だれでも抱けるキミが好き 武田スーパー
私が思う芸術の力
刑務所の中 花輪和一
私が思う芸術の力というのは、元気や勇気をもらうみたいなポジティブなものではなくて、この作品のように「駄目さに誘惑する」力のことだ。殺人犯の口から人を殺す話を聞く、出所したら大麻を取りに行く約束をする、小豆とマーガリンを挟んだパンを隠れて食べる(見つかったら仮釈放取消し)…順風満帆、特に不自由のない人生を過ごしていたとして、「本当にそれでいいのか?」と語りかけてくるような体験が描かれている。読み終わってから冷静になって考えると、「やっぱこのままでいいや」と思うんだけど。
ムショ仲間の中には刑務官に可愛がられようとする人もいるんだけど、そういう人の話を聞いて「…ああおとなだわな心にグラインダーかけてるわ」「ちゃらついてるムショオタクとはえらいちがいだわな毎日火花散らして生きてるわな」と思ってる花輪さんの姿が印象に残りました。心にグラインダーかけてたらこんなに面白い漫画は描けないだろうからこれでいいんじゃないだろうか。続けて「刑務所の前」も読もうと思います!