道割草物語
吸血鬼の廃墟世界〈永遠〉百合生活
道割草物語 武川慎
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ
まず表紙絵が、とても美しい。全面にカラフルな一枚絵を敷き、タイトルはごく小さく。私は通販で買ったので店頭映えは分からないが、コレクション欲を唆るデザインであることは間違い無い。 本文もまた美しい。描かれるのは人類が滅び、朽ち行く退行世界。文明に自然の浸食する様は、廃墟マニア垂涎。 そんな世界を生きるのは、吸血鬼達。しかも女性が圧倒的に多い。この辺の理由は、吸血鬼の繁殖に関わる面白い設定が待っている。 古い吸血鬼と彼女の護衛、それぞれのパートナーの四人家族は、パートナー同士で血を与え合う「食事」の一方で、様々な食料を「楽しみ」として生産し食する。パートナー同士の食事は必然的に百合的行為となり、強い繋がりの表現となっていく。 吸血のエロスは、定番だが鉄板! 様々な確執もあるが、吸血鬼物としては意外な程、暴力は無い。似た雰囲気の『BLOOD ALONE』(高野真之先生)と比べても大分平和的だ(反面時々あるバトルの格好良さは近い)。 なかなか死なない吸血鬼が、朽ち行く世界でのんびり過ごす様は究極のスローライフ?美麗な絵で綴られる百合百合しい彼女達の日々を、こちらものんびり堪能したい。
私とこわれた吸血鬼
"こわれた"吸血鬼と幼馴染の女子大生の倒錯した感情 #1巻応援
私とこわれた吸血鬼 厘のミキ
sogor25
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主人公の山景樹(やまかげ いつき)は中学生の頃に両親が蒸発し、双子の弟妹との生活を支えるため大学に通いながら家事代行のバイトを何本も掛け持つという多忙な生活を送っていました。 そんな彼女の心の支えとなっていたのが、幼い頃に出会ったようちゃんという男の子。 山の上の立派な洋館に住んでいたその子は仲良くなった後すぐに引っ越してしまい、その時に彼から「必ず迎えに行くから待ってて」約束をしていました。 ある日、そのようちゃんが暮らしていた洋館に偶然足を踏み入れることになった樹は、そこでようちゃんと思わぬ形で再会を果たします。 というのもようちゃんの正体は実は吸血鬼で、引っ越すと言っていたその時から10年余りの期間、ある理由から洋館の地下で監禁をされていたのです。 ようちゃんのことをずっと心の支えにして生きてきた樹でしたが、彼が吸血鬼だという事実、そして監禁で心身ともにボロボロになっている姿を見て驚きを隠せないといった様子です。 一方のようちゃんの方はかつて樹と別れる前に、薔薇のトゲで指先に怪我をした樹の家を舐めてしまったことがあり、その結果"吸血鬼の本能"による樹への執着心が高まってしまっています そんなお互い異なる理由、しかも自分の思いとは関係ない理由で惹かれ合っている二人の物語は、ホラーのような雰囲気がありつつもどこか官能的な独特な雰囲気を醸し出しています。 1巻まで読了
吸血鬼の食卓【ペーパー付】
吸血鬼と人間の"永遠の中の一瞬"の関係 #1巻応援
吸血鬼の食卓【ペーパー付】 吉田了
名無し
上流階級層に紛れて密かに生きている「吸血鬼」の一族。彼らは永遠の命を持っていますが、人間に正体を知られないため、純粋に生き血を得るため、また吸血鬼の社会で権威を示すため、1人の吸血鬼に対して1人の人間を"餌"として飼い、生活の保証を与える対価としてその血を啜るという関係を持っていました。 主人公は吸血鬼の月子とその"餌"として月子に飼われることとなった花絵。花絵は天涯孤独の身であるために"餌"となったわけだが、実は野心的な性格があってこの状況を利用しようと虎視眈々と伺っている節があります。一方の月子は以前の"餌"であったフミという女性が3年前に亡くなり、花絵に冷たく当たっているのもどうやらその影響がありそうな様子。 吸血鬼と人間、永遠を生きる月子とやがて寿命を迎える花絵。この2人が様々な意味で不均衡なパートナーとなったことでお互いに心を通わせ合っていくという物語です。 そしてこの物語は実はこれだけではありません。月子と花絵以外に、かつては名門だったが現在は厳しい家計の家庭に生まれた櫻子とその餌の桐夫、親が威厳に厳しい家庭に生まれた永一郎とその餌の少年・瞬という2組のパートナーが描かれます。 つまり、同じテーマを換骨奪胎しながら、女性×女性、女性×男性、男性×男性という3通りの組み合わせが描かれており、それを全て1冊で堪能できる作品なのです。表紙を見ると百合マンガっぽく見えるのですが、BL好きにも、もちろんストレートな男女の関係の物語が好きな方にも薦められる裾野の広い作品です。 また、この3組の物語は実は繋がっており、それぞれの物語を駆け抜けた後、最後に月子と花絵の物語に戻ってきて結末を迎えます。3組6人の人生を描きながらたどり着く結末は切なさもありつつも希望に満ちていて、強く心に残るものとなっています。 調べてみると作者の吉田了さんは別名義でBL作品を1作出されていてこの名義では初の単行本の様子。また、コミックジンガイという見るからにニッチなテーマを扱ってそうなレーベルで連載されていた作品ということもあり、私も表紙買いするまで全く知らなかった作品なのですが、このマンガ家さんのことは今後絶対追っていこうと思える、魅力のたくさん詰まった作品です。 全1巻読了