この世のすべては数学で表せる(そして解ける?)にコメントする
はじめアルゴリズム
数学の見方が変わる傑作
はじめアルゴリズム 三原和人
hysysk
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数学を得意とするキャラクターとしては「はじめアルゴリズム以前・以後」という分け方ができるくらい新鮮に、気持ち良くステレオタイプを裏切ってくれた。でもこれは単なる逆張りじゃなくて、仏教や俳句などにも親しんだ岡潔みたいな人達からのインスピレーションを受けたものだと考えられる。 天才というか独特のセンスを持った主人公が王道の数学を学ぶことで、いかに数学が数や式だけでない広い世界であるかが明らかになってくる。数学って何が面白いの?とか計算が苦手だから嫌い、証明とか訳分かんない、と思ってる人にこそ読んで欲しい。学生時代にこんな風に数学ができたら人生変わったと思う。 最先端の数学は一握りの天才にしかできないと言われるし、実際その通りなのだけど、根源にはこの世界をどのように認識するか、どう生きるかという問題があり、その人にとっての数学がある。だから誰だって安心して数学をすれば良い。失敗してもやり直せるし、天才には天才の苦労があり、凡人には凡人なりの役割がある。内田やミツヤ、大貫の生き方に勇気をもらえる人もいるはずだ。 数式や理論はちゃんと監修されていて、それらが生み出されたきっかけやモチベーションが自然にストーリーに組み込まれている。さらに巻末には現代数学の解説付き。これがデビュー作だなんて凄いなぁと思っていたが、作者は井上雄彦のアシスタントだったそうだ。次作も楽しみにしています。
銀のくに
雪国に降り積むあたたかな想い #1巻応援
銀のくに
兎来栄寿
兎来栄寿
はやしわかさんについては以前に『変声』の際に書きましたが、その表題作「変声」を含んだ短編集が新たに『変声』として発売になると同時に、こちらの『銀のくに』と同時発売となりました。 新潟の外れにある雨生町を舞台にした、雪国のヒューマンドラマです。 通学にバス45分+電車で20分かかる学校に通う高校1年生の五十嵐風花の家に、体を悪くした伯父の息子で同じ高1の賢心と、小3の娘のゆき枝が神奈川から突然やってきてしばらく同居していくことになります。 思春期の少年少女にとっては、どちらの立場からしても大きな戸惑いが生じるできごとでしょう。最初はお互いにぎくしゃくしていますが、さまざまなできごとを通して少しずつ、雪がとけるような速度で歩み寄っていきます。 それは、何も風花と賢心の間のだけの話ではなく、環境の変化への不安から涙をこらえられないゆき枝と、一見すると偏屈に見える風花の祖父もそうです。自分も、小3のころにあった大きな環境の変化に上手く順応できずゆき枝のように心細い想いをしたなぁと懐かしい思い出が蘇りました。一方で、祖父の方としても折り合いがつこなかった息子の方の孫ということで、接し方が難しいのも大人になると解ります。 どうしたって、初めは潤滑にはいかない関係。社会にはざらにありますが、そこで何とか互いに歩み寄っていくことで世界は開けます。そんな様態を、いじましく尊い努力を上手く描いている作品です。 また、雪国での生活のさまざまな困難が克明に描写され、10cm雪が積もったらニュースになる東京や神奈川との違いを感じさせます。一方で、そういう風土であるからこそ受け継がれてきた伝統料理の「のっぺ」のような存在もあり、美味しそうで食べてみたくなりました。 年頃なので、当然同級生たちを含めて恋愛方面の話も出てくるわけで、そうした部分における展開もどうなっていくのか気になります。 読んでいて凍えるような銀色の世界で営まれる生活がまずベースにあり、その上で絡まり合って動いていく人間模様。雪国育ちの人は共感を覚えるところも多いと思いますし、そうでないところで育った人も楽しめる物語です。
はじめあるごりずむ
はじめアルゴリズム 1巻
はじめアルゴリズム 2巻
はじめアルゴリズム 3巻
はじめアルゴリズム(4)
はじめアルゴリズム(5)
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はじめアルゴリズム(7)
はじめアルゴリズム(8)
はじめアルゴリズム(9)
はじめアルゴリズム(10)
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