何もない田舎に、引きこもりの兄と認知症の祖母を抱え、片親暮らしの主人公。
理解者でありそうな母親からも、人生の重荷とも言える負担を、主人公に押しつけてくる有様。

そんな絶望的環境で、彼の唯一の救いだったマイナーアイドルのナギ。
なぜか彼女が、主人公の住む田舎でコンビニのバイトをしており、ひょんなことで出会い、ともに、この後も何も起こらない未来に絶望して自殺をはかろうとして・・・という流れ。

主人公の、なんとも、この世の絶望をすべて煮詰めたような状況に胸がいっぱいになります。
特に、元田舎出身の私からすると、この閉塞感ともいえる感じ、よくわかるんです。

都会の人の中には、広がる自然に感動されて、田舎で暮らしたい~とか言ったりされますが・・・
実際住んでみると、何も変わらない光景は飽きるんです。

ホントに何もなくて、やがて息が詰まるような感覚になるんです。

そして、そこに住む人も、ある種の思考停止みたいな状態で、未来に対して希望がもてなくなるんです。

「このまま、ここで死ぬんだろうな」

という、卑屈にも諦念にも似た感覚で誰もが毎日過ごししまう。
皆何かに不満があるけど、何も変わらないし、何も変えられない。

最も、都会に「何か」があるわけでもないのですが、
田舎の人間のこの得も言われぬ感覚を、本作は見事に表現しているなぁと痛感します。

だからこそ絶望も深い。

まだ始まったばかりなのですが、徐々に明らかになる主人公や友人、ヒロイン・ナギの秘密や背景。
この後どう転ぶか、そしてどう絶望を表現していくのか、興味深いです。

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武士沢レシーブ
謎に読み返したくなる
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思春期に「セクシーコマンドー外伝 すごいよ!!マサルさん」をリアルタイムで読んでいた人はわかってくれると思うのだが、ギャグ漫画としてのマサルさんの衝撃はとにかく凄まじかった。 意味不明なのに爆笑できるという体験をさせてもらった作品で、シュールのような斜に構えたものでもなく、浦安鉄筋家族のようなわかりやすいギャグでもない。 でも面白い!という今でも強烈に覚えているほど私には衝撃的だった。 そのうえで、次回作がコレ。 そして、『ピューと吹く!ジャガー』に続く。 つまり、マサルさんとジャガーの間が本作。 わかりやすく言うと打ち切りなのだが、これはこれで私にとっては衝撃的だった。 マサルさんの衝撃後、同著者の新連載ということで本作を読んだら、文字通り ??? となった。リアルタイムで読んでいた人は(以下略 雰囲気はマサルさんチックなのだが、ヒーローに憧れるとかバトル要素が強く、どことなくギャグのキレも弱い。 でも、大人になるとなぜか無償に読みたくなる。 マサルさんの著者なのになぜ?と友人とよく話していた思い出補正もある。 加えて、マサルさんからジャガーへ昇華される段階なのか?という捉え方ができたり、純粋に天才だと思った作家の人間味を感じる。 ギャグ漫画の鬼才だと思っていた人間も、迷走するんだなと。 (マサルさんの後半も結構失速感はあった) 大好きな作家の、そんな一部が垣間見えるということで、謎に読み返したくなる作品です。 作家ファンの人にとっては貴重な体験になるのではないでしょうか。 最後に、ギャグのキレが弱いと言いましたが。「イヌーピー」(要はアレ)というキャラだけは、腹かかえて笑いました。
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