白い作品です。 お金が無さすぎて資本主義の犬になるしかないジゲンは、生活のために姉や社会から多種多様なことを強いられます。マッチングアプリやブラック企業、メン地下や新興宗教、モラ男や家父長制など現代の象徴的なシーンを巡っていく中でさまざまな人間と関わっていきますが、「普通」とか「まとも」と呼ばれるような生き方をしている人がメインにはほぼ出てきません。 しかしながら、深い中身を見ようとしなければ、皆普通に生きているように見えるであろうという絶妙な状態の描き方が最高な作品です。あたかもカメラを通して切り取った一瞬が、現実よりも美しく見えるように。みんなみんな生きているんだ、友達ではないけれど。 ジゲンの恋愛に関するトラウマであったり、姫子やアメリの現在に至るまでの諸事情などが徐々に明かされていく構成、その上で描かれる主軸の人間ドラマも良いです。個人的には、1巻終盤のドライヴ感全開のセリフと展開が好きです。呪詛返しして強く生きていく力と魂を常に持っていきたいものです。 鳥トマトさんの絵柄とお話の相性も絶妙で、デフォルメが強いところとシリアス時のギャップがまた演出として強い効果を発揮しています。表情の描き方などもすごくいい瞬間があるんですよね。 唾棄したくなるような現実、人間、事象を描きながらも、読んでいると不思議とエネルギーをもらえる紛うことなき現代文学です。
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