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鬼太郎シリーズに次ぐ、水木しげるの代表作といえばこれですね。ほかに貸本時代の作品集「水木しげる貸本傑作選 悪魔くん」というのもありまして、こちらはその後年に執筆されたもの。実はストーリーやテーマの部分では、前者の暗い雰囲気のほうに惹かれる部分が多いのです。しかし、やや一般的にアレンジされた後者のこちらを選んだのは、圧倒的な描写力、特に絵画的に描かれるようになった背景にシビれたから。貸本時代に比べて月日がたっているので、描写力が上がるのは当然なのかもしれませんが、この質感のある背景のド迫力は何なんでしょう。スクリーントーンを使わず(この時代にはなかった?)、描き込みだけで表現された濃淡。真骨頂である点描の美しさ。巨大な妖怪や異様にうねる蔓、異世界の風景などは匠の技の賜物です。それでいて、あのペーソス感のあるメインキャラと平行して存在しているからすごいよなあ。悪魔くんは千年にひとりの天才という設定ですけど、それは作者にもあてはまるというのは言い過ぎでしょうか。