外国人視点の開国後日本
ふしぎの国のバード 佐々大河
原作となるイザベラ・バードの本は読んだことがある。
でもこれほど情景豊かに想像はできなかったし、イザベラ・バード視点のみなので、やはり周辺情報が客観的に描かれる漫画はやはり違う。
絵があると、それがすべて本当のように引っ張られてしまうのが弱点と何かで読んだ。
でも、自分だけの想像力では描ききれない、田舎の恐ろしいほどのノミやその他虫、そして不衛生さ。
それらが日常の様子として描かれ続けているので、漫画とはすごいものだなと思い知らされた。
そもそも、バード女史、よく行ったな。肉もないのに。
また、環境だけでなく、懐からボトルに入れた筆を取り出し記録をしたためる鶴吉の一連の仕草。
大人になったことを誇りに思う女の子の表情。
細やかな当時の人々の日常が、ドラマの何気ないワンシーンのように描かれていて、今は消え失せた文化を知らされる。
ちなみに、ヨーロッパより難儀な雑草が多い日本で、バード女史が農民が勤勉に働き雑草を刈るから「雑草がない」と表現したコマに、フフとなった。
有名な場面ですね。
キリスト教的な倫理観が根付いている現代の我々が、当時の日本へ気軽にトリップできる、すてきな漫画です。
まだ神さまが人とともに暮らしていた倭の国で、道士・役小角とその弟子ふたり組がさまざまな神さまと人智を超えた交流をしていく…というのが大筋のコンセプト。
草木の香りが匂い立つような、現世とはおよそ異なる濃密な大気を湛えた世界が高密度の筆致で閉じ込められています。
無駄のない、整理された描線でこのエキゾチックな空気感が生み出されていくギャップがたまらなくて…。表紙の題字なんかからも分かると思うんですが、超・オシャレなんですよ!スタイリッシュ!
物語の構成も王道の和モノファンタジーの妙味をおさえながら、随所で変化球が飛んでくるのが飽きさせません。
僕が一番気に入ったのが「神さま」の捉え方が、ほとんどSFをそのままぶっ込んだかのような自由さにあふれていることです。デザインも素敵。
起きる超常現象の演出も毎話ケレン味が効いているので、こういうジャンルに親しんでる方でも新鮮に楽しめるんじゃないかと思います。
とりわけ2巻分通してキマる物語のギミックは超テクニカル、和風SFココにあり!
続刊が待ち遠しい作品です。