ネタバレ

 素晴らしい。魂が震える漫画。久々に出会えました。
 宗教改革期を描いた作品は数多く、人の信じる道、生き方そのものを問われる時代だけに心震わす話が多い(7人のシェイクスピア乙女戦争など。いずれも面白い)のですが、『魔女狩り 漫画』で検索すると「辺獄のシュヴェスタ」の名前がずらりと並び、本作品の人気と評価の高さが窺えます。

 よくネットのレビューで書かれているのが「主人公のカッコよさ」ですね。どれだけ虐げられても折れず曲がらず泥を啜ってもただ突き進む、まさにダークヒーロー(というかヒロイン)の鑑です。しかも「収容所」という舞台から容易に連想される「脱獄」ではなく、あくまで敵の喉笛を喰いちぎることを唯一の目的とし、機を窺い耐え忍び牙を研ぐ、ハイパー難易度に挑むわけです。しかも地獄への片道切符…。
 そして志を同じくする仲間たち、も、素敵なんですが、それ以上に敵対するボスたちが非常に魅力的です。エーデルガルト総長を筆頭に、異端審問官のヴィルケ、同僚のクリームヒルトなど、ハードモードをさらにハードにしてくれる素晴らしい逸材たち。特にエーデルガルトは屈指の名敵役になれるポテンシャルがありました。

 含みのある言い方になってしまった理由は、分厚い最終6巻にあります。
 個人的な感想としては最終盤の筋書きと結末にはこれ以上なく満足でして、修道院の壮大な企みに、復讐との決着、その後のエピローグでの彼女の気高く美しいさまはここまで読んできてよかったと思わせてくれるものでした。ただ、惜しむらくは、これを1冊分にまとめずあと2~3冊かけてじっくり描いてほしかったな…という一点に尽きます。
 漫画はしばしば被消費物としてテンポの良さ(と言う名の「テンポの速さ」これは私は決してイコールじゃないと思う)が求められますが、エーデルガルトとクリームヒルトは丸々単行本1冊使ってでもじっくり描かれるべきでした。たったの6巻で終っていいスケールのストーリーでも主人公でもない!

 やはり通説のとおり、漫画の理想的な巻数は「10巻前後」なのかもですね。

読みたい
ありふれた職業で世界最強
主観なので駄作とまでは言い切りたくないが…
ありふれた職業で世界最強
mampuku
mampuku
 男子中学生の妄想ノートを延々と読み聞かせられてるみたい。笑  なろう系のファンタジー小説って多かれ少なかれそういう厨2要素がありつつ、ストーリーを構成するある種の技術によって、カタルシスや萌えなどで読者を気持ちよくしてくれるエンターテインメントに昇華されてる、特に人気の作品は大体そうだと思うんですけど、この「ありふれた~~」という作品に関しては"厨2要素"どころか剥き出しの妄想そのものを読ませられてるみたいです。残念なことにコミカライズ担当の絵が上手すぎないのもそれに拍車をかけてる感じがします。  ナードで陰キャラなのに"何故か"クラスの中心的グループから一目置かれ、”何故か”クラスのマドンナから甲斐甲斐しく世話を焼かれ、そのせいでクラス中から妬まれている。その後クラス全員で異世界に飛ばされるも"偶然"最強レベルの能力に目覚め、強くて可愛くて従順で自分に好意を向けてくれる少女と出会い、一緒に魔物と戦いながら元いた世界を目指して旅をする。  ……。  いや、わかるんですよ、牛脂で焼けば肉は美味いし苺に練乳かけたら美味しいのはわかるんですけど、これはどちらかというと牛脂に練乳かけてナマで食わされてるみたいな…料理しよ?  ちなみにコミックスの巻末に4ページ程度の書き下ろし小説がついています。短いですが、けっこう読むのがしんどかったです
ダンジョン飯
『ダンジョン飯』最終巻、丸ごと一冊哲学者だった
ダンジョン飯
mampuku
mampuku
自由にいきるとは何か 欲望とは何か 社会で暮らしていくとはどういうことか 善悪とは何か 食べるとはどういうことか 現実世界を遥かに凌ぐ多様な人種、生物種、民族、価値観が絡まり合いながら各々がそれぞれの“明日”と向き合っていく。 猫のように気ままに振る舞ってきた獣人のイヅツミはいざ自由な地上に放り出されたことで、本当の自由とは何かという問いに直面する。 そんな戸惑う彼女にマルシルは、嫌いな野菜も我慢して食べ、よく運動し、健康で長生きしてほしいと懇願する。すなわち、自由とは何かという深遠なる問いに対する一つの手がかりとして、「健康に生き続けること」こそが自由を叶える方法なのだと一つの“道”を提示したではなかろうか。 というか自由とか欲望とか語りだすと収集がつかなくなるので簡潔にまとめると、たとえファンタジー世界であろうと変な奴らばっかであろうと、飯を食うという普遍かつ不可避な事象の前ではその人なりの哲学や生き様が現れる。人は思考や欲求によって食事をし、食事によって作られた体、食事によって生きながらえた生がまた新たな思考や欲求を生むのだ。
へんごくのしゅゔぇすた
辺獄のシュヴェスタ 1巻
辺獄のシュヴェスタ 2巻
辺獄のシュヴェスタ(3)
辺獄のシュヴェスタ(4)
辺獄のシュヴェスタ(5)
辺獄のシュヴェスタ(6)
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地の底の天上

地の底の天上

竹良実、衝撃のデビュー作。2013年第265回スピリッツ賞(最高賞)受賞。その後、『辺獄のシュヴェスタ』『バトルグラウンドワーカーズ』『植物病理学は明日の君を願う』とジャンルの境界なく活躍する作家の初期衝動を見よ!(月刊!スピリッツ 2013年11月号掲載)
植物病理学は明日の君を願う

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人類の弱点は植物! 現代の脅威に科学で抗え 人類の摂取カロリーの約8割はたった14種類の植物性食物。農作物が植物病に感染すると、我々の命はあっけなく危機を迎えてしまう―― 植物病との闘いは人類の歴史であり、未来でもあるのだ。その幾多の病と闘う植物病理学者の叶木准教授が科学の力で真実をつかむ! 『メイドインアビス』つくしあきひと先生も大絶賛! 最先端のクライムサスペンス巨編!!
バトルグラウンドワーカーズ

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『辺獄のシュヴェスタ』の作者、最新作! 『辺獄のシュヴェスタ』の竹良実が選んだ次の舞台は、“現代の戦地”―― 失業中に30歳を迎えた平仁一郎のもとに届いた、一通の手紙。それは未知の生命体「亞害体」と戦う人形兵器「RIZE-ライズ-」を遠隔操縦するパイロット職の通知だった。人類のために立ち上がる者という意味を込めて命名された「RIZE」。戦地の最前線で、人々に知られず世界を救う仕事に就いた仁一郎だが…!? 生死を懸けたSFアクション大作、開幕!!
不朽のフェーネチカ

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この後自殺か人殺しでもしないかぎり、聖人認定は間違いないと言われる修道女のマザー・ドロテア。だがある日、彼女の経歴を疑う青年記者・アレハンドロが修道院を訪れる。彼女の正体は、奇跡の聖女か、稀代の詐欺師か――。『辺獄のシュヴェスタ』で各所から激賞された竹良実が放つ、85ページの特濃読み切りを、リクエストにお応えして緊急電子書籍化! 電子版では彼らのその後を描いた、おまけマンガ3ページも収録します。
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千年期の終わり頃、あらゆる地に現れ暴虐の限りを尽くした最強の民族、ヴァイキング。そのなかにあってなお、最強と謳われた伝説の戦士が息子をひとり授かった。トルフィンと名づけられた彼は、幼くして戦場を生き場所とし、血煙の彼方に幻の大陸“ヴィンランド”を目指す!!『プラネテス』の幸村誠が描く最強民族(ヴァイキング)叙事詩、堂々登場!
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『不死身の杉元』日露戦争での鬼神の如き武功から、そう謳われた兵士は、ある目的の為に大金を欲し、かつてゴールドラッシュに沸いた北海道へ足を踏み入れる。そこにはアイヌが隠した莫大な埋蔵金への手掛かりが!? 立ち塞がる圧倒的な大自然と凶悪な死刑囚。そして、アイヌの少女、エゾ狼との出逢い。『黄金を巡る生存競争』開幕ッ!!!!
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時は大正時代。炭を売る心優しき少年・炭治郎の日常は、家族を鬼に皆殺しにされたことで一変する。唯一生き残ったものの、鬼に変貌した妹・禰豆子を元に戻すため、また家族を殺した鬼を討つため、炭治郎と禰豆子は旅立つ!! 血風剣戟冒険譚、開幕!!
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紀元1600年、天下分け目の関ヶ原……敵陣突破の撤退戦「島津の退き口」「捨てがまり」で敵将の首を狙うは島津豊久!!生死の狭間で開いた異世界への扉……現在では無い何時か、現実では無い何処かへ、戦国最強のサムライは、新たな戦世界へ招かれる!!異才・平野耕太が描く新世界が今、拡がる……
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昭和19年、夏。太平洋戦争末期のペリリュー島に漫画家志望の兵士、田丸はいた。そこはサンゴ礁の海に囲まれ、美しい森に覆われた楽園。そして日米合わせて5万人の兵士が殺し合う狂気の戦場。当時、東洋一と謳われた飛行場奪取を目的に襲い掛かる米軍の精鋭4万。迎え撃つは『徹底持久』を命じられた日本軍守備隊1万。祖国から遠く離れた小さな島で、彼らは何のために戦い、何を思い生きたのか――!?『戦争』の時代に生きた若者の長く忘れ去られた真実の記録!
大奥

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男子のみを襲う謎の疫病が国中に流行り、男子の数が激減。男女の立場が逆転した世界に生まれた貧乏旗本の水野は、大奥へ奉公することを決意する。女性の将軍に仕える美男三千人が集められた女人禁制の場所・大奥で巻き起こる事件とは…!?
チ。―地球の運動について―

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動かせ 歴史を 心を 運命を ――星を。舞台は15世紀のヨーロッパ。異端思想がガンガン火あぶりに処せられていた時代。主人公の神童・ラファウは飛び級で入学する予定の大学において、当時一番重要とされていた神学の専攻を皆に期待されていた。合理性を最も重んじるラファウにとってもそれは当然の選択であり、合理性に従っている限り世界は“チョロい”はずだった。しかし、ある日ラファウの元に現れた謎の男が研究していたのは、異端思想ド真ン中の「ある真理」だった―― 命を捨てても曲げられない信念があるか? 世界を敵に回しても貫きたい美学はあるか? アツい人間を描かせたら敵ナシの『ひゃくえむ。』魚豊が描く、歴史上最もアツい人々の物語!! ページを捲るたび血が沸き立つのを感じるはず。面白い漫画を読む喜びに打ち震えろ!!
テルマエ・ロマエ

テルマエ・ロマエ

すべての“風呂”は、“ローマ”に通ず。「マンガ大賞2010」と「第14回手塚治虫文化賞短編賞」をW受賞、実写映画(主演:阿部寛)も記録的な大ヒットとなった超ベストセラー・爆笑コミック! 紀元前128年、第14代皇帝ハドリアヌスが統治し、かつてない活気に溢れているローマ。すべてに斬新さが求められるこの時代、古き良き浴場を愛する設計技師のルシウス・モデストゥスは、生真面目すぎる性格が時代の変化に合わず、職を失ってしまう。落ち込むルシウスは友人に誘われた公衆浴場から、突然現代日本の銭湯にタイムスリップしてしまい……!?
プリニウス

プリニウス

どうしても、この男が描きたかった!世界史上もっとも著名な博物学者にして、ローマ艦隊の司令長官。古代ローマ一の知識人にして、風呂好きの愛すべき変人。その男の名はプリニウス――。『テルマエ・ロマエ』のヤマザキマリが、最強のパートナー“とり・みき”を迎えて、ふたたび魅惑の古代ローマ世界に挑む。圧倒的な構成と迫真の画力で2000年前の世界を描く、歴史伝奇ロマンの決定版、ここに誕生!
決闘裁判

決闘裁判

「東京カラス」「リュウマのガゴウ」の宮下裕樹が放つ中世ファンタジー巨編!17世紀初頭、神聖ローマ帝国。この地では、原告と被告の決闘で有罪無罪が決まる「決闘裁判」が広く行われていた。神は正しい方の人間を勝利に導く、という教えのもとに‥‥。少年ニコが姉と暮らす南西の町ブライザッハでも決闘裁判が日々行われていた。決闘裁判を嫌う姉をよそに、ニコは特に何も考えていなかった。姉が死んだその日までは‥‥。
レオノーラの猛獣刑

レオノーラの猛獣刑

古代ローマ。有能なライオン飼育係の奴隷少女レオノーラは、唯一の家族とも言えるライオン「マックス」が富豪ペトルスに売られてしまったことにショックを受ける。ペトルスは不注意でグラスを割ってしまった奴隷に腹を立て、猛獣刑(ライオンに食わせる死刑)にしてしまうという彼の異常を悟り、家族であるマックスを守り抜くと決意する。
パスタでボ~ノ

パスタでボ~ノ

卵アレルギーの子供に、卵を使わないカルボナーラ風絶品パスタ! 夏が似合う女性にはフルーツトマトを使ったカッペリーニなど、美味しいイタリアン満載! 全国を旅する出張パスタの料理人・蓮田太が、思わずボ~ノと言いたくなる絶品を生み出す本格イタリアンコミック!
ヴィルトゥス

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西暦185年。古代ローマ帝国は、闘技に明け暮れる第17代皇帝・コンモドゥスの暴政により荒廃しつつあった。ローマの行く末を憂える帝の側室・マルキアは、時を操る秘術を用い、失われしローマ人の至高の魂「ヴィルトゥス」を抱く男を未来より召還することを決意。彼女がやって来たのは、西暦2008年の日本・府中島刑務所で…!?古代ローマ格闘奇譚!!
格闘士ローマの星

格闘士ローマの星

西暦63年、冷酷非道な皇帝・ネロに支配されたローマ帝国で市民が熱狂していたもの…それがコロッセオで連日行われる格闘士たちの生死を賭けた闘いであった。市民に人気で心優しき格闘士・アリオンは、その人気に嫉妬するネロの策略により愛するライザを失い、冷酷な悪役格闘士のレッテルを貼られてしまった…。
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