芸術とは現代アートとはにコメントする
ミモザイズム

親の威を借りまくる娘 #1巻応援

ミモザイズム 松尾あき
兎来栄寿
兎来栄寿
「権威への服従原理」は実体験として感じたことがある方も多いかもしれません。シンプルに言えば、人間は権威に対して弱い性質を持っているということです。 本作は、有名な芸術家・花屋敷千雄(ゆきお)の娘であるみもざが父親に似ずまったく技術も才能も無いのに自身を天才であると信じて疑わず、また周囲も明らかに下手なみもざの作品を礼賛する奇妙なシチュエーションを基軸としたコメディです。 守銭奴キュレーター主人公・福沢。 芸術家であることを盾に人間としてのまともな生活も難しいみもざ。 デザイン学科服飾専攻の関西人インフルエンサー山本瑠衣。 拗らせアラサー画廊経営者・旗小次郎。 「マンガはキャラクター」という言葉を体現したような作品で、生き生きとして癖の強いメインキャラクターたちだけで十二分に物語が回っていくのを感じられます。全員、もし現実にいたら友達になるのも厳しそうな面倒くさい性格の持ち主たちですが、マンガで読んでいる分にはそこが良いです。 松尾あきさんの特徴的なオノマトペも、美術がテーマになっているこの作品だと一際ハマっています。 そして、全体を通してネームがとてもスッキリしており、とても読みやすいです。多少長めのセリフがあるシーンでも全然疲れずにスルッと入ってきます。 全ルビなので子供でも読みやすい一方、冒頭のシーンで提示させられる「アートの本質」などのテーマは考えさせられます。 「花屋敷の娘」という、強力な権威をもっているが故に彼女に対して物を言える人が極端に少ない様、また「花屋敷の娘」であると知った瞬間にそれまでの自分の価値判断を忘れて何となく凄く見えてくる様は、コメディとして描かれていて実に滑稽ですが、実は非常に恐ろしいことでもあります。私たちも、意識せずに彼女のような存在を持て囃していないとも限りません。 美大が舞台の名作は近年増えていますが、また少し違った角度から絵がかれる注目作品です。
不揃いの連理

タイトルから見る"伴侶"の形

不揃いの連理
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ
ここではタイトル『不揃いの連理』の語義と内容をリンクさせながら、(6巻までで)四組の女性ペアの関係を追う本作の魅力を書いてみたいと思います。 「連理木(れんりぼく・れんりぎ)」というのは、隣りあった木々の接触した枝や幹が一つにくっつき、木目まで混ざり合った状態のこと。そこから「連理」という言葉は二人の深い契りを表すのだそうです。 幸せな予感のある「連理」という言葉。では「不揃いの」という言葉はどうでしょう? 登場するペアは、いずれも全然タイプの違う二人。そしてどちらか片方、もしくは両方とも「ダメな人」だったりもします。 まっとうな会社員×元不良は見た目に反して、ダメなのは会社員の方。いかにも悪そうな人と優等生のJKコンビは、優等生が意外と暴力的etc……。でもそんな二人が何故か寄り添う。 ではそこにどんな心があるのか。 ある人に惹かれる理由を、言葉で言い表すのは難しい。でも、なぜある人の側にいるかは、理由を言える場合もある。 この作品でそれが分かりやすいのは、ダメな漫画家に接する生真面目な編集者。彼女は恋愛的惹かれの他に、ダメな漫画家を支える動機としての「ある気持ち」を持っている。そして同じようなものは、他の三組にも見て取れる。「ある気持ち」はおそらく頼りない人に対する普遍的な心情なので、納得する人は多いと思います。 「ある気持ち」で支え合い、接するうち、彼女たちはいつのまにか離れ難くなっていく。そこには理屈ではなく、もはや必然として一つになった連理木が生まれている。 伴侶って、こういうことだよな……大きな安心感とエモーションが同居する感じ。実はかなり暴力描写・しんどい内容も多いのにそれはとても不思議な感覚で、いつまでもこの物語を追う動機となってゆくのです。 ダメな人に対する、共通する「ある気持ち」......どんなものか、ぜひ本作から探してみてください。 さあ、まだ不穏な堅物教師×生徒の物語はどうなるかな? (6巻までの感想) (追記:実はマンバ読書会でリアルタイムで書いたものから、細かく改稿しています。どんなふうに変化しているか、ぜひ配信と比較してみてください! https://www.youtube.com/watch?v=FgBPuVvUHFI) #マンバ読書会 #クチコミを書く回
ミモザイズム 1巻
ミモザイズム 2巻
ミモザイズム 3巻
ストアに行く
本棚に追加
本棚から外す
読みたい
積読
読んでる
読んだ
フォローする
メモを登録
メモ(非公開)
保存する
お気に入り度を登録
また読みたい