ファウスト
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ファウスト

ファウストってこんな話だったんだ…

ファウスト 手塚治虫
一日一手塚
『ネオ・ファウスト』を読もうかなと思っていたのですが、手塚は何度か『ファウスト』をテーマにしたマンガを描いていると知って、本作から読むことにしました。 作品の詳細は公式サイトに詳しいです。アニメーションチックなキャラクターデザインや動きはフライシャーなどが参照されているとのこと。 https://tezukaosamu.net/jp/manga/418.html 横長三段の形式で描かれるコマは今の感覚だと読みづらい部分もありますが、こちらもアニメのカメラの感覚を意識しているのかな…など想像が膨らみます。 そして物語の方はなかなか難しい…。正直言ってファウストの言動が破天荒すぎてついていけないところがありました。 気の向くまま欲望の赴くままに悪魔メフィストの力を振るい、メフィストすらも道具として割り切って扱う冷徹さはほとんど悪役。「満足」を知らない彼は暴走を続け、罪なき人を手にかけた段階でようやく後悔し始めます。 もとの老人の姿に戻ったファウストは「満足するための努力」をしてきた自分を誇ります。努力の尊さを噛み締めたことで最高の満足を味わった彼はいよいよメフィストとの契約で地獄に連れ去られそうになるのですが、そこを天使に救われ天国へ辿り着きハッピーエンド。 この「努力」、作中ではさまざまな人への迷惑をかけてきた行為でしかないので、正直ピンとこず…。天使の正体もファウストのせいで死んでしまったマルガレーテ王女だし。 人は迷い過ちを犯すものであり、それを認めたうえで本人の絶えぬ努力(野心)に加えて、純潔の象徴たるマルガレーテの弁明があることで救われる…というのが原典ですが流石に端折り気味なのでは…と思ってしまうところもありました。 とはいえ「ファウスト」が大まかどんな話なのかを掴むのにはピッタリの作品だと思います。児童向けに描かれたというバッググラウンドもあってか、非常に分かりやすいです。 本作を踏まえた上で、次は同じくファウストがモチーフになっている『百物語』も読んでみたいと思います。
不揃いの連理

タイトルから見る"伴侶"の形

不揃いの連理
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ
ここではタイトル『不揃いの連理』の語義と内容をリンクさせながら、(6巻までで)四組の女性ペアの関係を追う本作の魅力を書いてみたいと思います。 「連理木(れんりぼく・れんりぎ)」というのは、隣りあった木々の接触した枝や幹が一つにくっつき、木目まで混ざり合った状態のこと。そこから「連理」という言葉は二人の深い契りを表すのだそうです。 幸せな予感のある「連理」という言葉。では「不揃いの」という言葉はどうでしょう? 登場するペアは、いずれも全然タイプの違う二人。そしてどちらか片方、もしくは両方とも「ダメな人」だったりもします。 まっとうな会社員×元不良は見た目に反して、ダメなのは会社員の方。いかにも悪そうな人と優等生のJKコンビは、優等生が意外と暴力的etc……。でもそんな二人が何故か寄り添う。 ではそこにどんな心があるのか。 ある人に惹かれる理由を、言葉で言い表すのは難しい。でも、なぜある人の側にいるかは、理由を言える場合もある。 この作品でそれが分かりやすいのは、ダメな漫画家に接する生真面目な編集者。彼女は恋愛的惹かれの他に、ダメな漫画家を支える動機としての「ある気持ち」を持っている。そして同じようなものは、他の三組にも見て取れる。「ある気持ち」はおそらく頼りない人に対する普遍的な心情なので、納得する人は多いと思います。 「ある気持ち」で支え合い、接するうち、彼女たちはいつのまにか離れ難くなっていく。そこには理屈ではなく、もはや必然として一つになった連理木が生まれている。 伴侶って、こういうことだよな……大きな安心感とエモーションが同居する感じ。実はかなり暴力描写・しんどい内容も多いのにそれはとても不思議な感覚で、いつまでもこの物語を追う動機となってゆくのです。 ダメな人に対する、共通する「ある気持ち」......どんなものか、ぜひ本作から探してみてください。 さあ、まだ不穏な堅物教師×生徒の物語はどうなるかな? (6巻までの感想) (追記:実はマンバ読書会でリアルタイムで書いたものから、細かく改稿しています。どんなふうに変化しているか、ぜひ配信と比較してみてください! https://www.youtube.com/watch?v=FgBPuVvUHFI) #マンバ読書会 #クチコミを書く回
ごぜほたる

目の見えないホタルが放つ光 #1巻応援

ごぜほたる
兎来栄寿
兎来栄寿
ご‐ぜ【瞽女・御前】 〘 名詞 〙 ( 「めくらごぜ(盲瞽女)」の略 ) ① 盲目の女。〔文明本節用集(室町中)〕 ② 鼓を打ったり、あるいは三味線を弾いたりなどして、唄をうたい、門付けをする盲目の女芸人。瞽女の坊。 瞽女の補助注記 ( ②について ) 将軍や諸大名などの内局に仕えたり、箏、三絃の教授にあたったりする者もいれば、諸藩が盲女の救済、保護策としてつくった組織に所属し、遊芸を講じる者もいた。 『精選版 日本国語大辞典』より 本作は目の見えない小さな女の子のホタルが、瞽女として生きていくようになる姿を描いた物語です。 重篤な病気にかかった母のために、変若水を探し求めて行方不明になった父。 謎の蛇女。 神域の不思議と秘密。 ファンタジー・怪奇要素も交えながら、しかしそれは添え物で中心には人間同士が織りなすしっとりと、しんみりとしたドラマが据えられています。 ″ ずっと唄が下手な人も いつまでも転んでしまう人もいる だけど心さえ開いていれば 誰かと歩くことはできるから 人と生きるってそういうものだから″ という1話に出てきたセリフを読んで、ああこのマンガはとても手触りが良いなと感じました。 人生の先達であるおユキさんらがホタルを厳しくも優しく導いていく様子がとても良く、 ″ 他人に合わせて自分を作っちゃいけないよ″ といった人生において沁みる言葉をたくさん発してくれます。 そうした周囲の人の支えもありながら、ホタル自身も健気に懸命に奮闘する姿が堪りません。瞽女の中でも秀でた存在に与えられ特別な権利を得られる弁天塗香を目指して、ホタルは邁進していくことになります。 最新話では公称である「和風音楽冒険ファンタジー」の音楽の部分も素晴らしい演出をされていて心が湧きました。1巻を読んで気に入ったら、そのまま最新話まで読むのも良いと思います。 絵柄も相まって『ジャンプ+』らしさはもとよりメインストリームにある作品ではないですが、私はこういうマンガが存在し、読まれ、愛されることが素晴らしいと思います。解りやすい派手さはなくとも、岩陰でひっそりと咲く花のように美しい物語です。
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