百合の世界にコメントする
缶乃短編集 無職とJK

「明日に続く」物語に力を貰う #1巻応援

缶乃短編集 無職とJK 缶乃
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ
『あの娘にキスと白百合を』の著者・缶乃先生の短編集。新連載作『合格のための! やさしい三角関係入門』との同時刊行です。 表題作『無職とJK』は、電撃コミックの百合アンソロジー『エクレア』シリーズにて〈連載〉。金持ちJK(素直ないい子)が、「ヒモ稼業」のお姉さんを養いたくて、グイグイ迫って行くけど……というお話。 コミカルなやり取りと、「金」というドライで生臭い物を介しても尚、お嬢様の強い恋情と、子供を思い遣るお姉さんの真摯さは、胸に迫るものがあります。 その他、一迅社・双葉社のアンソロジーと『百合ドリル』、同人誌掲載の小品が集められていますが、缶乃先生の一貫したカラーは、昏さも明るさも「しなやかに」描く、という感じでしょうか。 明るい絵柄で描かれる女子達のコミカルなやり取りから、不意に昏さが立ち現れて来る。それを明るさが救うか、昏さが飲み込むか、という物語の、どの終局からも「終わり」という声は聞こえない。聞こえるのは「続く」という声。 昏い感情も切なさも、生きている限り明日も続く。抱えて進むか、立ち直るか……いずれの物語も、へこたれなさ・次に繋げること・生きる力を表現していて、それ故に本質的に明るく、しなやか。読んでいて打ちのめされない、自然と力を貰えるような作品達だと思いました。
幻想集

作家性が横溢する幻想短編集 #1巻応援

幻想集
兎来栄寿
兎来栄寿
『幸福はアイスクリームみたいに溶けやすい』、『書店員 波山個間子』、『三護さんのガレージセール』などでお馴染みの黒谷知也さん。 上記3作品のような線の整った作品群とは別に、よりコミティアなどで出逢うような雰囲気で作家性を剥き出しにして描いている短編。その中でも、本にまつわる話を中心としたシリーズに分類されるSNSで2021〜22年頃に公開していた短編を1冊にまとめた本です。 こういう夢想が自然に浮かんでくる瞬間ってあるなぁと思える幻想譚たち。泡沫の夢のように、何もしなければ刹那弾ける泡のように消えていってしまうものたちを、繋ぎ留めるように手繰り寄せて現出させ形に残しているような感覚があります。 ときに好奇心を、ときに恐怖を掻き立てられ、不思議さに戸惑いながら酔い痴れ、理不尽に鬱屈としながらそれが快感でもある。 本を愛するから解るところもあり、本を愛するから苦しいところもある。紙とインクによる魔的な被創造物。読書という広大な宇宙海を漂う、無常感と無上感。 本がテーマでないお話も、寓話的で批評的な「グドゥグドゥ」や「鰐の起立」などとても好みです。社会の形式が変わるifがある物語は、想像力を刺激されます。 「言葉の珈琲」という柔らかい口当たりで始まりながら、とても強い刺激に満ちた1冊です。尖った作家性を浴びたい方、非商業的な作品を好む方には強くお薦めします。
かんのたんぺんしゅうむしょくとじぇーけー
缶乃短編集 無職とJK
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