あさひなぐ

「何者でもない」人たちのものがたり

あさひなぐ こざき亜衣
酒チャビン
酒チャビン
とあとがきで先生がおっしゃってるとおりのマンガです。 まず主人公がいなか臭いです。絶妙ないなか臭さで、いなか臭すぎるとマンガ臭くなってしまうのですが、本当にいそうで絶妙です。 ですがそれも素晴らしいです。 よく『ちはやふる』が少女マンガの皮をかむった少年マンガと言われていて、私すごく好きなのですが、それに近いスポ根的な部分もかなりあり、すごくこちらの作品も面白いです。つうか、よく高評価されてるのは見かけてはいましたが、こぎゃん面白いマンガとは思ってもみませんでした。ただ、若干こちらの方が少年度が低いというか、女子っぽい部分が多めでしょうか。そこも良かったと思います。 つうか最初の数巻は、わざとなのか描写不足なのか、別にそこまで皆頑張ってる感じがせず、したがって主人公のチームが負けようが特に何の感傷もなかったのですが(どちらかというと敵役の一堂選手の方が言い分もわかるし思い入れがありました。一堂という苗字も、世界的名作である奇面組へのリスペクトが感じられて好感が持てます)、途中からかなりよくなってくるので、5〜6巻くらいまでは諦めないで続けてほしいです! あと、こういう「冴えない主人公が強い人に憧れて頑張って強くなる」っていうのは定番ですが、本作品がレアなのは、憧れだった強い人から何かを受け継いで強くなった主人公が、憧れられる側だった人間に何かを返すところまで描かれている点です。 主に最終巻の話になってしまうのですが、大体前述の定番ものですと、最終巻は緊迫したストーリー運びながらも、どこか「どうせ優勝やろ」みたいなところもあるのですが、本作は最後の最後一捻りが聞いていてすごく心に残る作品となりました。 個人的には紺野選手とやす子が好きですね。すごくいいと思います。というか、このマンガの特徴として、マンガ自体とかストーリーとかが好きっていうよりも、若干脇役っぽい方も含めた登場人物のことがすごく好きになるっていう点があります。あまりそういった経験がなかったので、それも高評価をつけた理由です。 推しってこういうところからスタートするのですかね?? いずれにしても、自分ががんばっている人にはまず間違いなくオススメできる世界レベルの名作ですので、ぜひ読んでみてください!!全34巻と、完全に読者の心を入り口から折りにかかってきますが、がんばれる人なら大丈夫です!!!がんばってない人、頑張れる自信がない人はハンチョウを読みましょう!
ドカ食いダイスキ!もちづきさん

女の子が自殺してる姿なんて見たくない

ドカ食いダイスキ!もちづきさん
ピサ朗
ピサ朗
可愛い女の子が底辺おじさんがハマるような趣味をやってるという、最近の流行である作風なのだが 「食」という生活に密着してハードルの低い分野で、注意書きも一切無いので正直恐怖の方が勝る。 自分も結構食べる方だが、30越えてからは多少なりとも控えめになったが、21で運動量も少ない女性がこんなん10年後に一気に来るというのが容易に想像できてしまう。 ハッキリ言えばもちづきさんがやっているのは「緩やかな自殺」レベルの暴食なので、ここまで来てるとむしろ中年男性がやってる方が遠慮なく笑える。 ひでえ事言ってるけど、「中年男性の自殺姿は笑えても、かわいい女の子の自殺姿を見て笑うことはできない」のだ。 とはいえ暴食に心を囚われ不健康な生活を送ってる人にとって、ここまでではないにしても己を顧みる切っ掛けになりえる狂った生活描写は見事で、逆説的に食事に対する節制や再考を推奨していると言えなくもない。 そういう方向性ならむしろ吾妻ひでお氏のアル中病棟のように、数年後に作者が死亡するか、もちづきさんが入院して暴食を強制的に楽しめない終わりが似合うだろうけど、流石にそんなもん見たくないので、どういう終わりを迎えるのかすごく気になってる。
幻想集

作家性が横溢する幻想短編集 #1巻応援

幻想集
兎来栄寿
兎来栄寿
『幸福はアイスクリームみたいに溶けやすい』、『書店員 波山個間子』、『三護さんのガレージセール』などでお馴染みの黒谷知也さん。 上記3作品のような線の整った作品群とは別に、よりコミティアなどで出逢うような雰囲気で作家性を剥き出しにして描いている短編。その中でも、本にまつわる話を中心としたシリーズに分類されるSNSで2021〜22年頃に公開していた短編を1冊にまとめた本です。 こういう夢想が自然に浮かんでくる瞬間ってあるなぁと思える幻想譚たち。泡沫の夢のように、何もしなければ刹那弾ける泡のように消えていってしまうものたちを、繋ぎ留めるように手繰り寄せて現出させ形に残しているような感覚があります。 ときに好奇心を、ときに恐怖を掻き立てられ、不思議さに戸惑いながら酔い痴れ、理不尽に鬱屈としながらそれが快感でもある。 本を愛するから解るところもあり、本を愛するから苦しいところもある。紙とインクによる魔的な被創造物。読書という広大な宇宙海を漂う、無常感と無上感。 本がテーマでないお話も、寓話的で批評的な「グドゥグドゥ」や「鰐の起立」などとても好みです。社会の形式が変わるifがある物語は、想像力を刺激されます。 「言葉の珈琲」という柔らかい口当たりで始まりながら、とても強い刺激に満ちた1冊です。尖った作家性を浴びたい方、非商業的な作品を好む方には強くお薦めします。
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