ゴシックな舞台で妖怪みたいな子たちが織りなすトンチキ劇場—躯咲マドロミ『カラフルグレー』

『カラフルグレー』

 「あー、命が軽かったり人体損壊がバシバシ出てきたりするような登場人物の倫理観の低いギャグが読みたいなー」って時、ありますよね。そんな時はこれ、躯咲(むくろさき)マドロミ『カラフルグレー』。連載は21年からの『COMIC MeDu』、単行本は7月に1巻が出たばかりです。
 本作の主人公・イリスお嬢様は、ムチャクチャな人体実験やりまくりで「死を統べる者」と呼ばれた異形の伯爵タナトス・フォグ・グランギニョルの長女(養子)。物語は、彼女がメイド派遣サイトで適当に選んだら、なんか知らんけど首から上がないのに生きていて(公開されている最新話までの時点では理由は明かされてません)、雇い主をボッコボコにする悪癖のある武闘派の超絶美少女(自称)メイドであるメアリー・スゥがやってきたことから始まります。

 

『カラフルグレー』1巻12〜13ページより

 

 イリスお嬢様によれば、グランギニョル卿は「人体実験用に街一つの人間全員使った」といういくらなんでもやりすぎな咎によって軍の討伐隊を差し向けられ、全身をバラバラにされたものの死ななかった(人体実験の成果)ので、広大なグランギニョル城のあちこちに体のパーツを封印されたとの由。まあそんな迷惑な人そうなっても別にいいやろと思ってしまうところですが実はこれが大問題、唯一の管理者が失われたことによって、グランギニョル城の心臓部である魔導融合炉が暴走してしまっており、このままではいずれ大爆発して周囲に大被害が出てしまうというのです。残された時間は約3ヶ月。いやほんとは半年あったんですが、イリスお嬢様が「意外とあるな……」と思ってダラダラしてたら半分経っちゃったので……。

 

『カラフルグレー』1巻16〜17ページより

 

 そういうわけで、グランギニョル卿のパーツを集めて一回復活させ、魔導融合炉の暴走を止めないといけないのですが、恨みを買いまくってた人だったので、今となっては使用人も辞めるなり寝返るなりしまくってて城内は敵だらけという状態。そんなわけでイリスお嬢様は、メアリーや、ゾンビなメイドのブレア(人体実験の失敗作として放置されてたところをイリスに救ってもらった恩があるので忠誠度100)といった仲間とともに、グランギニョル卿のパーツを求めて城内をドタバタするというのが基本ストーリーとなります。

 

『カラフルグレー』1巻32〜33ページより

 

 ここまでの説明で雰囲気はなんとなく掴んでいただけたのではないかと思いますが、本作はまあヘンな漫画です。舞台などの道具立てはゴシックなようでありつつ、イリスお嬢様をはじめとした登場人物の言動はゆるいというかトンチキで、話はギャグで進んでいきます。それでいて、イリスお嬢様は人体実験の成功者(このためグランギニョル卿の養子になった)としてダメージを負ってもすぐに体が再生する不死(正確には、30万kcalを摂取するごとに残機が1増える、スーパーマリオみたいなストック制。物語開始時点では残機136)なこともあって、スナック感覚で人体損壊は起きます。

 

『カラフルグレー』1巻59〜60ページより
『カラフルグレー』1巻59〜60ページより

 

 各回の展開も、城内の大倉庫にネズミたちによる王国を勝手に建国された挙げ句、

 

『カラフルグレー』1巻123ページより

 

 そこまで行くのに節足動物みたいな足でワシャワシャ動く「城内快速歩行列車」で出かけたりと、なんとも奇妙な味わい。

 

『カラフルグレー』1巻127ページより

 

 最終的にどのようなあたりで話が着地するのかは読めませんが、独特の味が今後とも楽しみな一作です。気になった方は、上記のMeDu公式サイトから1話と最新数話が読めますので、ご確認あれ。

記事へのコメント

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