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江戸末期の長崎・丸山という花街を舞台に、絶世の美女と謳われた一人の花魁と、彼女を巡る悲しい純愛の物語。街並みや遊女独特の言葉遣いだけでなく、伽羅の匂いや三味線の音など、画面には表れないところまで時代の雰囲気を醸し出す細やかな描写がなされています。
同じ作者の「ニュクスの角灯」へのクチコミでも同じことを書いたのですが、人間の美しい部分、ピュアな部分を描くことに物凄く長けた作家さんだな、と感じました。読み終わると心が洗われてるんですよね。
主人公の几帳太夫が同僚に二股をかけられているのを目撃して告発する場面も、その一見派手な事件そのものよりも、敢えて傍観者である几帳や彼女の甥っ子の心情に寄り添って描いていたのが個人的にすごく印象的でした。それに加えて本書のあとがきを読むだけでも、想像力と情緒に溢れそれでいて卓越したバランス感覚も兼ね備えている作者の人柄が垣間見える気がします。
毒気がないにもかかわらず、こんなにも面白くて切なくて引き込まれる。この魅力こそ、今国内でもっと評価されてほしいなと思う作家さんです。
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