短編集を読めば、その作家との相性がわかると思うんです。

短編という基本1話完結形式のなかで、物語上最低限必要なエッセンスのみつまっているから、その取捨選択というか、核となる部分だけみせてくれると相性も定まる気がするんですね。

そういう意味で、本作を読んだ瞬間、この作家さん好きだなと思いました。
個人的に石黒正数先生に近しいイメージなのですが、何気ない日常の中にファンタジーやホラーっぽい要素をスパイス的にいれてくるの、ホント好きなんですよね。
この作家さんも、似たような感じで、ドツボでした。

日常の切り方って、作家さんの個性が光ると思うんですよ。
え、そんなとこ注目するの?
ってポイントが、興味深かったりするとそのままハマってしまいます。
(逆もまたしかり・・・)

本作も、短編の中にぎっしり作家の魅力がつまっております。
「スマートアシスタント」では、突然意識や感情を持ち始めたスマートアシスタントとの交流を描き、「生水」ではスライムみたいな生き物「生水」が当たり前のように日常にいる世界を描き、「旬」では書道教室の未亡人と、書道教室に通い始めた女子高生、そして主人公の3人をエロスこみでリアルな肉体関係(そしてほんのり切ない関係)を描き、そして表題作「渚」では人魚が、下半身を手術して人間になるという話たち。

題材とする着眼点もさることながら、人物の描き方もリアリティがあって自分好み。
作風も派手さはないのですが、じんわり染み込んで惹きつける魅力があります。

なんにせよ今後が楽しみな作家さんでした。

読みたい
iメンター すべては遺伝子に支配された
遺伝子とAIに支配された世界
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六文銭
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グリーンボックス【合冊版】
一国か自分の命かを選ぶ設定が秀逸
グリーンボックス【合冊版】
六文銭
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気がつくと謎の部屋「グリーンボックス」に閉じ込められた主人公。 その部屋には 「欲しいものを思い浮かべながら滅ぼしたい国を選べ 当たりなら開放」 の文字と世界地図。 最初はテレビの企画か何かと疑い何もせずにいるが、徐々に我慢の限界になり試しに1つの国のボタンを押し自分のスマホと交換。 スマホからニュースを確認すると、それが現実であることを知る。 自身の命(というか食欲などの欲)と一国を天秤にかけるという設定が秀逸で、その後タカが外れたように国を滅ぼすことに抵抗がなくなっていく主人公の心理が面白い。 ボタン1つで国が滅びるというのが実感がなく、また人ひとりではなく、国単位なのも想像しにくいからより葛藤がないのだろう。 また自身もこの部屋に閉じ込められたという被害者意識から自らの欲を優先していく様が、生々しい。 当然、各国もだまっていなくて対策を講じるも、根本的な解決にならない。 このボックスの正体も徐々に明らかになっていくが、ジリジリとしたストーリー展開ですごい先が気になるつくり。 とにかくヒキがうまい。 どうオチがつくのか最後まで見届けたい作品です。
武士沢レシーブ
謎に読み返したくなる
武士沢レシーブ
六文銭
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思春期に「セクシーコマンドー外伝 すごいよ!!マサルさん」をリアルタイムで読んでいた人はわかってくれると思うのだが、ギャグ漫画としてのマサルさんの衝撃はとにかく凄まじかった。 意味不明なのに爆笑できるという体験をさせてもらった作品で、シュールのような斜に構えたものでもなく、浦安鉄筋家族のようなわかりやすいギャグでもない。 でも面白い!という今でも強烈に覚えているほど私には衝撃的だった。 そのうえで、次回作がコレ。 そして、『ピューと吹く!ジャガー』に続く。 つまり、マサルさんとジャガーの間が本作。 わかりやすく言うと打ち切りなのだが、これはこれで私にとっては衝撃的だった。 マサルさんの衝撃後、同著者の新連載ということで本作を読んだら、文字通り ??? となった。リアルタイムで読んでいた人は(以下略 雰囲気はマサルさんチックなのだが、ヒーローに憧れるとかバトル要素が強く、どことなくギャグのキレも弱い。 でも、大人になるとなぜか無償に読みたくなる。 マサルさんの著者なのになぜ?と友人とよく話していた思い出補正もある。 加えて、マサルさんからジャガーへ昇華される段階なのか?という捉え方ができたり、純粋に天才だと思った作家の人間味を感じる。 ギャグ漫画の鬼才だと思っていた人間も、迷走するんだなと。 (マサルさんの後半も結構失速感はあった) 大好きな作家の、そんな一部が垣間見えるということで、謎に読み返したくなる作品です。 作家ファンの人にとっては貴重な体験になるのではないでしょうか。 最後に、ギャグのキレが弱いと言いましたが。「イヌーピー」(要はアレ)というキャラだけは、腹かかえて笑いました。
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▼第1話/人魚は笑わない[前編]▼第2話/人魚は笑わない[後編]▼第3話/闘魚の里[前編]▼第4話/闘魚の里[後編]▼第5話/人魚の森[前編]▼第6話/人魚の森[後編]●主な登場人物/湧太(元は漁師。人魚の肉を食べ500年間不老不死のまま生き続けている)、真魚(まな。女ばかりの不思議な里で育てられた少女。気が強い娘)●あらすじ/若者であふれる真夏の海辺を、薄汚い格好をした男が地図を手に歩いていく。その男、湧太の目的地は野摺崎。そこは、険しい山と岩壁ばかりの海岸に囲まれた秘境であった。湧太は、500年前に人魚の肉を食べ不老不死になった体を元に戻してもらうため、人魚を探す長い旅を続けていたのだ。湧太が山中に分け入っていくと、そこには人知れず、しかも女だけが隠れ住む村があった。女たちは、なぜか真魚という少女に足かせをはめ、監禁するように育てていた…(第1話)。●本巻の特徴/湧太と真魚の出会いを描く「人魚は笑わない」のほか、“人魚”と“不老不死”にまつわるエピソードを収録した全6話。遠い過去、湧太が流れ着いた島で助けられた凛との出合い。そして、人魚を執拗に探す、砂や逆髪島の海賊衆たちとの渡り合いを描く「闘魚の里」。旅の途中で真魚とはぐれてしまった湧太が真魚を探すべく辿り着いた場所は、人魚の肉が隠されているという森だった… 表題作でもある「人魚の森」。2003年10月のTVアニメ放送開始を記念して、新装版で発売!! ●その他の登場人物/凛(湧太が流れ着いた鳥羽島の娘。女ながらに若頭として島をまとめる)、逆髪の頭(鳥羽島の隣にある逆髪島の海賊衆の頭。行動は残虐非道)、砂(いさご。逆髪の頭の女房。頭をたきつけて人魚を探させている)、登和(とわ。人魚の森の中にある、神無木家に住む白髪の少女)、佐和(さわ。人魚の森の中にある、神無木家に住む老婆)、椎名(神無木家にかかわりが深い老医師)●その他データ/巻末に、連載当時の表紙及び予告イラストを収録。
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