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その蒼を、青とよばない

先天性色覚異常の青年が撮る世界 #1巻応援

その蒼を、青とよばない 文川あや
兎来栄寿
兎来栄寿
「タイトルに"青"や"ブルー"などの単語があると名作率が高い」という通称「青の法則」が私の中で密かに存在するのですが、本作も多分に漏れず良い作品です。 人とは見える世界がほんの少しだけ違う青年が、遅まきながら青春と出逢っていく物語となっています。 大学に入学したばかりの水瀬蒼太は、2型2色覚の先天性色覚異常を持つ青年。2年生・彩月ひなたが撮った桜と虹の風景写真に一目惚れしたことをきっかけに、同じ写真サークルに入部します。色覚異常があることはひなた以外には秘密にしながら、蒼太は自分が写真で撮りたいものを模索していきます。 同じ色覚異常を持っていてもプロのカメラマンとして活躍している人の存在や、色がないからこそできるモノクロという表現を知ることによって、徐々に世界を広げていきます。 その上で、同じ1年生でプロの写真家を親に持つ意識の高い鳥井茶佑に問い掛けられながら、自分の本当にしたいことは何なのかを探していきます。 作中でも書かれている通り、先天性色覚異常を持つのは男性の5%と少なくはなく、私の友人・知人にもいます。そのため、私はマンバ通信でたまにインタビュー記事を書いていますが、発言者の名前の色分けはそこに配慮して行っています。蒼太も、茶色と緑の見分けが付かずに嫌いな抹茶味を選んでしまったり、バイト先で商品の色が判らなかったりするなど、日常で少しの不自由をしながら暮らしています。 そうしたこともあり、見える色が少ないということは一般的にはハンデと思われるかもしれません。しかし、そうして世界を見ている蒼太だからこそ伝えられるもの・表現できるものも存在するはずです。そこへ近付いていく過程を見ると、嬉しさを感じずにはいられません。これから先、蒼太たちが表現していくものや関係性によって生じていく感情の色合いが楽しみです。 余談ですが『髪、愛でる君。恋、知らぬ私。』といい、文川あやさんは黒髪ロングヒロインが魅力的なのも個人的推しポイントです。
ふしぎの国のバード

外国人視点の開国後日本

ふしぎの国のバード
ゆゆゆ
ゆゆゆ
原作となるイザベラ・バードの本は読んだことがある。 でもこれほど情景豊かに想像はできなかったし、イザベラ・バード視点のみなので、やはり周辺情報が客観的に描かれる漫画はやはり違う。 絵があると、それがすべて本当のように引っ張られてしまうのが弱点と何かで読んだ。 でも、自分だけの想像力では描ききれない、田舎の恐ろしいほどのノミやその他虫、そして不衛生さ。 それらが日常の様子として描かれ続けているので、漫画とはすごいものだなと思い知らされた。 そもそも、バード女史、よく行ったな。肉もないのに。 また、環境だけでなく、懐からボトルに入れた筆を取り出し記録をしたためる鶴吉の一連の仕草。 大人になったことを誇りに思う女の子の表情。 細やかな当時の人々の日常が、ドラマの何気ないワンシーンのように描かれていて、今は消え失せた文化を知らされる。 ちなみに、ヨーロッパより難儀な雑草が多い日本で、バード女史が農民が勤勉に働き雑草を刈るから「雑草がない」と表現したコマに、フフとなった。 有名な場面ですね。 キリスト教的な倫理観が根付いている現代の我々が、当時の日本へ気軽にトリップできる、すてきな漫画です。
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