流し読みは出来ないにコメントする

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沈黙の艦隊

無っ茶苦茶面白い超名作。故に要注意。

沈黙の艦隊 かわぐちかいじ
完兀
完兀
漫画家・かわぐちかいじの名声を高めた代表作であり、今読んでも無茶苦茶面白くて熱い名作である。 まだ読んでない人は、すぐ読んだ方がいい。このレビューを読み終わる前に読破する方がいい。海面下の武骨な”てつのくじら”とそれを取り巻く人々が織りなす、全地球スケールに広がる風呂敷のファンタスティックな面白さに痺れること間違いなしだ。 そして、だからこそ、この漫画は要注意なのだ。 この漫画はファンタスティックを通り越すぶっ飛んだファンタジー作品であり、「いやいやそれはおかしい」と逐一ツッコむぐらいの冷静さが最終的には必要な、あぶない漫画である。 これは戦闘描写に限った話ではなく、軍人描写・政治描写でも同様の話だ。 というか、素人目にもわかりやすい戦闘描写の範囲だけでこの漫画のファンタジー成分を看破した気になりかねない点が余計にあぶない。このことに関しては、交渉を優位に進めるための心理的トリックに通じるものを感じる。あるいは(いい譬えではないが)巧妙なプロパガンダと似ている。 要するに、面白さに痺れたまま、作品に感化されたまま、染まり切ったままは危険だということだ。 本作はその面白さと現実世界に即した設定故に、なぜ現実はこの作品のようになれないのかと憤って、現実から離れたところに行ってしまって戻ってこれなくなってしまう恐れがある。これは最高の読書体験でもあるが、現実に生きる私たちはいつまでもそのままではいられないだろう。デビルマンを読んで「地獄へ落ちろ人間ども!」に共感しっぱなしでいてはいられないのと大差ない。 なお、私は本作を読んでしばらくはかなり感化されていた。最高の読書体験の一つであった。こんな気持ちいい体験、味わえるなら味わった方がいいに決まっている。 故に、本作が提供してくれるかもしれない最高の読書体験に水を差すようなものは、あらかじめ見ないよう注意(※読者の冷静さを取り戻す激うまギャグ)するのがよいだろう。 こんな長文駄文レビューを読む前に、最も面白く読めるうちに面白い漫画は面白く読むべきなのだ。
病棟夫婦

重く苦い、でもそれだけでもない人生 #1巻応援

病棟夫婦
兎来栄寿
兎来栄寿
『宇宙戦艦ティラミス』 『SUPERMAN vs飯 スーパーマンのひとり飯』 『僕!!男塾』 『ワンオペJOKER』 『LV41才の勇者』 『落合博満のオレ流転生』 など、さまざまな作品で楽しませてくれる宮川サトシさん。 送り出される作品はコメディが多いですが、こちらは原点である『母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。』を彷彿とさせるようなテイストの作品です。 互いにガンで同じ病院の隣室に入院している老夫婦。 仕事を辞めて10年引きこもっている息子。 誰にでも訪れるかもしれない、ある家族のままならない状態が描かれます。 夫の方は亭主関白であり、息子が仕事のかたわらでマンガを描いて芽が出たときも、辛くなって仕事を辞めたときにも理解は示さず強く当たっていた昔気質の男性です。ただ、そんな性格も病を経て少しずつ変わっていく様子を見せます。 結婚して子供も産まれて一見順風満帆に見える娘にも、少し陰が見え隠れします。10年引きこもっている兄がいて、両親も近い将来どうなるか解らないという状況も併せて考えればその心境が穏やかでいられないのも当然なのですが。身内が少しずつ衰えていくのを見守る時間の辛さはよく解ります。 歳を重ねて、変わったことにより初めて交わせる言葉があり、それでも変えられないものもあり。ささやかなものに幸せを見出し、拭えない後悔を抱く。重く苦く、されどそれだけでもない人生の味がとつとつと物語られていきます。 夜の消灯後に、ふたりで言葉は交わさずとも壁を叩き合って互いの存在と意志を確かめ合うシーンが何とも胸に迫ります。 いつかは必ず訪れる、身近な人との別れ。 あるいは、自分自身のこの世のすべてとの別れ。 そうした瞬間が訪れる前に、やりたいことやできることをなるべく悔いの残らないようにやっておきたいと思わせてくれる作品です。
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