ばったん先生の漫画はまっすぐだと思う。
でもド直球!みたいなのではなくて、なんというか人間味のあるまっすぐというか。

主人公・ヒロインに感情移入しやすい私には、本作はものすごく嫌なモブがいてものすごく嫌な展開で、読んでいるとお腹の中をグネグネした黒いものが渦巻いてしまう作品。

ヒロインの無垢さ(と思わせる表現も含めて)が肋骨のど真ん中あたりに深々と刺さってくる。

いつも読んですごく良くて、短編とか大好きなのにコレは「早く解決してほしい」とばかり思ってしまう。
見事に手のひらで転がされてしまっている。

見事な作品なのは間違いない。

読みたい
かけおちガール
書籍化に感謝したい名作
かけおちガール ばったん
兎来栄寿
兎来栄寿
『姉の友人』で一躍名を馳せたばったんさんの名作『かけおちガール』が、この度めでたく紙の書籍として発売されました。元々は電子雑誌となった『ハツキス』に掲載されていた作品で電子でしか読めなかったのですが、この機会に紙派の方にも読んでみて欲しい逸品です。 この作品に留まりませんが、ばったんさんの作品に登場するキャラクターは現実の人生で出会う人々のようなリアルさ・肉感があり、その営みに胸を刺されます。 本作では女子校時代に付き合っていたももとみどりを主軸に物語が描かれるのですが、自分の想いをあっさりと無碍にしたみどりに対する愛憎、そしてももからは見えなかったみどりが秘める真実など、現実に起こり得る当事者にしか解らない感情の発露や蓄積が極めて巧みに描かれます。 他者から見ると苛立つほど幸せに見えても、実は誰よりも暗い孤独の澱に沈んでいた……そんなことはままあるのが世界の現実です。 女性と女性という関係性といえばそうですし、女性が描く女性ならではのセンシティブなシーンも描かれるのですが、それ以上に人間と人間による深遠で切実なドラマには男女問わず没入してしまうことでしょう。 結局、絶望をもたらすのも希望を与えてくれるのも、人間なんですよね。嗚呼。
レタイトナイト
『ベルリンうわの空』香山哲先生の新作! #1巻応援
レタイトナイト
さいろく
さいろく
『ベルリンうわの空』香山哲先生の新作はマイナーRPGを彷彿とさせるファンタジーだった。 ベルリン〜で独特かつ魅力的な絵柄で多くの読者を魅了し、電子先行だった?と思うが紙書籍も欲しくなって久しぶりに紙書籍も購入した。 私のチープな語彙力では「おしゃれ」とかしか表現できないがとにかくオシャレで可愛く、気持ち悪そうなデザインのキャラクターですら作中で柔らかい雰囲気で包んでくれるのが読んでいて心地よかった。 そんな香山哲作品、常に二色刷り(弘兼憲史作品でよくある感じの白黒だけでなくもう1色使われているもの)なのだが、ベルリン〜ではオレンジを基調にしていたところ本作では少し氷っぽい水色のようなアイスブルー(ブルーグレー?)みたいな、とにかく雰囲気がオシャンティでまた良い。 色々と前提となる設定が今回も多く(ベルリン〜と比べてばかりでアレだけど、あちらはドイツで生活する上で日本人には馴染みがないところの紹介があって面白かったがやはり前提がいくつかある)昨今の漫画の中でも珍しくじっくり理解しながら文字も読み込むのが楽しい作品になっている。 早く2巻が読みたいものだ。編集長頑張れー
ねじ式
ガロの中でも異彩を放っていたとされるつげ義春の代表的な1作
ねじ式
さいろく
さいろく
気づけば電子版があったので購入。 すんごい昔に読んだけど記憶に残っていたのは読後感ではなく絵画を観たあとのような感覚だけでした。 シュールの権化のような意味のわからない物語展開(そもそも意味とかないのかもしれない)の「ねじ式」を始めとした短編集。 つげ義春らしさがこれでわかるのかは不勉強であまり明確にわからないけど、きっとこういうものなんじゃないかとは思う。 ねじ式の冒頭、海からあがってくるシーンのTシャツを、いかにもギークって感じのヒゲメガネデブな白人が着ていた。 今となってはおしゃれであり、通り越して「通」っぽさが出てしまうであろう。 いずれにせよ本作を読むことで自分なりの感想を持つことが許されるのだ。漫画好きさんは1回読んでみるといいかもしれない。 ちなみにこの短編集ではいろいろな時期の作品が混ざっているようで、試験的なものから初期っぽいものまで(そう感じさせるだけで後期のものだったりしたらそれはそれで凄い)多数のつげ義春が見られる。 水木しげるを彷彿とさせるような背景描写技術に、当時の工夫が見て取れるのでいずれの作品もそういう意味では今読む事で面白さが増していると言えよう。
ホロウフィッシュ
青春漫画で話題沸騰中な作家の新作はサスペンスホラーだった
ホロウフィッシュ
さいろく
さいろく
バジーノイズが映画化され話題沸騰中(古い?)のむつき潤センセーの新作。4巻が出ました。今から読むけど読む前に3巻までの感想で。。 学校の先生がこんな色気があったらたまらんやろ!っていう高校生らしい感情も持ちつつ、急展開すぎる悪夢が波のように押し寄せてくる不思議な物語。 悪夢の展開は急だけど、主人公の彼の判断もまた急で、そこがとても若くていいなって感じられる。決断を一瞬で出来るやつは強い。 まるで呪いのようなこの波、大人になると理解しないと前に進みづらいところだけど若者らしく感情に従ってぶち当たっていくところが読んでいて応援したくなる。 この愚かさと表裏一体な真っ直ぐさは、前作バジーノイズがストレートで眩しかったあの感じと少し近い。 スピード感のあるコマ展開・テンポを見せておきながらも、急に直面する悪夢のような現実が読み手の時を止めてくる。 「あ、これホラーだ」って思わされるのがとても良い。 3巻のラスト、すごい真っすぐで良かったけど悪い結果が見えてくるとこでもあったので4巻めっちゃ気になるところ。今から読みます。
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そしてヒロインはいなくなった

そしてヒロインはいなくなった

3年前に別れた恋人のことを、密かに想い続けている妙子。ある日行きつけの飲み屋でくだをまく、トラさんに出会う。やべえばあさんだ、関わってはいけない…と思いつつ男への未練だらけのお互いが、まるで同じなことに気がつき…。おしゃれ好きでエネルギッシュな老女〈トラさん〉ボーイッシュだけど中身は夢見る乙女な〈妙子〉誰にも言えない恋心をそっと抱きしめあう、年の差50歳のシスターフッド・ストーリー。【電子限定 描き下ろし漫画収録】
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夏の神戸の街を歩く、母と娘。 久しぶりに会った母の腕は、抗がん剤のせいで痩せ細っていた。 「次があるか分からないから」そんなことばかり繰り返す母に、つい苛立ってしまう。 伝えたい言葉は、想いは、もっとたくさんあるのに…。 『そしてヒロインはいなくなった』『姉の友人』ばったん新作読み切り。
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【電子限定!雑誌掲載時のカラー扉収録】この欲望は、私だけの宝物。ときめきと性欲が交じり合う、きらめく5つの物語。腐女子友達に恋人ができたことをきっかけに、一念発起したトーコ。きらきらするような初体験を求めて一晩限りの男性に身体を開くが――…?(「終電なくなっちゃった」)ムギにとってセックスは、この世で一番楽なコミュニケーション。指いっぽんも触れないで恋をしてしまうなんて32年生きてきて初めてのことだった。(「それは、初めての」)ほか、まぶしくも儚い5編を収録した短編集、ついに発売!
まばたき【電子版特典付】

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発売即重版『姉の友人』(リイド社)大ヒット作品『かけおちガール』(講談社)ばったん最新短編集! タバコ屋のおばあちゃん×女子大生「アンテロースの休日」 お金持ち小学生×貧乏な転校生「みどりのなかのみずたまの」 母親を亡くした女子高生×クラスの嫌われ者「初夏の葬式」 失恋中の女子×旅先で出会った女の子「人魚姫」 吸血鬼×ニンゲン「さらば人間」 まるで正反対なふたりなのに一緒にいると 心が癒されていく―――。どうしようもなく惹かれ合う〈女と女〉5組10人の物語 累計30万いいねの大ヒット作5編+巻末に描き下ろし漫画収録! 〈電子版限定特典〉 描き下ろし4p漫画「人魚姫 -100 years ago-」
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14歳、初恋の相手はお姉ちゃんの元・親友―――。中学2年生のるり子は放課後、姉の元親友・今日子と会っている。同級生とは違う、うっとりするような刺激に満ちた秘密の時間。オトナの香水の匂いや、じっと見つめる瞳にドキドキしてしまうけど… お姉ちゃんと今日子さん、どうして絶交しちゃったの――? web公開後、SNSで人気爆発!! 初めて本当の「恋」を知った女3人の物語。
にじいろコンプレックス

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「渋谷からきた私、田舎とかサイアク」「誰とでも話せるけど誰とも友達じゃない」「毎日、地球が爆発すればいいと思ってる」「先生に気付いてほしくてパンツを盗んだ」「美人に生まれた私は孤独を選ぶ」「初体験をきっかけに高価な下着を買っちゃった」「誰とでもしちゃうけど、本当の恋は知らない」……。誰もが制服の下に“秘密”を抱え、泣いたり笑ったり。田舎の女子高を舞台にJKたちが奏でる、七人七色のイタい虹色青春録。
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「次の職場、吉祥寺かドイツだから」――突然夫に報告された、漫画家の私。私の夫・まきやっこは、日本でも有数の天才天文学者なのです。そして彼は同時に、日本でも有数の変人なのです。そんな夫の都合で、急遽ドイツで暮らすことになった私。『にじいろコンプレックス』の作者が、天才かつ変人とのドイツ暮らしを包み隠さず報告する、レポートエッセイまんがです。
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