巻を増すごとに面白いにコメントする
バーナード嬢曰く。

人は何のために本を読むのか?

バーナード嬢曰く。 施川ユウキ
名無し
僕は本当に長いこと「知的キャラってモテんじゃね?」と思っていました。勘違いです。本当に勘違いでした。なんでこのような勘違いをしてしまったのか、おそらく『幽☆遊☆白書』の蔵馬がみんな悪いように思います。そのような誤った情報に基づいた僕の青春は、それはそれは暗いものでした。読めもしない難しそうな本をこれ見よがしに振り回していたのを思い出すたびに叫びだしたくなります。一番恐ろしいのは、その性質今でも変わっていないことです。家の本棚には綺麗なままの『薔薇の名前』(ウンベルト・エーコ)がささっています(さり気なく書名、著者名をアピールするのもいやらしくてポイント高いですね)。  そんな自意識過剰気味な自称読書家を主題に描かれる『バーナード嬢曰く。』です。図書室の片隅でいつも難しそうな本を読んでいる女子高生。彼女は自分のことを「バーナード嬢って呼んで」と言うような変わった少女です。バーナード嬢(通称:ド嬢)が本を読むのは人前でだけです、自分を読書家キャラに見せたいのです。ド嬢は常に、読まずに通ぶれないかばかりを考えていて、ド嬢のことが気になる遠藤や、SF好きな神林しおりに突っ込まれています。  ド嬢と違って神林しおりは本当にSF好きらしく、一度スイッチが入ってしまうと延々と自身の見解について述べてしまいます。ド嬢が無邪気に「SFって何?」と聞いただけで逆ギレしてしまうのは、さもありなんとしか言いようがありません。  『バーナード嬢曰く。』を読んでいると、一体人は何のために本を読むのか?ということを考えてしまいます。勿論、読みたいから読むのですが、その選択には少しだけ「こうなりたい自分」があるように思います。自分の家の、手にも取らない本の背を見ていると、何もしないで何者かになりたかった自分を再発見します。それはド嬢も一緒です。だから、ド嬢のグダグダな図書室での毎日が楽しく見えるのです。
大海に響くコール

ああ、私の「好き」がそこにある #1巻応援

大海に響くコール
兎来栄寿
兎来栄寿
『ゲッサン』の読切でフレッシュな魅力を披露してくれていた遊維さんの、連載作品です。 テーマはずばり「シャチ」。 推し力士がいたり、推しVtuberがいたりと心から好きなものがはっきりしている友人たちに比べて、流されるまま・合わせるだけで特に自分だけの何かを持っていなかった女の子・かわず(通称ぴょこ)。そんなかわずが、成績優秀でモデルのスカウトも受ける美貌も併せ持つ神崎さんとお近づきになることで、神崎さんがこよなく愛するシャチの魅力に気付かされ、初めて心からの好きを得ていく物語です。 兎にも角にも、「好き」で駆動する物語って良いですよね。「好き」は何にも増して強くて素晴らしい感情です。本作は筆者がシャチが大好き、かつ新担当編集もシャチが大好きというところに立脚しているようで、作品全体からシャチへの深い愛が迸っているのを感じられます。 『七つの海のティコ』を観て育った身としてはシャチに対して親近感もあり。神崎さんやかわずほどの深愛ではないですが、シャチ、いいよね……という気持ちで読みました。 そして、マンガ自体の良さ。第1話のサブタイトルがバチっとハマる瞬間の気持ち良さであったり、第4話のタイトルを回収するシーンだったり、遊維さんの絵の魅力と演出が掛け合わさって胸踊るような描写がガンガン出てきます。 羅臼ではないですが、北海道の知床沖に船で出たときの雄大な自然に感動した瞬間を読んでいて思い出させてくれました。本当に地球や生命の偉大さを感じさせてくれますし、自然と涙も出てくるんですよね。 「本当に好きなものを見つける」というかわず物語として読んでも非常に良いですし、一方で神崎さんの抱える難しい感情もまたひとつ味わいを加えてくれます。神崎さんと同じような絶望を抱えたことがある人には刺さることでしょう。なお、私は言うまでもなく自らを強く貫きながら好きなシャチの前では破顔する聡明な黒髪ロングストレートの神崎さんがとても好みです。 読んでいて、心が洗われていくような素敵なお話です。シャチに興味がある人はもちろん、そうでない方にもお薦めです。
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