祝・連載再開にコメントする
MOONLIGHT MILE
想像しうる未来を描いた宇宙開拓史
MOONLIGHT MILE 太田垣康男
名無し
周期的にどこか遠くへ行きたくなります。ギアナ高地かゴビ砂漠かヒマラヤか…。想像は膨らみますが、実際にはせいぜい飯能で僕の冒険心は終了です。ただ、もし僕が頑健な体と知性(と美しさと財力)があれば、宇宙に行ってみたいと思い、たまに空を見上げるることがあります。  この「MOONLIGHT MILE」も二人の男がヒマラヤの頂上から月を見上げるシーンより、物語がはじまります。世界中の極地に立った二人は、さらなる頂を目指すために宇宙を目指すのです。  二人の内の一人、猿渡五郎は日本の建築会社に就職しありとあらゆる重機の資格を取得し、宇宙空間での建設業務に従事するビルディング・スペシャリストを目指し、もう一人の“ロストマン”と呼ばれるウッドブリッジはアメリカ空軍に入隊し、そこからパイロットとして宇宙を目指します。  紆余曲折を経て、二人がISS(国際宇宙ステーション)で再会するのは7年後。しかしこれはまだ物語の序盤、1巻の出来事でしかありません。そこから、宇宙開発の表舞台を吾郎、軍の陰謀うずまく裏舞台をロストマンが主人公となって、宇宙開拓史が描かれて行きます。  「MOONLIGHT MILE」の凄いところは、この宇宙開拓史が事細かに、もしかしたら本当にこうなるかもしれないというリアリティをもって描かれているところです。ビルディング・スペシャリストとなった吾郎は、次世代エネルギー開発“ネクサス計画”のため、様々な任務をこなします。月面上の作業用機械の開発を手伝い、月往還船の建造を行い、そして第一次月遠征隊の一人として月面のエネルギー開発の最前線基地を建設します。  一方、ロストマンは宇宙における軍事的な覇権を推し進めるアメリカ軍のパイロットとなり、表舞台で宇宙開発が世界の注目を集める中、中国とアメリカの高高度戦闘が行われます。「表舞台か… 軍事利用こそ宇宙開発の真の姿だぜ 悪夢に染まらなきゃ、一番遠い場所には立てねえさ…」そう言いながら確実に任務をこなし続けるウッドブリッジは、やがてアメリカ宇宙軍の要人となります。  ふたたび吾郎とロストマンの道が交差するのは、表舞台と裏舞台がひっくり返るタイミングになるのですが、そこまでいたる夢の様に壮大な開発現場の個人の思いと、人類社会を左右する各国の思惑がからみ、壮大な物語になっているのです。  現在の世界状況の延長線上にある、想像しうる未来を描いた第一部が終わり、想像を越えたディストピアを描く第二部は現在も進行中。「MOONLIGHT MILE」が描ききるのはどのような人類の未来なのか、興味は尽きません。
魔女の花屋さん
心華やぐフラワーファンタジー #1巻応援
魔女の花屋さん
兎来栄寿
兎来栄寿
『ハナヤマタ』や『おちこぼれフルーツタルト』の浜弓場双さん最新作ということで、まず間違いないでしょうと思いながら読み始めて、期待通りに面白かった作品です。 15歳になった少女アリー=エイベルが、魔女になる夢を叶えるため大都市であるキャリッジ街の魔法学校グランモールにやってきたものの魔法は時代遅れでただの花嫁学校になってしまっており、街外れの丘の上に住む「花の魔女」ヨシノ=ヨークに弟子入り志願するところから物語が花開いていきます。 第1話「サクラ」 第2話「ミモザ 」 第3話「カルミア」 第4,5話「バラ」 と、世界設定はファンタジーですが登場する花や花言葉は現実を踏襲しています。ヨシノという名前もサクラから。吉野山が故郷の身としては嬉しくなってしまいます。 元々の高い画力が映えるキャラクターはもちろん、ファンタジー世界の彩りという点では非常に大事である背景も精緻に描写されており読んでいる間はこの世界に浸れます。私は、こういう描き込みが細かいファンタジーが大好物です。 特に、サブタイトルにもなっている花が描かれる各話のクライマックス部分の作画は気合いが入っていて思わず嘆息してしまいます。気が早いですが、たくさんの実在の花を扱っているのでアニメでフルカラーになって動きもついたら非常に映えそうです。 見習いシスターのオリビア=オークスやジョルダン家当主でホテルオーナーのジャネット=ジョルダンなど、魅力的なサブキャラクターも続々と登場しながら展開するストーリーの良さも美点です。 『ハナヤマタ』などのころから秀でていた、心の琴線に触れながら読むと元気をもらえるハートフルな内容は本作でも健在です。そこに、花や花言葉という要素が重なって非常に良い読み味となっています。 各要素のレベルの高さは流石という他ありません。長く続いていくことを祈りたい、素敵な作品です。
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