一期一会を撮った夏にコメントする
金沢シャッターガール
「映える」金沢、夏の写真物語
金沢シャッターガール 桐木憲一
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ
夏の金沢で、写真を撮る女子高生がドイツの写真家と出会う物語は、フォトジェニックな町を観光案内しながら、淡々と進んでゆきます。 金沢の有名スポットから裏側まで、歴史も地形も詳細に紹介していて、これ一冊持って金沢を歩いてみたくなります。 そんな金沢を撮影しながら、女子高生と写真家の人生はひととき交わり合い、少し互いに何かを残しつつ、それぞれのエピソードを淡々と刻んで行きます。割とシビアな内容もあっさり描き、心に響く余韻が心地良い。 カメラに関しては、フィルムからデジタルまでマニアック。女子高生がα7+オールドレンズとか、Sigma dp2 Quattroとか、ちょっと笑ってしまう程。また著名な写真家が実名で出演されたり、構図へのこだわりが随所に見られたりと、写真的見所も多い。 それにしても、竹久夢二的モダン女性絵で描かれる女子高生が、金沢の古い街並を歩くなんて、もうそれだけで雰囲気満点!な作品です。 ------- ★オールドレンズについて★ オールドレンズとはフィルムカメラ全盛時代に作られたレンズで、良質な物から怪しげな物まで様々あります。 中古屋でジャンク的に転がっている事もあるこれらを使うには、手持ちのデジカメと古いレンズの規格を合わせる「マウントアダプター」を探す必要がありますが、大抵どこかに売っているものです。マニアは怖いですね。 現在のデジカメ用に作られた、出力がある程度計算されたレンズとは違う、思いがけない味わいやハプニング的な要素等、深い世界です。 ★Sigma dp2 Quattro について★ Sigma(シグマ)は日本のレンズメーカーですが、センサー製造のFOVEON(フォビオンorフォベオン)社を子会社化しデジタル一眼レフに参入しました。 FOVEONというセンサーは三層のセンサーを垂直に並べてそれぞれが違う色を拾う事で同一位置の色情報を3倍拾う。実質的な画素数はAPS-Cでありながら2900〜4600万画素まで得られ、画質も解像感がとてつもなく高い。 これを使った機体は画質の良さの一方で実はとても扱いにくく、愚痴をこぼしながら使うマニア向けの物となっています(その辺は安倍吉俊先生の同人誌『飛び込め!!沼』に詳しいらしいです)。 dp2 Quattroは、単焦点レンズ固定型(レンズ交換できない)のdp0〜3シリーズの一つ。変わったカッコいいボディですが、使い勝手は……これを使う女子高生は、既に自分の世界観を持って撮影をしていて、そんなこだわりがよく似合うカメラです。
レタイトナイト
豊かなファンタジーの極致 #1巻応援
レタイトナイト
兎来栄寿
兎来栄寿
『ベルリンうわの空』の香山哲さんの新作です。 前作の『香山哲のプロジェクト発酵記』では「新しい連載プロジェクトの立ち上げ方」自体をマンガで描くという珍しい試みにも取り組んでおられましたが、まさにそこで考え捏ねられ発酵させられていた新作がこの『レタイトナイト』です。 『香山哲のプロジェクト発酵記』自体も、自分の寿命の使い方や物事の進め方を考え、見つめ直すという点でとても面白い本ですし、何より本作と併せて読むことで濃密なメイキングとして両方をより楽しみるのでぜひ読んでみて欲しいです。 香山哲さんは、その在り方が真の意味で「豊か」であるということを感じます。 わかりやすい流行や、かくあらねばならないといった縛りから解き放たれた自由にところで、読み手のこともある程度考えながらも自分が好きなもの・味わいたいものを全開にして描いている。こういう作品が、こういうマンガが世にある、出版されるという状況の何と素晴らしいことかと思います。 一口で言えばファンタジーですが、もう開始数ページの絵だけで魅せられる世界の様子、そして「レタイトナイト」と書かれた扉絵まででも香山哲さんの生み出す圧倒的な世界観に気持ちよく呑み込まれます。 地図や各地のスポットが描かれているところや、いろいろな小道具、その描き方も含めて幼いころに『エルマーのぼうけん』を読んでワクワクしたときのような感覚を呼び起こしてくれます。 ファンタジー世界を描く際に大切なのはそこで生きる者の日々の暮らしのディティールですが、『レタイトナイト』はそこの解像度の高さが素晴らしいです。そこがどんな世界で、どんなルールがあり、どんなことをして、何を思いながら、何を食べて暮らしているのか。そういった部分はつぶさに描かれていき、世界の匂いや温度を感じられます。 この世界独自の生き物や概念などもありながら、光を照らす角度によっては現実と繋がり考えさせられる部分があるのも良きファンタジーとしての性質を満たしています。 個人的には、食堂「フメンカダ」で出されるバラエティ豊富な「マリム(定食)」の数々に心惹かれます。野菜や穀物や豆など、素材としてはシンプルなものが多いのですが、その美味しそうなこと。巻きクブなども、絶対好きです。 これだけの世界観を作り込みながら、比較的ミニマムなお話を展開しているところもまた独特で良いです。普通であれば大国同士の戦争のような大きい話になりそうなものですが、そうではなくこの世界で生きているひとりひとりの地に足のついた生活をじっくり描いているところが、ある種の贅沢ですらあります。 読んでいる間はここではないどこかへ飛んで、豊かな時間を過ごせる作品です。
レタイトナイト
『ベルリンうわの空』香山哲先生の新作! #1巻応援
レタイトナイト
さいろく
さいろく
『ベルリンうわの空』香山哲先生の新作はマイナーRPGを彷彿とさせるファンタジーだった。 ベルリン〜で独特かつ魅力的な絵柄で多くの読者を魅了し、電子先行だった?と思うが紙書籍も欲しくなって久しぶりに紙書籍も購入した。 私のチープな語彙力では「おしゃれ」とかしか表現できないがとにかくオシャレで可愛く、気持ち悪そうなデザインのキャラクターですら作中で柔らかい雰囲気で包んでくれるのが読んでいて心地よかった。 そんな香山哲作品、常に二色刷り(弘兼憲史作品でよくある感じの白黒だけでなくもう1色使われているもの)なのだが、ベルリン〜ではオレンジを基調にしていたところ本作では少し氷っぽい水色のようなアイスブルー(ブルーグレー?)みたいな、とにかく雰囲気がオシャンティでまた良い。 色々と前提となる設定が今回も多く(ベルリン〜と比べてばかりでアレだけど、あちらはドイツで生活する上で日本人には馴染みがないところの紹介があって面白かったがやはり前提がいくつかある)昨今の漫画の中でも珍しくじっくり理解しながら文字も読み込むのが楽しい作品になっている。 早く2巻が読みたいものだ。編集長頑張れー
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