その他マンガの感想・レビュー41件塩とコインと元カノと塩とコインと元カノと シャドウライフ ヒロミ・ゴトー アン・ズー ニキ リンコstarstarstarstarstar_border寸々主人公はカナダに住む日系のバイセクシュアルおばあちゃん。 故縁、新しいつながり、そして家族、あらゆる力を借りながら死という運命に抗うお話。 特に元カノとの腐れ縁シスターフッドが良かった。 『蜘蛛の糸』(芥川龍之介)をオマージュしたラストの展開、尿漏れで戦う姿は滑稽でいて、カッコいい。酒飲みのただれたライフハック川尻こだまのただれた生活 川尻こだまstarstarstarstarstarMiyakeビール缶に穴開けて飲む話好き。最近引越したからキレイないいとこなのかなって思ったら、築年数古くて入居するなりG2匹死んでて換気扇が旭日旗の装飾されていて照明は強い閃光を放ってショートして畳と床は腐っているし染みついた臭いが取れない、という地獄物件。さすがだぜ。根本尚先生の話人形紳士 少女探偵・火脚葉月 最後の事件 根本尚starstarstarstarstartoyoneko根本尚先生は、秋田書店系の雑誌にギャグマンガを執筆している漫画家です。 週刊少年チャンピオンを長年読んでいた方でしたら、「現代怪奇絵巻」は印象に残っていることと思います。 なお現代怪奇絵巻は単行本化未了でしたが(厳密には、一部の話のみ、シーモア限定で読めます。ただし携帯電話用のものなので、パソコンからは読めない。)、連載終了後の書下ろし部分は、最近kindleにまとまりました。 https://manba.co.jp/boards/196294 長らく不遇の時代が続いていたのですが、趣味で描いてコミティアで売っていた本格ミステリの「怪奇探偵・写楽炎」シリーズが、ミステリマニアとミステリ作家にウケて、非常に高く評価されたことから(具体的には、芦辺拓・有栖川有栖・二階堂黎人)、文春デジタル漫画館のラインナップに加わることとなりました。 https://manba.co.jp/boards/102998 …が、私が語りたいのは、「それ以外の作品」の話です。 まず私が好きなのは、「札幌の六畳一間」シリーズ。 https://manba.co.jp/boards/177553 エッセイ漫画です。具体的には、貧乏漫画家である主人公(根本先生)が苦労する様を赤裸々に描くコメディエッセイです。 皆さん好きでしょう、漫画家が貧乏生活を送るエッセイ! 「札幌の六畳一間」「続・札幌の六畳一間」「札幌の六畳一間 無料編」などがありますが、アンリミ又は無料で全部読めます。 ここから派生して、「競売物語」もあります。これはツイッターでそこそこバズってました。 https://note.com/nemotosho/n/nd6099a76df12 根本先生のエッセイ漫画は非常に面白く、「90年代ミステリ漫画講座」も良くできています。私はこれを読んで「監察医SAYOKO」を買いました(でもまだ読んでない。)。 https://note.com/nemotosho/n/n576e649d2598 https://note.com/nemotosho/n/nd98daacdbcd6 次に、「タイムスリップ・コレクター」。 https://manba.co.jp/boards/196295 初出はコミティアらしいのですが、最近電子化されて普通に読めるようになりました(これもアンリミで読めます。)。 根本先生は古書が趣味らしいのですが、「過去にタイムスリップして、現在ではプレミアがついている本を入手できたら…」という着想から生まれたと思われる作品です。 アイデアそのものはそれほど革新的というわけではないのですが、「実際にそうなった場合に直面するであろう苦労」が様々に描かれていて、楽しい作品です。 そして最後に、今回何より紹介したかったのが、「人形紳士」です! https://manba.co.jp/boards/196296 もともとは、今年の3月ころ、根本先生が272頁を一気に書き下ろして(ただしサインペン一発書きでネーム状態)、noteに発表した作品なのですが、私は存在自体を知りませんでした。 知るきっかけとなったのは、以下のツイートです。 https://twitter.com/mysteryEQ/status/1725849354626613601 ミステリ好きが選ぶ年間ランキングで、この作品が1位(ただし非小説作品内での1位)に選ばれた、という内容です。 へーそうなんだあ、しかも無料なんだ読んでみるか、と手を出してみたのですが…いやあ… 傑作でしたよ!! 根本先生の「怪奇探偵・写楽炎」シリーズはですね、マジで「本格」なんですよね。 つまり、トリック重視で、ある意味で、ドラマ部分はそれほど重視されない。まぁ変な犯人はいますが、主人公側のキャラクターは弱い。 これに対して、「人形紳士」は、トリックも良いのですが、それよりもとにかくドラマ部分、特に、主人公たちの関係性が良いんですよ。まさかの青春ミステリ!エモい! 根本先生がこういう作品を描けるというのは本当に新鮮な喜びなんですが、贔屓目なしでも名作であり、是非もっとたくさんの人に読まれてほしい作品です。 noteでも、kindleでも無料で読めますので、皆さんガンガン読んでください! なお、発表当時のツイッターでの反応が以下にまとまっています。 https://togetter.com/li/2099294 ぜひまたこういう方向性の作品を発表してほしい(なおそのときには普通にお金を払わせてほしい。)。 なお、サインペン一発書きで、ちょっと読みづらいところもありますので、ぜひ別の人の作画で読んでみたい作品でもあります。 どこかの編集部の方、よろしくお願いします!武芸紀行の感想 #推しを3行で推す武芸紀行 さいとう・たかをstarstarstarstar_borderstar_borderマンガトリツカレ男・読んだ直後に思ったこと ※一番大事!※ 読む順番を間違えたな。武芸紀行を読んでから 「風よ雲よ剣よ」を読むべきだった。「風よ雲よ剣よ」のダイジェスト版に近いので色々回収されないまま勢いのまま終わった感がある ・特に好きなところは? この頃のさいとう・たかをの絵 ・作品の応援や未読の方へオススメする一言! 「風よ雲よ剣よ」を読む前に読むとさいとう・たかを作風の変遷などがわかる感じがします。ただ電子書籍になってもいないのであまり気にせず「風よ雲よ剣よ」を読むをいいと思います。 厳選!読んでほしいこのマンガしずかの山著者:松本剛愛英史完結全3巻作品情報はこちらAIはまだまだ人類には及ばないなあと実感机上の九龍城 安野貴博名無しおおまかな要約:新人SF作家がAIを活用して漫画を発表!本作を通じて浮かび上がるAIの課題。課長のキャラの濃さに注目。意外なネームの上手さ、素の絵でも漫画を描くべきかも? 本文:はてブで「漫画未経験のエンジニアが今のAIで漫画制作にトライしてみた記録2023年夏時点版」なるnote記事がバズっていたので知。作者はさいきんデビューしたSF作家の安野貴博。すでに本も一冊だして会社もやっているとか https://note.com/takahiroanno/n/n649cac118429 で、やっぱり、AIの使い方にもセンスがいるかなと。 アイディア出しや一部背景などではすでに導入が進んでいると聞き及びますが、 メインの作画だとどうしても違和感が勝ち、そのぶん読者としての没入感を削がれてしまう 実験作としてはなかなか興味深い試みですが、肝心のストーリーやAIよりも課長のタダオのキャラデザの濃さに目が行ってしまったw 主役を食う存在感がハンパないぜ .......! 余談:ところで上記のnoteで一部ネームを公開していたのですがけっこう構図が「まんが」してて意外に上手でびっくりしました(参考までに1ページ引用、出典は上のnote記事です) 漫画、いちどAI抜きでフツーに描いてみてもいいんじゃないかな〜?12巻が出たよ川尻こだまのただれた生活 川尻こだまさいろくいつもどおりの川尻こだま先生。 いつものいなげやでいつもの町でいつもの通り生活しているなぁ、ゲームも相変わらずあんま上手くやれてないんだなぁ、時事ネタも拾うネタが広範囲にわかりやすいようで意外とピンポイントなものもあったりするし…みたいなところで親近感がわく。 いつもどおりである。表紙から出オチとみせかけて、筋肉バンザイ筋肉童話 〜読むプロテイン〜 赤信号わたるstarstarstarstarstar_borderゆゆゆ何度読んでも笑ってしまうシーンってありますよね。 この漫画だと「非暴力エルボー」です。 何を言ってるのかわからねーと思うが‥と説明したくなりますが、そこは読んでいただくとして。 すごい響きですよね、「非暴力エルボー」。 非暴力なのに、エルボーです。 なお、タイトルに「読むプロテイン」とあるとおり、読んでいると体を鍛えたくなりますし、なるどころか、読むだけで鍛えている気持ちになれる漫画です。 筋肉は期待に応えてくれ、トラブルを解決してくれるすばらしい存在であることを思い出させてくれます。 読めば読むほど、 筋肉筋肉 やっぱ 筋肉だな という、締めの一文を思わず一緒に読み上げてしまいそうになる、筋肉漫画です。たしかにただれてる川尻こだまのただれた生活 川尻こだまstarstarstarstarstar_borderゆゆゆ酒のんで、あぶらっこいもの食べて、甘いものを食べて、「あたしゃ✕✕がすきだよ。✕✕だからね」とTwitterで突然呟いて。仕事に追われて。 最近のTwitterは、まとめ漫画初期にあるような、人としていかがなものかと思う生活が流れてこないぞと思っていたら(タイムラインへ流れてこなかっただけ?)、がっつりマイクラにハマって浮き沈みしていたという新刊が出ていて、相変わらずの生活だったようでなんだか安心した。 ちなみに、アニメ化もされて、ゲーム化もされているこの方。 本職は一体何なのか、川尻こだまと呼ばれて話題に登る前の存在は相変わらずわからない。 いや、わからないくらいが漫画を楽しめてちょうど良いのかもしれない。出オチ漫画だったのに!おれの聖剣を妹が抜いた終 まるろうサミアド※ネタバレを含むクチコミです。漫画家じゃない人が描いてみた系の漫画が昔から好きなんですよ俺と世界 呂布カルマ名無しラッパーの呂布カルマが2017年に不定期連載した1話1ページの作品だ かなり達者な画風に驚く人もいると思うが、実は彼、若い頃は漫画家を志した時期もあったのだとか。『俺の勝手』にマンガを描くゼという自然体で描かれるダウナーなギャグがめっちゃ癖になる。 なお、これを機にたまにマンガを描くようになったかと思いきや、特にそんな事はないのだ。うーん残念。またこういうしょーもないマンガを描いてほしいなあ さて、この文章のオチが思いつかなかったので一番気に入ってる「ラッパーと排泄」を貼って代わりとしたい https://ima.goo.ne.jp/column/comic/5230.html友だちの概念がリアルすぎる友だちはいるけれど 冬川智子野愛友だちという概念の解像度が高すぎる。 友だちは大切にしようと幼い頃から教えられてきたのに、些細なきっかけで失うこともある。 結婚、出産、恋人の有無、性別など、誰も悪くないことが理由で疎遠になってしまう。優先順位が変わったり大事なものが増えたことを裏切りのように思ってしまう。 友だちとくっついたり離れたり依存したり出会ったりしながら、自分を見つめなおす女性たちのお話。 友だちというか人間そのものがめんどくさいな…と思ってしまうけど、最後まで読むと友だちに連絡したくなるはず。 なんだかんだ友だちって大切です。不思議と繰り返し読みたくなる踊るミシン 2022Final 伊藤重夫かしこいつか読んでみたいな〜と思いつつ、2017年に復刊した青版でさえも古本屋で7500円になっているのを発見して絶望していましたが、私と同じような人がたくさんいたのか、めでたく再復刊!ようやく手に入りました。 ウワサの名作とあって期待値は爆上がりでしたが、いざ読み終えると頭の中が「?」になりました。率直に言うと「思ってたのと違う!」みたいな。でも誰が読んでも1回目はそういう気持ちになるんじゃないかな。 なんて言ったら適切なのか分からないけど、ストーリーの展開の仕方がすごく独特で、シーンの間に繋がりがなくて点を見せられてるような。しかも核心には絶対に触れないの。だから2回目からは点を線にしたくなるし、あえて描かれなかったことに思いを馳せちゃう。 ストーリーの分かりにくさと、ヒロイン・麗花の内面の複雑さがリンクしているのが、読後感をさらに高めますね。明るくポップで悲しい話でした。熊本応援ドライブ漫画fromネッツ熊本私の魅力がわからんと!? 鹿子木灯あうしぃ@カワイイマンガ『今日どこさん行くと?』鹿子木灯先生の新作は、出版社からではなく、まさかのネッツトヨタ熊本さんから! 今回も美しい風景&カワイイ男女のドライブが楽しくなりそう! 再び災害に見舞われている熊本への応援としても、読まれて欲しい! 第1話 https://my.ebook5.net/netz-kumamoto/hJgrP6/?page=1 ネッツトヨタ熊本のページはこちら https://www.netz-kumamoto.com/サブカルネタを解説しながら展開する学園コメディ!オレの友人は属性萌えが激しい のもたか※ネタバレを含むクチコミです。想像してた50倍ただれていた川尻こだまのただれた生活 川尻こだまstarstarstarstarstarnyae私も味が濃いものや油っこいものは好きだし、貰いものの高めのお菓子一日で完食しがちなのめちゃくちゃわかるけど、この漫画のような生活を真似しようものなら一瞬で病院送り&早死にしそうな、ただれた生活です。でもこの漫画大好きだから川尻氏にはただれた生活をしながらも長生きしてほしいと思うことは、わがままだろうか? 楽しそーー!!台湾もぐもぐ二人旅 にしうら染ぺそ海外に気軽に行けなくなり台湾への恋しさがいっそう増しています…🥺この本のおかげで旅行気分が味わえてすごく楽しかったです! 次は「台北之家」行こうと思います! https://lade.jp/diary/tabelog/cafe/31688/ 1ヶ月でフランスの美術館・博物館20館を制覇…!フランスふらふら一人旅 パリ・美術館巡り編 にしうら染ぺそにしうら先生の1ヶ月フランス旅行での美術館巡りにフォーカスを当てたエッセイ漫画がこちら。美術館内の描写たっっっぷりで、美術好きにはたまらないないようになっています。 日程表をみたらほぼ毎日、一件以上の美術館や博物館を訪問しててバイタリティがすごい! (私は旅行先でたくさん歩き回ると次の日ヘトヘトになってしまい、ホテルの近くでのんびり……というのがお決まりなので尊敬してしまいました) 絵画の前にベンチが設置してあったり、スケッチが自由だったりフランスの美術館、素敵…! 警備の人に鞄の中のぬいぐるみを見られるシーンでほっこりしました♫ ふらふら一人旅の続編楽しみにしています! https://note.com/_some/n/n959ac2c9e4c4素敵すぎる1ヶ月パリ生活♫ #1巻応援フランスふらふら一人旅 パリ・アパルトマン生活編 にしうら染ぺそドミトリーや民泊ではなくパリにお部屋を借りて1ヶ月滞在する様子を描いた旅エッセイ。2冊あるうちこちらは「計画・空港(羽田)・機内食・滞在中・帰国」と、旅の全行程を描いたものになります。 たしかに1ヶ月滞在するなら自炊したほうが経済的…とはいえそれを実行できるのはすごい! 買ったフルーツの味が予想外でサラダに使うというシーンに旅の醍醐味を感じました(予想外のトラブルを工夫でなんとかするのは旅ならではの楽しみですよね) にしうら先生が描くご飯や街並みや人々がとても細かく可愛らしく、見ててキュンとしました…! また最初の方に登場した「旅に持っていったもの一覧」がイラスト付きで非常にわかりやすくて、これをスマホに用意しておけば長期海外旅行の準備は完璧じゃないか…!と感動しました。今度海外に行くときに使います!(いつになるかはわかりませんが) 「パリには19世紀に設置された公共の水飲み場がたくさんある」というのを初めて知ったので、次にパリに行ったら(いつになるかはわかりませんが……)ぜひ探してみようと思います♫ https://note.com/_some/n/n868ba0c59f25未来のBLは性転換の夢を見るか?親友のちんこがなくなりました。 なめたけあうしぃ@カワイイマンガなめたけ先生のTwitterで新たに発表された近未来性転換BL……なのか? 親友がちんこを取ってきて、付き合う事になる。異性に疲れた主人公と、ゲイという訳では無い親友。その実験的な関係から、どんな感情が生まれるのか……先行きは未知数!続き読みたいよ〜なめたけ先生! 第1話 https://twitter.com/nametakesantaro/status/1360136925961547780?s=21Twitter連載を追いかけるスレ(なめたけ先生をフォローしよう!)フォロワー10万人いったら彼女が風俗やめる話。 なめたけあうしぃ@カワイイマンガこちらは『スーパーノヴァはキスの前に』『年下の先輩ちゃんには、負けたくない。』のなめたけ先生が、Twitterで連載している漫画です。 内容は、売れない漫画家のレンくんが、風俗で働く彼女のマサコちゃんに「フォロワー10万人いったら仕事辞めて欲しい」とお願いするというもの。 しっかりした彼女に手玉に取られる感が面白い作品です。また、風俗産業への偏見などのない、だからこその様々な葛藤や、性風俗のリアルをライトに読める作品でもあります。そして衝撃の第2話……! 作品のモーメントへのリンクはこちら https://twitter.com/i/events/1261679995069493248?s=21 そして1話ごとの感想も繋げて書いていきたいと思います。(皆さんも感想書いて!) 一番言いたいことは……なめたけ先生のTwitter垢をフォローしよう! https://twitter.com/nametakesantaro?s=21今夜は誰がやって来るのか夜の訪問者 キューライス野愛一人暮らしの男のもとに、毎晩いろんなものがやってくる話。 象とかきなこ棒とか盾とかしめ鯖とか歩道橋とか。 追い返したり、一杯やったり、基準がよくわからなくておもしろい。 今日はどんなものが来るんだろうとワクワクしながら読めます。 キューライスさんの世界観、すき。Kindleでしか読めないのがもったいないインコンニウスの城砦 野村亮馬名無しこの作品、Kindleでしか読めないのがもったいないなあと思います。 絵柄といい、ストーリーといい、紙の本で読みたくなる魅力がある漫画です。 紙の出版は難しいとは思いますが、何らかの形で本にならないでしょうか。 そうすれば本棚に置いて、たまに読み返せるのだけど。焦ったい恋の時間制限(と、後押しする仲間)歳下の先輩ちゃん2 なめたけあうしぃ@カワイイマンガこの作品は、なめたけ先生の『年下の先輩ちゃんには、負けたくない。』の続きであり、一応の終着点です。 ホームセンターを舞台にした、仕事の出来る女子高生先輩ちゃんと、気後れして敬語を使う後輩大学生の焦ったい恋物語は、一巻通してほんの少ししか進展しませんでした。 このジリジリした攻防のトキメキと、バイト仲間の楽しそうなやりとりを、ずっと見ていたいと思いましたが、彼らにはタイムリミットが待っています。 大学生の坂上は就職、高校生のかをりは進学……バイトを辞めればもう会うこともない関係。バイト以外の互いの世界も知らない二人。 時間制限の中でもなかなか前に進めない、二人の焦ったさを眺めているのも良い。けれどもきちんと気持ちを確かめ、勇気を持って相手に向かう時の高揚感たるや!時間と仲間に押されて進む恋の、一応の到達点を是非確かめて欲しい! ---余談--- それにしてもこんな二人、側にいたら見守りたくなります。坂上とかをりを見守る女子高生の若菜と新大学生の間中、さらに新加入の即戦力君なども、いつも一緒に働きながら二人をからかい、共に遊んだりしているのは、楽しそう。 中でもずっと見守って来た若菜。当初から二人を見守っていたこの女の子については、言葉を尽くしたい。 彼女のポジション、何気に楽しいです。気の合う仲間たちとワイワイしながら、仲間内の恋路を応援して、進展があれば心温かくなり、喧嘩すれば心配し……こんな時間がずっと続けば、なんて思ったりするかも(まあ、経験に基づく妄想ですが)。 最後の時間の、若菜の情動について、すごく分かってしまったというか、気持ちを共有してしまいました。泣きましたよ、ええ。 テキトーで時給以上働かない、でも明るくて仲間思いな若菜に……恋に落ちました(ポッ藤原×竹熊×大塚からの「お詫び」BUYO BUYO 藤原カムイ影絵が趣味藤原カムイの最初期の短編集『BUYO BUYO』には『おいね』という漫画史上類まれな作品が収録されている。1983年発表の本作は、作画に藤原カムイを置き、原作を竹熊健太郎が務め、編集を大塚英志が担当している。つまり、のちに漫画界をあらゆる意味で席巻することになるこの三人が連名で共作しているということがまず類まれである。しかも、藤原と竹熊においては共に誌面でのデビュー作であり、大塚にいたっては大学を出たばかりの新米編集者として本作に携わり、まだ大塚英志の名前すら世には出ておらず、大塚某の名で本作に登場している。 ここでいう連名の共作に、作画の藤原と原作の竹熊の名があがるのは当然として、編集の大塚の名があげられるのは少々お門違いなのではないか、と思われる方がいるかもしれない。なるほど編集とはあくまでも裏方であり、作者の側とは明確に区別されるべき存在だ。ところが、裏方たる編集がどういうわけか漫画の物語に全面的に関与してしまうという点において、この漫画はまた類まれである。 1頁目のタイトルで連続大河ドラマと銘打たれた『おいね』は、たしかに大河ドラマっぽい感じではじまるのだが、どういうわけか、たかだか20頁あまりの尺で宇宙規模の物語にまで大発展する。漫画史上ほかに例を見ない「お詫び」なる制作者側からの謝罪文を合間合間に挟みながら、物語はさらに加速度を増していく。 あくまでも物語を引っぱっているのは、メビウス(=ジャン・ジロー)から多大なる影響を受けた藤原カムイの確信的なペンタッチであり、その裏で制作者側のギャグ?が大真面目にメタフィクション的に展開されるという、まさかの二重構造が『おいね』を漫画史上類まれな作品たらしめている。 おそらく、このアイデアの発起人は竹熊健太郎だと思われるが、何よりも頭が下がるのは、竹熊も彼を天才と称してやまない藤原カムイの作画である。彼は、コマとコマとがそもそも繋がっていないということを熟知しており、とにかくかっこいい絵を並べておけばそれだけで漫画を引っぱっていけるということを確信していたのだ。この発想はいかにもメビウス(=ジャン・ジロー)的だと思われる。のちの藤原のキャリアが作画を中心に展開されるのも大いに頷けることなのである。 竹熊はのちに『おいね』のメタフィクション要素をさらに過激にした『サルでも描けるまんが教室 サルまん』で漫画制作そのものを漫画にしてみせ、藤原と大塚は『アンラッキーヤングメン』で再び共作して、それぞれ時代を代表する作品を残している。 ちなみに『おいね』は竹熊健太郎が主催する電脳マヴォでも読めるようである。http://mavo.takekuma.jp/viewer.php?id=449 必読! と言わざるを得ない。<<12>>