美術界の表でも裏でも、己の器量とルールで疾走する男・フジタ。にコメントする

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名無し
1年以上前
藤田は間違いなく目利きとしては一流だが、 商売人としては一流ではないかもしれない。 だが、それが藤田の魅力でもあると思う。 どの業界にもそれで飯を食っているプロ・商売人の間には 特有のルールやしきたりがある模様。 美術品とか骨董品を扱う業界では 「互いに商売の邪魔をしない」 「度の過ぎる抜けがけはしない」 という暗黙の了解はあるみたいだ。 例えば、 偽物だと知りながら本物だと思うと言って ボッタクリ価格で売りつけている商売人がいたとして、 同業他者がそれを知っても、そのことを購入者に 告げ口はしないらしい。 まあそういうことを繰り返している商売人は自然と 信用をなくして自滅するだけだろうし、 そこを指摘しあうようになれば、 儲けることが難しい業界になるだけだし。 また、お宝の山を発見した場合など、 全てを一人で独占するのではなく、 関係先にも何かしら少しかませてあげて 儲けを分かち合うものらしい。 これも商売人同士の防衛行動・助け合いとしてありえるだろう。 本当にそれが商売人間のルールであるならば、 藤田はたびたびルールを破っている。 漫画の主人公としては痛快だが、 美術骨董業界の現実がそうであるならば 漫画であるとはいえ非リアルな行動ということになる。 また逆の意味で、藤田はギャラリーフェイクの経営に、 というか資金繰りに結構苦労して妥協していたりする。 その辺はリアルかもしれないし、 ギャグ・エピソードとしてもありだと思う。 だが、漫画的にはゴージャスだとかドリームな面を 薄くしてしまい、主人公の魅力や個性を薄くする デメリットはあると思う。 そのあたりは漫画を読んだ方々それぞれに 様々な印象を受けるだろう。 私自身は、経営に四苦八苦する藤田も見たいし、 見ればリアリティ云々抜きに楽しめる(笑)。 また、添付画像の下半分は第10巻第5話の1シーンで、 実は自分にメリットはない立場なのに、藤田自身の意思で ダーティな交渉術を駆使するシーンだ。 悪徳画商と言われる男の、悪徳な交渉シーンだが 藤田が求めているのは画商としての利益ではない。 美の奉仕者としての得だ。 このへんも藤田とギャラリーフェイクならではの 味わいだと思う。
藤田は間違いなく目利きとしては一流だが、
商売人としては一流ではないかもしれない。
だが、...

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名無し
1年以上前
テーマが美術芸術骨董などなので 「果たしてこの作品の真贋はいかに?」 という話も多い。 私も所詮は真の美などワカラン男なので、 じつはギャラリーフェイクの話でも 美がどうとかより、この手の 「で、これって本物なの偽物なの?  本物だったら幾らするのよ!」 「詐欺なんじゃねーの、騙されちゃうんじゃないの?」 という感じの話が好き。 他の漫画や小説、ドラマなどでも真贋が肝になる 話は多いけれど、自分の今までの見聞きした作品では 「結局は偽物」だったり 「真贋は結局不明のまま」で終わるものが ワリと多かったように思う。 おそらくは現実に存在しえないものを 「ありました」 と登場させるのはフィクションであっても 色々と問題が生じるからなのだろうかと推測するが。 ギャラリーフェイクはワリと 「これは・・本物だ」 みたいな話があるのでその辺が好き。 安直に本物にしました、という感じでもないし。 偽物でした、みたいな話も、偽物を作る過程や ソレをダレがなんの目的で利用したのか、とか 面白く描かれていることが多いし。 美術漫画としてだけではなく コンゲーム漫画として面白い漫画だとも思う。
女神の標的
戦後の金塊争奪サスペンス #1巻応援
女神の標的
兎来栄寿
兎来栄寿
『がんばれ元気』、『お〜い!竜馬』、『あずみ』などでお馴染みの、小山ゆうさん最新作。『颯汰の国』を挟んで、『雄飛』と同じ昭和の物語が新たに紡がれています。 本作は1953年の戦後間もない時代が舞台。大衆演劇の花形役を務める主人公の春子が、日本軍の大佐であった父が隠した日本再建のための金塊を巡る争奪戦に巻き込まれていくサスペンスです。 男剣士を凛々しく演じる美しく強い春子は、恩義のある座長のもとで何も知らず暮らしていましたが、ある日を境にその日常が崩れていってしまいます。ただ、戦後という時代もあり、ただやられるばかりではなく暴力に対し時に立ち向かって反撃していく姿もあり痛快です。 鴻鵠の志で金塊を隠した春子の父に対して、本当に存在するのかどうかも解らない「女神」(作中で金塊の隠語と語られる)を巡って、多くの人々が醜悪な争いを起こしていくさまは何とも言えません。 そしてまた、もし金塊が時の総理の下に首尾よく回っていったとしてもそれが正しく使われるかどうかは別の問題として存在するのもまた無常感を覚えさせられます。仮に総理が高潔な志で差配を行おうとしても、さまざまな思惑や柵が絡んだ政界でどこまで理想通りに事を運べるのか。栓なきことと解りながらも、考えてしまいます。 ともあれ、さまざまな勢力が互いに画策し合い息もつかせぬ展開で、誰を信用できて誰が信用できないのかも解らない春子の緊迫感がそのまま伝わってくるようです。 小山ゆうさんももう76歳ですが、筆に翳りは見えません。池上遼一さんも今月で80歳を迎えますが、皆さんお元気でい続けて欲しいです。
やがて、ひとつの音になれ
失った音と生きる意味を取り戻していく物語 #1巻応援
やがて、ひとつの音になれ
兎来栄寿
兎来栄寿
新鋭・草原うみさんの初商業連載作品です。 路草で公開されていた珠玉の短編をまとめた『mothers 草原うみ短編集』も6月に発売となるようで、併せて推したいです。 本作の主人公は、5歳からコンサートに出演し10代前半からプロとして活躍しながらも局所性ジストニアという脳の病が発症したことをきっかけにピアノを弾けなくなってしまった越智奏(かなで)。 かつての仲間たちが華々しい活躍をしているのを尻目に、印刷工場のバイトをして日々を凌ぎながら誰とも話さず下を向いて耳を塞いで過ごす日々。 そんな彼を変えるきっかけになったのは、隣の部屋に引っ越してきた33歳のライターの横野絵里と、その6歳のピアノに憧れを持つ息子の陽向多の親子。7年ぶりに向き合ったピアノの音色と人との触れ合いが、奏の失ったものの大きさと大切さを気付かせていきます。 音楽という軸がまずあり、その上で人生で最も大切なものを失くしてしまった青年の再起の物語という軸も並存しています。夢も未来もすべてを無くしてしまい、無気力になり周囲に呪詛を撒き散らすことしかできなくなってしまっていた奏の姿は痛々しいですが、理解もできます。 草原うみさんは、短編からも本作からも痛みや悲しみを掬い取り、そうしたものを描いた上で前に進む普遍的で大事な人間の営みを描くのに長けている方であるという印象を受けます。どうしようもなく人生に訪れる不条理や不遇、他者からの心ない扱いを受ける瞬間。そういったものもありながら、勇気を出して前へ進んでいく人間の気高さや尊さを描ける方です。 この物語のもうひとりのキーパーソンは、かつて奏の音に心酔していて、今は「ネオピアニスト」として動画配信サイト経由で大きな人気を博すようになった真琴。彼との再会によって物語は動きを見せ始め、互いの存在が互いに大きな影響を与えていきます。 個人的には、横野親子との日々の交流シーンが好きです。現代では希薄になりがちな隣近所との関係ですが、そうした赤の他人との繋がりが大きな支えになることもあるというのも良いなと思います。 単行本の表紙絵も非常に良く、回収されるであろうタイトルを表すシーンへと辿り着く瞬間がとても楽しみです。
レタイトナイト
豊かなファンタジーの極致 #1巻応援
レタイトナイト
兎来栄寿
兎来栄寿
『ベルリンうわの空』の香山哲さんの新作です。 前作の『香山哲のプロジェクト発酵記』では「新しい連載プロジェクトの立ち上げ方」自体をマンガで描くという珍しい試みにも取り組んでおられましたが、まさにそこで考え捏ねられ発酵させられていた新作がこの『レタイトナイト』です。 『香山哲のプロジェクト発酵記』自体も、自分の寿命の使い方や物事の進め方を考え、見つめ直すという点でとても面白い本ですし、何より本作と併せて読むことで濃密なメイキングとして両方をより楽しみるのでぜひ読んでみて欲しいです。 香山哲さんは、その在り方が真の意味で「豊か」であるということを感じます。 わかりやすい流行や、かくあらねばならないといった縛りから解き放たれた自由にところで、読み手のこともある程度考えながらも自分が好きなもの・味わいたいものを全開にして描いている。こういう作品が、こういうマンガが世にある、出版されるという状況の何と素晴らしいことかと思います。 一口で言えばファンタジーですが、もう開始数ページの絵だけで魅せられる世界の様子、そして「レタイトナイト」と書かれた扉絵まででも香山哲さんの生み出す圧倒的な世界観に気持ちよく呑み込まれます。 地図や各地のスポットが描かれているところや、いろいろな小道具、その描き方も含めて幼いころに『エルマーのぼうけん』を読んでワクワクしたときのような感覚を呼び起こしてくれます。 ファンタジー世界を描く際に大切なのはそこで生きる者の日々の暮らしのディティールですが、『レタイトナイト』はそこの解像度の高さが素晴らしいです。そこがどんな世界で、どんなルールがあり、どんなことをして、何を思いながら、何を食べて暮らしているのか。そういった部分はつぶさに描かれていき、世界の匂いや温度を感じられます。 この世界独自の生き物や概念などもありながら、光を照らす角度によっては現実と繋がり考えさせられる部分があるのも良きファンタジーとしての性質を満たしています。 個人的には、食堂「フメンカダ」で出されるバラエティ豊富な「マリム(定食)」の数々に心惹かれます。野菜や穀物や豆など、素材としてはシンプルなものが多いのですが、その美味しそうなこと。巻きクブなども、絶対好きです。 これだけの世界観を作り込みながら、比較的ミニマムなお話を展開しているところもまた独特で良いです。普通であれば大国同士の戦争のような大きい話になりそうなものですが、そうではなくこの世界で生きているひとりひとりの地に足のついた生活をじっくり描いているところが、ある種の贅沢ですらあります。 読んでいる間はここではないどこかへ飛んで、豊かな時間を過ごせる作品です。
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