人気アニメから生まれた松本零士『ダンガードA』 全2巻 続きが読みたいあのマンガ その9

 今回取り上げる『惑星ロボ ダンガードA(エース)』は、東映アニメーションの巨大ロボットシリーズの1作として1977年3月6日から1978年3月26日まで全国フジテレビ系で全56話が放送された松本零士原作の同タイトルアニメを松本自身がコミカライズした作品だ。秋田書店の月刊誌『冒険王』1977年4月号から1978年4月号に連載され、単行本は同社のサンデーコミックスから全2巻で刊行された。

『惑星ロボ ダンガードA』

 ちなみに、テレビアニメ版の平均視聴率は17.1%で、同日同時間にそれまで放送されていた『UFOロボ・グレンダイザー』の平均視聴率20.9%には及ばないものの高視聴率を獲得。今なお人気の高い作品だ。

 アニメの原作を担当するにあたって、松本はこれまでの巨大ロボットものとは違う、独自の世界を創ろうと試みている。巨大ロボット同士がバトルを繰り広げるのはもちろんだが、SF的設定を掘り下げ、さらに、主人公の成長と人間ドラマに焦点を当てたのだ。そのため、アニメ版で巨大ロボット「ダンガードA」が登場するのは第4話。実際の活躍は第11話以降となっていた。

 マンガ版では一層のこだわりを見せ、アニメ版とは異なる設定と展開でストーリーを組み立てている。

 1億7千万年の周期で太陽のまわりを楕円形に回る太陽系第10番惑星「プロメテ」が太陽系に戻ってきた。火と燃える月を従えたプロメテの環境はかつての地球と同じ。地球への最接近を機に、人類は生きるための道をもとめて、プロメテへの移住をめざす「プロメテ計画」を推し進めた。

 しかし、はじめてプロメテ探索に向かった4機の宇宙船は全滅し、その責任は1番機のパイロットであった一文字団鉄に押し付けられ、団鉄はうらぎりものの汚名を着たまま宇宙に消えた。団鉄の名は、デュマの名作『モンテ・クリスト伯』の主人公で、友人に陥れられて監獄島に送られた船乗り、エモドン・ダンテスから取ったのだろう。また、そのキャラクターには、戦争中に日本軍の飛行教官だった松本の父のイメージが重ねられている。

 10年後、団鉄の忘れ形見である一文字タクマは、宇宙パイロットをめざす練習生になっていた。ある日、タクマが乗った練習機が謎の戦闘機の攻撃を受ける。相手は、選ばれたエリートだけをプロメテに移住させ、自らがその支配者になろうとするドップラー総統の一味だった。これを機に、ドップラーは、タクマたちがいるスペース島ジャスダムへの攻撃を開始する。

 ドップラーの狙いは、ジャスダムの地下深くで開発が進められていた巨大ロボット「ダンガードA」を手に入れることだった。ダンガードAは組み立て前のパーツがほぼ完成した状態だったが、操縦するパイロットがいないことが課題だった。

 ダンガードAのパイロットになり、父の汚名を晴らしたいタクマの前に、飛行教官としてキャプテン・ダンが現れる。キャプテン・ダンは10年前の第1次プロメテ計画で破損した宇宙船のパイロットで、生き残ってドップラーの捕虜になったのち、なんとか逃亡に成功したという。ダンからの厳しい指導を、裏切り者だった父・団鉄への復讐心からではないか、と疑うタクマだったが……

 アニメ版では毎回、ドップラーが送り出すメカサタンと呼ばれる超巨大ロボットが登場するが、マンガ版では宇宙船や宇宙戦闘機が登場するだけ。ダンガードAも、ドップラーを揺動するための偽物と、宇宙船形態のサテライザーとして登場するだけだ。

 クライマックスは、捕虜になったタクマを乗せてプロメテに向かうドップラー側の宇宙船とそれを追うキャプテン・ダンの戦闘機、さらにその後に続く巨大母艦ジャスダム。さらに、ドップラーの乗る宇宙船という追跡劇が繰り広げられる。キャプテン・ダンはタクマを救い出したが、ドップラーの銃撃を受け、自分が一文字団鉄だったことを告げて死んでいく。団鉄は今際の言葉として、プロメテには姿なき先住者がおり、はっきしりた意思を持つ高等生物で、邪悪な心の人間を見抜き、特殊なエネルギーを使って邪悪なものを滅ぼす、と告げる。

 人類は、プロメテ移住を諦め、先住民に対する友情のシンボルとしてダンガードAを遺し、プロメテを去っていくのだった。ここでようやくロボットの全身が描かれた。

 アニメの放送期間に合わせるという縛りがあったにしても、なんとも唐突な最終回だ。

 そこで、勝手にこんな続編を考えてみた。

 プロメテが地球から離れ長い旅に出てからしばらくして、地球に戻った母艦ジャスダムに緊急無線が入る。送信者はプロメテのキャプテン・ダンと名乗り、プロメテが謎の宇宙艦隊から攻撃を受けていると伝えてきた。

 プロメテに埋葬された一文字団鉄は、プロメテの姿なき先住者の手で再生したのだ。ただし、人類のような実態を持つ生命体のことがよくわからなかった先住民は、残されたダンガードAに団鉄の記憶と意識を移した。団鉄はダンガードAとして蘇ったのだ。

 タクマたちを乗せたジャスダムは、プロメテに向かう。謎の宇宙艦隊はプロメテの燃える月が持つ無限のエネルギーを手に入れ、その力で宇宙を支配するつもりだった。燃える月がなくなれば、プロメテは滅ぶしかない。

 団鉄=ダンガードAにパイロットとして乗り組んだタクマは、父と一体になって強力な宇宙艦隊と戦う。

 ついに敵艦隊の母船を倒し、プロメテに平和を取り戻したとき、タクマは父とともにプロメテに残る決心をする。しかし、父は息子にこう言うのだ。

「お前にはまだまだ地球で経験し、学ぶべきことがある。お前が生きる場所は地球だ。地球がいつまでも美しい星でいられるようにするのがお前の使命だ」と。

第1巻 118〜119ページ

 

 

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