となりのマンガ編集部 第7回:ビッグコミックスペリオール編集部 価値観を揺さぶる面白さを生む制作現場の裏側

マンガの編集部に赴き、編集者が今おすすめしたいマンガやマンガ制作・業界の裏側などを取材する連載企画「となりのマンガ編集部」。第7回は『ビッグコミックスペリオール』編集部を訪ねました。『スペリオール』といえば尖った作家性を尊重する雑誌というイメージが強く、個人的にも常に注目している漫画雑誌です。最近では大ベテラン作家の池上遼一さんと稲垣理一郎さんの豪華コラボ作品である『トリリオンゲーム』の実写化が発表されたり、浅野いにおさんの新連載『MUJINA IN TO THE DEEP』が始まったりと勢いに乗っています。一方で、安藤ゆきさんやくずしろさんなど少女マンガ誌や百合雑誌で執筆していた感性豊かな女性作家から、67歳の新人として話題になったハン角斉さんまで非常に幅広く起用しており、バラエティに富んだ魅力がある『スペリオール』。更に、2019年からは『スペリオール ダルパナ』という新たな電子レーベルも登場しました。そんな『スペリオール』編集部の編集長を務める寺澤さん、編集部員の待永さんにお話をうかがいました。

取材:マンガソムリエ・兎来栄寿


今、非常に活気のある『スペリオール編集部』のおすすめ作品

――まず最初に、自己紹介をお願いいたします。

寺澤 『ビッグコミックスペリオール』編集長の寺澤と申します。出版社に入って、最初は『SAPIO』というジャーナリズム系、オピニオン系の情報誌に十数年おりまして、それからコミック局の『ビッグコミックスピリッツ』に異動し十数年在籍しまして、『スペリオール』に来て今4年目、昨年秋から編集長をやっております。『スペリオール』に来てからはたかたけしさん『住みにごり』、萩原あさ美さん『編集の一生』や𠮷沢潤一さん『アタックシンドローム類』の企画スタートに関わらせて頂いたり、山口貴由さん『劇光仮面』の担当をさせて頂いたりしています。

――今、『ビッグコミックスペリオール』編集部が推したいマンガ3作品を編集者の目線から推したいポイントなども含めて語っていただけますでしょうか。

寺澤 『スペリオール』はわかりやすい所で言いますと、掲載作品がアニメ、ドラマや映画など続々と映像化されていますし、色んなマンガの賞にも連載作がランクインしています。また、国内だけではなく海外でも評価されて賞を受賞する作品があったり、雑誌としては非常に活気がある状態だと思います。

映像化というところで言うと、浅野いにおさんの『零落』が映画化されたり、津村マミさんの『コタローは1人暮らし』も、ちょうど4月から実写ドラマのセカンドシーズンが始まっていますし、アニメ化もされました。太田垣康男さん『機動戦士ガンダム サンダーボルト』も先日、アニメ再編集版がテレビ地上波で初放送されまして。この後も未発表の企画が色々と控えている感じですね。

――『スペリオール』誌面によると『トリリオンゲーム』が重大発表を控えているということで、楽しみにしております(※取材後、『トリリオンゲーム』実写化の発表が行われました)。

寺澤 そうですね(笑)。最近の主だったマンガの賞で言うと、「このマンガがすごい!」や「このマンガを読め!」、「マンガ大賞」などで『トリリオンゲーム』や『劇光仮面』『フールナイト』『住みにごり』などが上位にラインクインしました。また先日の「アングレーム国際漫画賞」では特別栄誉賞を池上遼一さんが受賞され、押見修造さんの『血の轍』がシリーズ賞、安田佳澄さんの『フールナイト』が公式セレクションに選出されました。松浦だるまさんの『太陽と月の鋼』も『マンガ沼』で麒麟・川島さんやかまいたち・山内さんにお薦めしていただき「このマンガがすごい!2022芸人楽屋編」第1位になったりと、お薦めしたい作品ばかりとなっています。

そんな中で3つに絞るのは本当に悩ましいところですが、最近始まった作品ということで、特にこれから注目してくださいという意味でいくつか具体的に挙げさせていただこうと思います。

1つ目は、浅野いにおさんの『MUJINA IN TO THE DEEP』です。

――始まりからワクワクさせてくれる素晴らしい第1話でした。

寺澤 この作品は刀を持った美女の殺し屋が活躍するアクション劇でして、青年漫画の最前線で活躍されている浅野いにおさんが、内容と作り方の両方の面から、ご自身のキャリアの中でさらに新しい取り組みをされている作品です。いわゆる人権とか幸福といった、非常に現代的なテーマを扱いながらも、アクション作品としてどう読者を魅了していくのかを追求されていて、浅野さんの新しい代表作になると思います。漫画の作り方も非常に面白い取り組みをされていて、街を看板の一つ一つから道路、建物そして街全体まで浅野さん個人でCG制作されていて、登場人物達は浅野さんが作り上げた仮想の街で活躍していきます。

 

『ビッグコミックスペリオール』(小学館)2023年7号より
『ビッグコミックスペリオール』(小学館)2023年7号より 一つ一つの看板の細部までこだわり抜いて描かれる街・九十九

 

――そんな作り方をされていたんですね!

待永 簡単には真似できないです。

寺澤 誰も見たことがないマンガを見せたいとか、マンガを新しいステージに持っていきたいという、浅野さんのクリエイターとしての素晴らしい挑戦だと思います。『スペリオール』の中でも非常に存在感のある作品になっていくと思いますが、最先端の試みをされているということで、マンガ界全体としても最注目作品と言っていいと思います。そういった意味でもおすすめです。

寺澤 次は『スーパーボールガールズ』という作品です。これは担当の待永に語ってもらいます。

待永 平本アキラさんと金城宗幸さんという、元々実績のあるお二人のタッグという形で始まることになりました。せっかくそういうお二人と作品を作ることのできる機会ですので、今の主流とは多少異なるやり方かもしれませんが、ジャンルを限定しない、先の読めなさこそが魅力になるスケールの作品になればと考えています。「これは一体どういう話だろう」という展開が続きながらも、だからこそ読者の方を扇動するような、新しい刺激を追求したマンガと申しますか。平本さんも金城さんも、お二人とも「相手がその方ならば喜んで」とおっしゃっていただいて始まっていますので、女の子に限らず“平本さんの描く魅力的な絵”と、“金城さん独自のストーリー”から私たち読者が想像する以上に、お描きいただくお二人ご自身にも化学変化が起きるような、そういう作品にチャレンジしていただいています。

――本当に読んでいても一体この後どうなっていくか全く予想がつかない感じです。『ブルーロック』も並行してやられていて大変だと思うんですけど。

待永 少し不安な面もあるんですが(笑)それが醍醐味ですので。原作である金城さんの中には、“ここまでで物語の本筋をきっちりわかってもらえるように作る”という構想がおありなので、そこは心配していません。スケジュールはタイトだと思うんですけど、少年誌で連載していらっしゃる『ブルーロック』とは違う青年誌ならではのマンガというのを一つ軸として、エロやグロだけではありませんが、少年誌では主題になりにくい欲望というか、そういったものをぶつけていただけるものになるはずです。裏テーマとしては、日本の読者だけではなくアメリカなど海外の漫画読者にも楽しんでもらいたいというコンセプトというか。何をして「海外規模」というかは人によって色々あると思うのですが、そういったスケール感のものをマンガでどう表現できるかということも、個人的には愉しみにしている部分です。

寺澤 3つ目は山口貴由さん作の『劇光仮面』です。

先ほど言いましたように漫画の賞でランクインしたり、メディアで紹介されたりと多くの評価をいただいている作品なんですが、私が立ち上げの際から担当させていただいておりまして。元々、山口貴由さんは秋田書店さんで活躍してらしたので、「いつかウチでお願いします」というようなことを言っていて、ついに描いてくださったという感じです。秋田書店さんで以前に描いておられたのが時代劇だったので、現代劇はどうでしょうというお話をしました。仕事場にお邪魔したときに、本棚を見せてくださったんですね。本がある本棚と、フィギュアが置いてある本棚があって、「本棚にフィギュアが置いてあるんですね」とたずねると「そうなんです」とおっしゃいまして。「フィギュアなんですが、自分にとってそのフィギュアの中には物語が詰まっているんです」「物語=本が置いてある本棚と一緒のイメージなんです」と。怪獣のフィギュアや、いわゆる特撮ヒーローのフィギュアをお持ちだったんですが、その時のお話が非常に面白かったので、それを何か創作に生かせませんかということで、今回は「特撮」をテーマにしましょうといった経緯で始まりました。読者を遙か遠く遠くまで連れて行ってくれる面白い作品になるのではないかと思っています。これまでの展開では「どういう話かわからない」という声もいただくんですが、宣伝的に言いますとコミックス3集が4月末(4月28日)に出るんですけれど、3集を最後まで読んでいただけると、作品の本当の扉が開かれます。こういう話だったのか、と!

――最近は初速で決まってしまう部分が大きく、実際にそこそこ人気があっても多くの書店に棚差しの1冊しか置かれず1巻の売り上げがふるわなくて打ち切りになってしまう作品も多くあり、すぐに伝わるわかりやすい面白さが求められていて、じっくり積み重ねていって面白くなるタイプの作品は今はやりにくいという話も結構聞いております。そんな中で、『スペリオール』さんのような編集部もあるというのは一読者としても非常に嬉しいです。

寺澤 全部が全部長い目で見られるわけではありませんが、企画性や作家さんの力量次第でじっくり取り組んで頂く作品があってもいいのではないかと思います。

3作品ということでしたが、スペリオールの電子レーベル『スペリオール ダルパナ』からも一作品紹介させてください。

『ヤリマンになりたい。』という作品でして、ヤングスペリオール新人賞出身のまおいつかさんが描かれています。ある女性がヤリマン道に邁進していくというお話で、なかなか際どいところもあって、いわゆるハプニングバーのようなところに行ったり、知り合った男性と一夜を共にしたりというような内容なんですが、女性が自分自身を解放していくとか、そういった非常に深いテーマもあり、根源的な人間ドラマがテーマのひとつ、とも言える作品だと思います。イプセンの『人形の家』みたいな。

――『スペリオール ダルパナ』についてもお伺いしたいのですが、こちらはどういった経緯で生まれたんでしょうか。

寺澤 これはですね、デジタルの時代になったときにデジタルに合った作品をどう作っていくのかということを編集部としては実験して行かなくてはいけないということで、デジタルのレーベルを作っていろいろな作品を出していきたいと立ち上がったんです。

――非常に面白く読ませていただいていますが、なかなか重めの作品が多いですよね。その辺りも何か意図があったりするんでしょうか。

寺澤 私がスペリオールに来る少し前にスタートしたんですが、最初にスタートしたときはテーマは「絶望」であると。時代のキーワードとしての「絶望」、恐らくその先にある「渇望」は何なんだろうということを模索する意味合いだったと思うんですけれど。デジタルの時代と「絶望」というキーワードが結び付くんじゃないか、という狙いで始まったと聞いています。これまでは「絶望」でやってきていますけど、もう少し幅を広げてもいいのかなと思っています。「絶望」のその先に「渇望」とか「欲望」があると思いますし、もう少しポジティブな意味合いの「希望」をストレートに表現した作品があってもいいと思います。そういう意味ではレーベルの幅を今後は広げていきたいです。

 

それぞれがマンガに対する哲学を持つ「独立愚連隊」

――次に『スペリオール』編集部全体の話についてお伺いしていきたいのですが、編集部は何人ぐらいやられてるんでしょうか?

寺澤 作品単体で携わってくださっている方もいて、10数人でやっています。

――そんな『スペリオール』編集部さんの中で今現在流行ってることやものはありますか。

待永 あまり大きなブームみたいなものはないんですけど……局所的には少し前に『氷の城壁』を何人かで読んでいました。バナー広告に出てくる縦スクロールのマンガの中では異質な作風だと思うのですが、「こんなにも面白い作品があるのか!」と部内で盛り上がりました。ただ、最近は割とリモートで働くことも多くてあまりみんな揃わないというところもあるんですが、もともと独立愚連隊としてやってきたところがあるので、全員揃って飲みに行こうとかそういう習慣はあまりなかったですね。

寺澤 朝型の人もいれば夜型の人もいたりとか。

――編集部の皆さんがお好きな近場のお店などはありますか。

待永 神保町にある「大興」という中華料理屋さんですね。美味しい! 雲白肉をいつも食べます。

寺澤 僕はカレーですね(笑)。「エチオピア」とか、「共栄堂」とか。「スヰートポーヅ」という餃子屋さんが昔あったんですけど、なくなっちゃいましたね。ああいう名店がなくなってしまうと寂しいなというのが昔からいる人間としてはありますね。

待永 「キッチン南海」も一度はなくなりましたね。

――三省堂神保町本店が一時閉店してしまったり、高岡書店や古賀書店など昔からあるお店が閉まってしまったりしていて寂しさはありますね……。次の質問なのですが、そんな『スペリオール』編集部が自慢できることを一つ挙げるとすると何でしょうか?

寺澤 手前みそですけれど、『スペリオール』編集部はいい人材が揃っているのかなと。漫画編集者のキャリアを自分よりも高く積み上げてきた者もおりますし、自分では考えが及ばないような、それぞれの哲学や、「マンガとは自分にとってなんぞや」というしっかりした考えを持っている編集者が多いので、とても頼りになります。そして、それぞれの漫画哲学で、才能のある作家さんと付き合い、関係を切り結び、面白い漫画を企画してくれる。そういったところが一番良いところです。

 

トラウマを受け、初めて作家買いした永井豪作品

――編集者が繋ぐ思い出のマンガバトンということで、毎回編集者の方の思い出のマンガ作品をお聞きしているんですが、皆さんの思い出の1冊と、最近の注目作品を自社作品以外で1つ挙げていただけますか。

寺澤 思い出の作品は色々とあるんですけれど、一つ挙げるとすれば永井豪先生の『凄ノ王』でしょうか。

自分が中学ぐらいのときに友達の家に行ったときに読ませてもらいました。『凄ノ王』は『凄ノ王伝説』というバージョンがあって(※1979年に永井豪が『凄ノ王』を『週刊少年マガジン』で連載開始、1982年に永井豪の実兄・泰宇がノベライズ版『凄ノ王伝説』を角川書店から刊行、1985年から永井豪がコミック版『凄ノ王伝説』を角川書店の各誌で不定期連載)、自分が最初に読んだのは「伝説」の方でした。「伝説」の方はちょっと大人向けに変わっていて、『凄ノ王』版では描いてなかったようなバイオレンスな表現や性表現でも踏み込んだ表現がされていたんですけど、それが自分の中ではマンガのトラウマティックな経験として大きかったと思います。それから永井先生の『バイオレンスジャック』や『デビルマン』など硬派なものから、『あばしり一家』や『ハレンチ学園』、『まぼろしパンティ』『けっこう仮面』や『花平バズーカ』とか僕は好きだったんですけど、そういうちょっとエッチなやつも読んで(笑)。最初に作家買いした作家さんが永井豪先生でした。

小学館作品になってしまいますけど、うちの編集部以外で面白いなと思った作品は、『マンガワン』で連載している松木いっかさんの『日本三國』ですね。

デジタルだと見る画面がスマホ中心になってくるので、1画面の情報量を減らして、コマ割りも大きめで読みやすいものが求められていくのかなという風には思っているんです。しかし、あの作品はどちらかというとこれまでの漫画のスタイル以上の情報が、1画面に詰まっていて、それにも関わらず人気があって読まれている。内容にすごいドライブ感があって非常に面白いんですよね。デジタルの中でもちゃんとしたスタイルを持った作品が出てきていて、自分が読んでもとても面白いし、デジタルの読者に読まれているということで新しい作品が出てきたなという風に感じています。

――待永さんはいかがでしょうか。

待永 人生で言うと『わたしは真悟』でしょうか。

とにかく一番すごいと思った作品ですね。どうすればこのような作品が生まれるのかが知りたくて、初代担当編集の方に喫茶店に来ていただいて「どうやってこのマンガが生まれたんですか?」と尋ねたことがあります。その担当の方は凄い実績の先輩なんですが、同時にめちゃくちゃ怪しい人なんですよ、サイドカーに乗っていてパイプを燻らせて(笑)。『わたしは真悟』は80年代に『ビッグコミックスピリッツ』で連載された作品なんですけど、当時はラブコメがとにかく流行っていて、極端な言い方をすればラブコメなら飛ぶように売れた、と。だから、楳図かずお先生に「ラブコメを描いてください」と言ったそうなんです。そうしたら楳図先生から「ラブコメって何ですか?」と。何か説明しなきゃなと思って、「AさんとBさんがいて、そこにCさんが登場してくることによって関係に緊張が生まれる」というようなことを楳図先生にお伝えしたら「わかりました」と言って、あがってきた作品は少年と少女と機械の物語だったという(笑)。結論としては「これが天才というものだ」、「天才と付き合え」と(笑)。

わたしは真悟』はもちろん全編傑作ですが、中でも序盤、東京タワーを飛び降りるまでの想像力は、自分にとって永遠に輝く憧れです。

他社さんの作品ですと、吉本浩二さんの『定額制夫の「こづかい万歳」 月額2万千円の金欠ライフ』は大好きで面白く読んでいます。あとはとにかく『スキップとローファー』ですね。

奇を衒わない主題をあれほど瑞々しく感情に訴える物語として描ける作家さんの才能に敬服します。『スペリオール』は少しダークな(?)マンガが多いので、心がああいう作品を求めているのかもしれないですね(笑)。こういうマンガが自分たちの雑誌にあったらいいよね、と現場レベルでは話していたりもします(笑)。

――次の方へのバトンとしまして、同じマンガ編集者の方へ向けて何かコメントがあればお願いしたいです。

寺澤 今はSNSなどで流行やトレンドといったものに左右されがちだと思うんですけれども、マンガはどちらかと言うと個人が今どう思っているか、何を感じているかに焦点を当てていって、そこから作家の頭の中の考えが純度高く表現された時に、他にない面白い作品になったり、逆にこれまで水面下に存在していた人々の共感へと一気に爆発したりするのでないかと思います。ですので、なるべく雑誌としては自由度を保って、作家さん個人の純度の高い想いを伝えられるものを送り出して行けたらなと思います。

 

色んな想いを伝えられるメディアの門戸は開いています

―――何かお知らせなどありましたらお願いします。

寺澤 『スペリオール』は錚々たる実力作家の皆さんに描いていただいていますので、新人作家さんにはちょっと敷居が高いのかなと思われるかもしれないですが、そんなことは全くなくてですね(笑)。自分としては「価値観ゆさぶるオモシロさ!」を今の『スペリオール』のキャッチフレーズにしていて、これはベテラン、新人の垣根はないことです。

先ほど申し上げたようにSNSの影響などで特に新人作家さんは「これは時代にそぐわない漫画なんじゃないか」、「周りの人に比べて自分の考えは古いんじゃないか」みたいなことを思いがちだと思うんですけれど、自分が暮らしていて何か漫画を描こうと思っているそのこと自体が、たとえ何もない人生だなという風に思ったとしても、そこにもうある種の最先端の想いがあると思うので、世間のトレンドなど気にせず思い切り自分の思いを描いて欲しいと思っておりますし、そういう作品に光を当てていきたいと思います。それが時代を先取りしたり、時代を体現する作品に繋がっていくのかなと。

ですので、あまりハードルが高いと思わず、スペリオールではヤングスペリオール新人賞という新人賞もやっておりますので、ぜひ投稿していただきたいです。あと、新人作家さんの読切を『スペリオール』では積極的に載せたいと思っていますし、他誌に比べても掲載されていると思いますのでオススメです笑。

今の連載陣では、たかたけしさんもヤングスペリオール新人賞に応募していただいて即連載となった作家さんですし、『ヤリマンになりたい。』のまおいつかさんも、同じ新人賞の出身です。「67歳の新人」がデビューしていますし、キャリアなど関係なく新人さんに門戸を開いている雑誌だと思いますので、新人賞への応募、持ち込みなども大歓迎ですので、よろしくお願いいたします。

――最後に、『スペリオール』読者の皆さん、マンバ通信読者の皆さんに一言ずつお願いします。

寺澤 マンガは多様だということが強さであり、色んな作品や色んな個人の想いを伝えられる、あるいは知ることができる表現だと思います。これからも皆さんの価値観を揺さぶったり、常識を覆したりするような『スペリオール』にしかない作品を載せていきたいと思いますので、注目していただければと思います。

――本日はどうもありがとうございました。


スペリオール』編集部の方々は事前に質問内容についても非常に綿密に考えてくださり、お薦め作品も普段は3作品としているのですがそれでは収まりきらないと増やしていただきました。穏やかさの中にも確かなマンガへの愛と情熱を感じられ、『スペリオール』の特色がどのように形作られているのかを非常に納得できました。これからも、価値観に揺さぶりをかけるようなパワー溢れる作品を楽しみにしたいと思います。

 

以下は取材時の写真です。

桜、咲きそめし頃に小学館ビルを訪問しました。
編集部前の打ち合わせスペースには綺麗に並べられた作品群や販促ポスターなどがひしめいており、テンションが高まりました。
さまざまな作品の種々のグッズも。『らーめん再遊記』のラーメンが異色で良い味を出していました。

 

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