吉川きっちょむ(芸人)
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2021/09/24
ネタバレ
ツチノコ博物館がある島に転勤したスーパーの店長が婚活を…?
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ユーモアが漂う少し変わった離島の日常。 東京から地方の島にあるスーパーの店長として転勤してきた主人公・村田が、急にバイトの女子高生にあることをせがまれ…。 https://ebookjapan.yahoo.co.jp/books/652297/A002687206/ 「ツチノコを追う美人な姉」とか、「島で一番大きいちくわ屋さん」とかクセになるユーモアが大好きです。 現在、2話まで公開されているのですが、公式のあらすじが無料公開の1話以上の情報が思ったより書いてあるのでネタバレされたくない人は注意です。 河野別荘地さんは微妙にありそうなリアリティラインを描くのが非常に上手な方なので、本当にこういう島があってツチノコ博物館があってそこで暮らしてる女子高生の妹と美人な姉がいるんじゃないか?と思いたくなります。 ~~みたいな、という言い方は失礼かもしれませんが、小田扉先生のような日常に潜むユーモアをほじくり出すのがいいなあ!と思いました! 例えば2話で、 朝、窓を開けて外を見ながら姉が 「いい天気ねぇ ツチノコも今日は巣から出て活動してそう」 というセリフ。 なんかもう面白いですよねー。 ガチでそう思ってるのか、そう思いたがっているのか現段階では分かりませんが、発想がツチノコに寄り添ってるんですよね、この人。 ちょっとだけ狂気入ってない?っていう。 あと、島にちくわ屋が多いという情報もなんか、面白いというか、漁獲量あって練り物の加工が盛んなのかなというバックグラウンドに想いを馳せられるんですが、それ以上に狭い島にちくわ屋が多いってそんな需要あるの?っていう部分もなんか面白いですし、2話目では「島で一番大きいちくわ屋さん」のせがれが訪ねてくるわけで、なんか目に見えない速さの面白さを細かく連打されてる気分になるんですよね。 狭い島っていうのも、「あと一人社員ほしいけどこの島の人口じゃ難しいか」と1話でさりげなく言ってるあたりにさほど大きくないのかなと想像させてくれるのが上手いですよねー。 この時点でもうめちゃくちゃ好きです。 メインは主人公とこの姉妹のこじれそうな恋だったりツチノコの何かなんでしょうけど、この先どうなっていってもきっと好きです。 楽しみ~
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2021/09/10
妙なリアリティのある奇妙な鳥人間と居候コメディ!
めっちゃくちゃ好きです!! 中学一年の鴻田新(こうだあらた)が学校からの帰り道に出会ったのは腹をすかせた奇妙な人型の鳥みたいな人語を話す生物・クジマ。 聞くところによるとロシアから来たという。 日本食が食べたくて来たというが…。 いろいろあって翌年の春にロシアに帰るまで住むことになったクジマと鴻田家のホームコメディ! https://gekkansunday.net/work/4466/ 1話あたりそこまで長くない話で、寒くなると日本に来て暖かくなるとロシアに行く渡り鳥みたいなやつに居候されるっていう奇妙な設定が素晴らしくハマって面白いです! 奇妙な鳥ってだけでも面白いのに、ロシアから来てるからロシア語話せるしロシア料理作れるし、たまに外国人みたいな「分からないデス」みたいなとぼけ方を入れてきたり、ブチ切れるとロシア語で罵倒したりともう、面白い! 単純にロシア人の留学ものとして見てもいいのかなって思ったら、最悪、虫食べて生きていけるっていう、それはもうマジで鳥じゃんっていう部分も垣間見せたりでクセになる! 紺野アキラ先生、いままで読切も漏れなく全部面白かったので、連載始まって本当に嬉しいです! ホラーも面白かったので、この鳥にも少し怖さがある気もしますが、ホラーとコメディって表裏一体なので楽しみです。
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2021/09/08
テンポよく死ぬスレスレを生き続ける主人公がアツい!
どんどん次が気になって読んじゃうテンポの良さ! さすがピッコマ、つい課金したくなる作りになってますねー! ゲームっぽいダンジョンに強制転移させられた元プロゲーマーの主人公が、ヘルモードを選択してしまったばかりに生存率0.01%の死にゲー設定の中で何度も死にかけながら命からがらトライ&エラーでゴリ押ししていく! https://piccoma.com/web/product/71905 転移ですし内容も読みやすいので「異世界もの」が好きな方にはざっくりと相性がいいんじゃないかと思うんですが、序盤までの感想で「俺TUEEEもの」じゃなくてちゃんとピンチで死にかけるようなハード目な作品が好きな方にはオススメかなと思いました。 プロローグから読みとれることがいくつかあって、その中でもとりあえず主人公は60階まではどんなに死にかけても死なないと安心して読めるのがいいですね。 そして、イージーやノーマル、ハードモードには他にたくさん人がいて、どうやらクリアして情報を現実に持ち帰っている人たちがいると。 読み進めていくと真偽のほどは分かりませんが、わりとすぐクリア条件らしきものの情報は出てきます。 ただ、他のモードならともかく「ヘル」の場合は死ぬほど難しいわけです。 プロローグ時点で81期になっている。1期分が30日なので約1か月。 つまり主人公はこのチュートリアルのダンジョンの中に6年と9か月いるということに。そもそも現実と時間が同じスピードとは分かりませんが。 そもそもここでいうチュートリアルとは? チュートリアルをクリアしたら現実に戻れるってことは、帰る現実もやばい状況になってる? このヘルモードのチュートリアルをクリアして帰れば無双できるのでは? と、いろいろ考えるの楽しいですね! とにかく死ぬ一歩寸前まで鍛え続けないとガチで死んでしまうモードで、ゴリゴリに削られながら必死に邁進する主人公を、安心しつつもハラハラ見守るのが楽しいです。 次の階層はどんな形で殺しに来るんだろう、と。 週一の火曜更新が楽しみになりました。 タテ読み漫画、縦スクロール漫画、ウェブトゥーンなどまだ一つの名称に日本では定まっていない感じはありますが、韓国、中国の手法を取り入れて、ピッコマやLINE漫画を中心によく見かける気がしますし、(自分の観測範囲では)日本発のものも増えてきてますね。 縦で読むようになれば、日本式漫画だと右から海外だと左から、という様式の違いをクリアできるのも利点ですし、スマホサイズで読むときに文字が多きくてフルカラーでどんどんスクロールできてテンポよく非常に読みやすいです。 だからこそついつい課金して先読みしてしまうような形にマネタイズしてるのが素晴らしいです。 無料公開から先に何話分も先読みのストックありますもんねー。 スマホの形はwebページやTwitterなども含めスクロール前提で作られてるので相性ばっちりです。 ウェブに最適化された漫画ってことでウェブトゥーンなんでしょう。 ピッコマではSMARTOONと書いてあるので、スマホ向け漫画を謳っているということでしょうか。 こちらの作品は作画の方が日本名ぽかったので、日本発なのかと思ったら原作が韓国のものですし韓国が先出しだったようです。 原作小説は完結済みで23巻。 もしかしたら『俺だけレベルアップな件』レベルで月間1億円の売り上げ叩き出したりするかもしれませんね。
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2021/09/07
サバイバルに錬金術が加わることでさらに面白く! #1巻応援
敵国の捕虜と、料理人と錬金術師が力を合わせて無人島サバイバル! https://comic-days.com/episode/3269632237329614255 軍の飛空艇が被弾し無人島に墜落。 生きていたのは、錬金術師と料理人、そして乗せていた敵国の捕虜の3人だけだった。 ここで料理人のジンは3人で協力して無人島をサバイバルすることを提案するが、錬金術師のニコは、敵国の兵士タクミと協力するのには抵抗感があり…。 「ファンタジー×サバイバル」という切り口ってたまにあることはあるんですが、焦点が違うところに定まってて、この漫画みたいなテーマではないんですよね。 よくあるものだと異世界ものが多いんですけど、結局魔法が使えたり、食材を簡単に用意できたりで、要はリアリティの線引きがかなりファンタジー側に寄ってるんですね。 それが悪いわけじゃなく、それはそれで気軽で楽しいです。 そして、この『錬金術無人島サヴァイブ』ですが、かなりリアル寄りのサバイバルの話で、そこにスパイスとして錬金術というファンタジーが乗っている。 さらに言えば、無人島でサバイバルの素人が生き抜くために「錬金術」という要素が生死を左右するポイントでもある、というのがポイント。 世界観は、「錬金術」がある以外は、食材や素材なども我々の現実と近いところにあるのでファンタジー要素は少なめです。 この作品でいう「錬金術」がどういったものかというと、すでにある素材の「分解」→成分の「抽出」→想定した物の「形成」という手順で実行される。 なので、無から有を生み出せるわけでもなく、素材に対する知識や形成するもののイメージがはっきりしていないと上手くいかない。 この作品内で上手いなというのが、それぞれの職業や関係性や能力の描き方。 例えば、錬金術師のニコは能力はあるけど、「形成」のイメージがあやふやで上手くいかない。 敵国の捕虜のタクミは、大工だったので設計図を書ける。 設計図を見て、明確なイメージがあれば、今まで上手くいかなかったニコの「形成」が上手くいく。 そして工具ができたらタクミによるDIYが炸裂する! でもニコとしては、非常事態とはいえ、自分の家族を爆撃で殺した敵国のパイロットと協力するなんて、という葛藤あるわけです。 そこを誰にでも平等な料理人のジンが二人を繋げたりしますし、食と医療が近いのもジンはかなり重要なポイントですよね。 錬金術もニコの能力による制限があって、ある程度より質量が大きいものは無理だったり、やはり何でもありじゃないのがいいんですよねー。 大きいものもできたら船作れちゃいますもんね。 そんな様々な事情が絡み合って、いろいろなものをDIYしながらサバイバルが進んでいくのです。 単純に面白い! これからも楽しみにしてます!
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2021/09/03
満足度も完成度もめちゃくちゃ高い読切! #読切応援
女の友情とSFで、部屋の中の会話劇でここまで魅せてくれるか! 初投稿、初受賞作にもかかわらず非常に話の完成度が高く、こういった賞でなく普通に雑誌にポンと掲載されていても目を引くような素晴らしい内容でした。 読後感はしっかりプロの犯行といった気分です。 https://comic-days.com/episode/3269754496432828238 タイトルなんだっけ、と思ってしまうくらい関係ないようなスタートかと思いきや、話が転がっていくとあれよあれよとまさに本題はそこに行きつき、タイトルを経由して、扉絵に着地するというようなハッとする内容でした。 読み終わったらもう一度、扉絵を見てほしいです。 高校生のとき、互いに友達もできず独りぼっちだった二人の女子がなんとなく接近しなんとなく話すようになったそんな二人が、高校卒業から7年ぶりの再会。 互いに違う道を行き話すこともなく気まずくなるかと思いきや、話せば話せてしまう。それが友達。 互いの仕事の話をするとかたやシェフ、かたや博士課程で研究。 研究内容を聞いていくとなんとタイムマシンに関わっており…。 高校卒業後フランスの料理修行に行くほど行動派な友人の「バックトゥザ南北朝 足利尊氏にブイヤベース食わせてくる」の台詞のセンスは最高っすね! タイムマシンに対しての発想の転換というか、未来にしか行けないというのはわりと現実的な話ではあるのでいいとして、自分ではなく物を送って「鮮度をそのままにする」というところが味噌ですね。 具体的にこの世界にタイムマシン技術が根付いて開発されているっていう地味なリアリティがあって話が前に進みます。 そして食事という人が生活を送る上で最も日常的なところへ落とし込んでくるという。 はー、素晴らしい。大好きです。 ふと思ったのですが、突然訪れる友人の方ではなく、主人公の方がタイムマシンの研究しているっていうのがあまりない形なのでとてもいいですね。 我々読者側にとって突飛なことがいつも来訪する側とは限らない。 というか、突飛なように描かずあたかも普通のことのようなテンション、温度なのがとてもいいですねー、友人は驚いてましたが。 まだTwitterに載せた漫画を全部は読めていませんが、片っ端から読んでいこうと思います。 毎話バズってますし、そのうち書籍化の話来そうですよね。 ひょっとしたら今回のモーニング月例賞で箔がついて、とかもあるかも。 https://twitter.com/i/events/1060516123316121606
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2021/09/03
モーニングの月例賞のレベルの高さを見よ! #読切応援
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超よかったっす!!! なんで佳作?もっと高い賞あげてもよかったのでは?と思ってしまいますが、雑誌編集部なりの方向性や判断基準があるんだろうな、というところで。 https://comic-days.com/episode/3269754496432828231 寝坊した女子高生のまどかが、大急ぎで学校へ向かうがその方法が…!? 不思議な と、なんともあらすじをネタバレせずに上手く言語化して語れないような内容になってます。 一部ショッキングな内容も含まれてるかも? そこが!とにかく!すごいところでもあるのです! 目の前に分からないものが次々に差し出されたとき、人間ってなかなか飲み込めなくてその場で考えて止まってしまったり、読むのをやめてしまう人もいるかと思うんですけど、ですけど!するするっと読まされてしまうというか、分からないけど感覚で分かるような気がするというか、取り急ぎ一度読んでみてほしいです。 なんとなく言いたいことは分かるかと。 とりあえず言いたいのは、お母さんグッジョブです! いろんな意味で読み終わったらあともう一度読みたくなります。 そのとき、あー!ここで!という部分と依然として分からない何かに包まれたものがあったりなかったり。 でも、その分からなさが心地よいんですよね。妙に腑に落ちるという。 全部分からなきゃいけないわけじゃないんです。 にことがめ先生、超期待の方なので過去作で読める『天使の研修期間』も読むのオススメしておきます! https://tonarinoyj.jp/episode/3269754496427567251
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2021/07/23
やさしさと笑いでほっこり癒されました #読切応援
可愛らしいキャラたちの優しさにあふれる言動やふふっと笑ってしまう状況にほっこり愛おしい気持ちになった読切です。 オチもよかったです! 朝、学校に行ってない少女のもとへ同級生の男子がやってきて、今日の給食が「エッグベネディクト」であることを告げ、登校していきます。 そこから「エッグベネディクト」を知らない少女は、それは一体どういうものだろうと考え、お母さんに聞いたり、辞書で調べたりして、空想を膨らませ…。 『なかよし×コミチショート漫画大賞』大賞作品に輝いた都会先生の『エッグベネディクト』はこちらから読めます。 https://comici.jp/articles/o/50328/ こんな賞があったことを知らなかったです。 https://comici.jp/articles/amp/56336/ これを読んだとき、実は自分自身も「エッグベネディクト」の名称は知ってるけど、食べたことないのでいまいちどういうものなのか分からない状態で読んでいたので、主人公の気持ちに非常に近いところから読んで一緒に楽しむことができました。 なんか、卵を使ったおしゃれな料理でしょ?っていう。 一緒に考えてたんですが、それでもやっぱり小学生の自由さには適わないなって気持ちになりましたし、笑っちゃいました! お母さんもいいし、友達もいいし、大好きな漫画になりました。 この漫画の読者層のターゲットって「なかよし」の賞なので小中学生の女子だと思うんですが、見事に目線をそこに合わせてて言葉選びとかのちょうどよさもすごいなって思いました。 「不登校」とか「引きこもり」っていう言葉を使っていないのが本当にありがたいなって思いました。 都会先生本人の様々な経験があってこそなんでしょうね。 いろいろあって学校に行ってないことってそこそこ重要なことだと思うんですけど、冒頭でさらっと触れてからは特に重く描いてないのがいいんですよね。 登場人物の誰もがそれを特別なこと、いけないこととして扱ってない。 同級生の少年もただ学校に来てほしいなってやさしさだけ。 ほんとやさしいなー。癒されました。 そしてそのやさしさの中に異様な姿で浮かぶ「エッグベネディクト」の図ですよね。最高でした。 こういうやさしさの中に少しの毒や異物感みたいなものがあると際立って面白いので大好きです。 全体的にいつなのか年代の分からなさもいいなーって思いました。 これで連載してほしい。
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2021/07/19
ネタバレ
歴史に残る藤本タツキ渾身の読切 #読切応援
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日本中の漫画家や創作に携わる人に激震が走った143ページの読切。 この感想は、この作品以外にも引用元と思われる映画のネタバレも含まれるので、ご注意ください。 いまだかつて見たことがないタイプの漫画家マンガであり、ガールミーツガールで、話自体がめちゃくちゃ面白いのに加えて、細かく散りばめられた元ネタを考察するとさらに深いところまで仕掛けが考えられていることに驚きます。 https://shonenjumpplus.com/episode/3269754496401369355 あらすじ 小学4年生の少女・藤野が学年新聞の4コマを担当し、同級生たちから絶賛されていたある日、先生から4コマの枠を1つ不登校の京本に譲ってやってくれないかと打診される。 次に載った京本の4コマは、漫画にはなっていないが強烈な絵の上手さで藤野のやる気に火をつける。 藤野はそれ以来、友達とも遊ばず来る日も来る日も絵の練習をするが、なかなか追いつけず…。 読むと、まだここから展開するのか、という思いと、あっという間に終わってしまった、という思いが溢れました。 読み終わったあとは、涙が溢れていろんな感情がぐちゃぐちゃに混ざって大変で、脳内をぐるぐる駆け巡り眠れなくなってその後は何も手につきませんでした。 様々な媒体で1年に数百本読切を読んでいますが、近年でこれ以上の読切作品は見たことがありません。 少女が天才に出会って挫折を経験し、ともに漫画家を目指していく話でありながら、それだけでは終わらないのがこの漫画の見どころ。雨の中、田んぼのあぜ道で踊る場面までですでに傑作です。 しかし、なんて感情をエグる漫画なんでしょう。 藤野は絵の上手さで京本という天才を努力を重ねても越えられず、挫折し筆を折りますが、その後彼女はどうあっても漫画を描いていた、ということが創作者の強さであり、そんなんじゃ創作の火は消せないよと言ってるようで強く背中を押されました。 何より、絵は京本より上手くなくても学年新聞のその4コマの内容がちゃんとすごく面白いのがまた説得力になっていて、同級生は絶賛するんですが、小さい一言の「京本の絵と並ぶと藤野の絵って普通だな」という否定の言葉が強く刺さるんですね。たくさんの賞賛より一つの否定がきついんです。 ところがどっこい、自分が勝てないと思った相手・京本は逆に、4コマの面白さの内容的に勝てない、自分のことを尊敬してい天才だと思ってくれていたファンだと分かるわけです! こんなん雨の中だろうが踊らないわけにはいかないでしょう!すべての否定がぶっ飛びますよ!最高最高最高! その後の展開は「追悼」であり、「フィクションで現実をぶっ倒す」という表現でもあるんですが、同時に「あり得たかもしれない現在、未来」という永遠のテーマを描いています。 昔からSF小説や映画、漫画、様々なメディアで使われてきた普遍的なテーマですが、藤本タツキ先生流に噛み砕いて提供するとこうなるのか、これがいま日本の漫画家の先頭を走る「背中」なのかと思わされます。 また、社会的な文脈や先生の過去作、映画などの前提知識無しで読んでもこれだけ面白いのに、細かな仕掛けを考察するとこんなにも思考が張り巡らされているとは…と驚かされます。 『チェンソーマン』でも使われた手法で事件を描く際の演出のリアリティと、その現実を乗り越える爽快なファンタジーの繋ぎ方が素晴らしかったです。 個人的に好きなのは139ページの、藤野が京本の部屋で、京本がずっと自分の「背中を見て」いてくれたことが分かり楽しかった過去がフラッシュバックしながら自分が描いた「シャークキック」11巻を泣きながら読むシーン。 泣きながら読んでるのでページにも涙が落ちているんですが、11巻のラストページに時間が経った涙のシミがあります。 これは、長時間そのページで手が止まっていたとも考えられますが、かつて京本がこのページを読んでいたときに流して染みこんだ涙だったのではないでしょうか。目指す道は違えども、ごく最近まで読んでいてくれてたんじゃないか。その前のセリフであるんですよ子どもの頃の。漫画を描くのは好きじゃない、楽しくないしめんどくさいし地味だし、描くもんじゃないよと。「じゃあ藤野ちゃんはなんで描いてるの?」に対する回答はセリフでは書かれません。そういうことなんですよね。そこからのページがすべてを物語っています。最高です。だから描いてるんです。 ラスト11ページはセリフはないのに雄弁に語ってくれているんですけど、こんな芸当ができる作家さんほとんどいないんじゃないでしょうか。 作品を読めば分かりますがタイトルである『ルックバック』にもたくさんの意味が込められています。 「過去を振り返っている」ことや、たくさんの場面で登場する印象的な彼女らの「背中」、また序盤から互いに意識し「背中を追う」構図になっていたり、漫画の「背景」だったり、あの4コマだったり。 ストーリー外でいうと、藤本タツキ先生の『ファイアパンチ』や『チェンソーマン』からの引用という自らの過去の「振り返り」の要素もあったんでしょう。藤野と京本という名前からすでに藤本先生の過去に二人を色濃く重ねているように感じます。 https://twitter.com/nagayama_koharu/status/1416859245752946688?s=20 具体的には、67ページの「拝啓美術の世界」と、107ページの京本の絵の「扉」が分かりやすいです。 「背景」を描いたアシスタントへの敬意も感じます。 https://twitter.com/nagayama_koharu/status/1416858810472226817?s=20 2019年7月18日、つまり2年前の昨日が京都アニメーション放火殺人の事件の日で、発表したタイミング的にも基本的にはその事件に捧げる鎮魂歌になっているんじゃないでしょうか。 どうやら藤本タツキ先生は京アニ作品が好きなのは、過去のインタビューからも分かります。 https://www.animatetimes.com/news/details.php?id=1469607592 「京本」が襲撃されるのも、そういうことでしょうか。 様々な仕掛けですが、まずは扉絵の次のページの黒板「Don’t 」、タイトルの『ルックバック』、ラストページの床に積まれた本の表紙タイトル「In Anger」 『Don't Look Back In Anger』 これはロックバンド「Oasis」の曲で、2017年イギリス・マンチェスターでのテロ事件のアンセム(合唱曲、シンボル曲)として本人たちに使用された楽曲です。 『Don't Look Back In Anger』は、 「思い出を怒りで塗りつぶさないで」 「怒りにまかせて思い出さないで」という意味。 この作品でも、過去の怒りや悲しみに囚われないで前を向いてほしいというメッセージが込められているんでしょうねきっと。 https://twitter.com/Kazuki17910/status/1416792788415303684?s=20 https://www.youtube.com/watch?v=r8OipmKFDeM また内容的に、「あり得たかもしれない現在」で動く主人公を描く点からも映画『バタフライ・エフェクト』からの影響も濃厚かと思われますし、この映画のエンディング曲はOasisの他の曲『Stop Crying Your Heart Out』が使われています。 個人的に高校時代に何度も見た大好きな映画で、この曲も大好きです。 タランティーノ監督の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』のパロディも分岐点以降全体の展開が重なっているのと、117~120ページの担架が運ばれるシーンが見受けられたり、ラストページの床に映画のDVDっぽいジャケットのものが転がっているところから分かります。 この映画は、実際に起こったハリウッド女優のシャロン・テートが、チャールズ・マンソンのカルト的信者によって惨殺された事件を入念に描き出して、最後の最後、犯人がシャロン・テートを殺そうとするところから犯人を爽快にぶっ倒して勝つという、クソみたいな現実をフィクションで殴り飛ばす、この事件へのカウンターであり鎮魂歌だった映画です。 4コマの切れ端が京本の部屋に入って「幽霊?」というシーンは映画『インターステラー』でしょうか。 この『ルックバック』内での美大での事件の場所のモデルは、藤本タツキ先生本人の出身校の「東北芸術工科大学」ですね。 建物もそうですし、ラストページの床に積まれているパンフレット?の「TUAD」からも分かります。 ネットに上がっている考察も含めて参考にしてここに書いてますが、まだまだ見つけられていない隠されたメッセージもあるかもしれません。 『ルックバック』はこの後の人生で何回も読み返すことになるでしょう。 本当にありがとうございました。 そして、『ルックバック』を含んだ短編集かな?がすでに9月3日(金)発売予定です。 https://books.shueisha.co.jp/items/contents.html?isbn=978-4-08-882782-7
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)
2021/07/05
ネタバレ
続編だけどここから誰でも読めるし、前作も大好きだから最高です!
この作品のあらすじにも書いてありますが、少年マガジンエッジ(講談社)で連載していた『うちのクラスの女子がヤバい』のまさかの続編が4年越しにトーチで復活とは! http://to-ti.in/product/erisawa 新任教師が教室に入ると、クラスにいっぱいいるはずの生徒はすっからかんで、機械の猫頭の女子高生?だけいて、これは一体!?え、30秒前に全員消えた?という始まり方で、一瞬で心を掴まれます! 猫端末でリモート授業を受ける引きこもり生徒とともに生徒たちを探し出す第1話。 そして何に驚いかというと一話公開時、衿沢世衣子先生の新連載でタイトルは明かされておらず、単純に楽しみだなーワクワク、と思っていたら、これがまさかの続編だったと分かるのです! 元々の作品を知っていた人はテンション上がりますし、前作を知らなくても話として面白いので惹きつけられる内容になっていて、前作を読みたくなります。 思春期の女子にのみ発現するあまり役に立たないささやかなで変な超能力、通称・無用力。 そして、このクラスは無用力の女子が集められたクラスだった、という話です。 ときには迷惑だったり、たまに役立ったりもするこの無用力ですが、前作の印象でいうとこの無用力をメインで話を運びつつも、あくまで生徒個人個人の事情だったり、思春期なりのよくある悩みに寄り添った話になっていて、無用力も少し人と違う個性の一つという感じで描写されていて「多様性」を早くから描いていたように思います。 そのあたりのバランス感覚が非常に好きな作家さんなので、これからの話も楽しみで仕方ありません!
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)
2021/07/01
ネタバレ
美少女(おじさん)×危険地帯×ノンフィクション×グルメ!
『鍋に弾丸(たま)を受けながら』 というタイトルからなんとなく伝わるハードさですが、内容もまさにそのもの。 「危険な場所にほど美味い食べ物がある」という謎の哲学を持った原作者のノンフィクショングルメレポートです。 ノンフィクションって聞いてたのに、読み進めたら「あれ?おかしいぞ?」とすぐに気づきます。 なぜなら、登場人物が基本的に美少女しかいないからです。 というのも、原作者の青木潤太朗さんが「長年に渡る二次元の過剰摂取」により脳がぶっ壊れたからとのこと。 絶対にそんなわけはないんだけど、あえて乗っかると、どんなにいかついタトゥー入ったおじさんでも美少女に変換され画面の平穏は保たれるという不思議な快感が訪れます。 第1話「マフィアの拷問焼き」 https://comic.webnewtype.com/contents/nabetama/10/ 早速1話目のタイトルから溢れるヤバさ。 メキシコ流に、塩水を吸わせたオーガニックコットンで牛肉を巻いて焚火の中に放り込んだもので、もう、白黒の漫画なのに肉の赤さが見えてくるというか、もうたまらずよだれが出てしまう。 まじで美味しそう…!! このように、危険な場所・状況で美少女(おじさん)がグルメを楽しむ漫画です。 これからも楽しみ~!!
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)
2021/05/19
ネタバレ
銭湯の歌姫が世界を駆けるアイドルを目指す!
漫画アクションの新連載『ひかるイン・ザ・ライト』面白いですね! 松田舞先生の漫画は初めて読むのですが、絵もきれいで読みやすいです。 題材がアイドルで、銭湯で歌っている主人公からが目指すのがワクワクします! 毎日銭湯の掃除しながら歌ってめちゃくちゃ上手な主人公の中3の少女・ひかる、そして大手アイドルグループに入って顔がよくて歌もダンスも上手なのに埋もれてしまい辞めた幼馴染のお姉さん・西川蘭、幼馴染二人が、世界的なプロデューサー主催の新たなアイドルオーディションに挑む! 第1話試し読み https://www.futabasha.co.jp/tachiyomi/vtreader.html?pc=1&fd=ac_hikarulightLR アイドルとはいえ、いま日本でメジャーな人数が多いグループのことを、かわいい服を着せるだけで育てもしないで、いつから顔がいい普通の子がアイドルになれるようになったんだ?的なことを堂々と言っちゃうプロデューサーがいいなって思いました。 アイドルとは、ステージに立つということは”特別な人”であることだと。 そこで主人公のひかるちゃんは歌がめちゃくちゃ上手くて本当はアイドル目指したいけど、思いきれなくて自分には資格がないんじゃないかと思ってるときに背中を押してくれるのが、先に業界を知った近所のお姉さんの蘭ちゃんなんですね。 そのときに言うセリフがアツくてグッときました! 「本物の」アイドルを目指す、というのがどういうものかまだ分かりませんが、これからの展開が非常に楽しみです!
吉川きっちょむ(芸人)
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2021/04/20
ありそうでなかった関係
もう、タイトルの「今日から始める幼なじみ」そのままの内容で非常に分かりやすい帯屋ミドリ先生の新連載。一応ラブコメなのかな? 隣の家に引っ越してきた女の子が、同じ中学、同じクラスでさらに隣の席だから気にかけてたけど、どうも引っ込み思案らしくて、ある日放課後呼び出されて言われたことは「私の幼なじみになってください」だった!? ここで出てくる転校生の女の子と同じく、自分は幼少期から転校が多く故郷すらどこか分からないような感じなので「幼なじみ」がほしいという気持ちが痛いほど分かる……!!! ただ、そうじゃないんだ…! 転校してきて航平くんと隣の家で、部屋が窓同士で向かい合ってて、教室でも同じクラスで隣の席ってなったらもう幼なじみになるしかないでしょってそんなことないんですが、非常にいいです。 と、幼なじみ作りに突っ走る楓ちゃんを楽しみつつ、これって彼氏彼女とどう違うんだ?とドギマギする航平くんでもう一楽しみできてお得です。 おそらく二人はこれから距離を縮めていくわけですが、楓ちゃんはどこの時点から幼なじみも恋人に変わり得るということに気づいていくのか、見ものです。 https://kuragebunch.com/episode/3269632237305143755#
吉川きっちょむ(芸人)
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2021/04/01
ネタバレ
ぼっち女子大生×ギャルの酒と百合な話
作画のzinbei先生好きで商業で連載しないかなーと思っていたら「マンガUP」というスクエニの漫画アプリ内で始まってました。 『ほろ酔い道草学概論』というwebで描かれているお酒の漫画も、土地や歴史を知れていい感じなんですが連載どちらも酒ってめっちゃ酒好き! https://getnavi.jp/category/comic/horoyoi/ さて、こちらの『酒と鬼は二合まで』ですが、 カクテルづくりが趣味のぼっちな女子大生・ナオリと、人前で一滴もお酒を飲まない陽キャなギャル・ひなたが飲み会で出会い、倒れたギャルを介抱するために家に連れ帰るところから始まります。 家に着き、お酒だらけの光景を見たギャルに一杯でいいからお酒を作ってとせがまれ飲ませると、ギャルに異変が起こり…。 これはとてもいい百合の香りがします。 『酒と鬼は二合まで』の「鬼は」を「オンナは」と読ませるあたり、お酒の二合と二人の関係性の百合(ユリ)も「合」が掛かってるし、おしゃれな感じでいいですね~ 少なくともお酒でギャルの胃袋をつかんだわけなので、もう彼女なしでは生きられないのでは、という関係性などもどうなっていくのか楽しみです。 話はまだ始まったばかりなのでどう転がっていくのか分かりませんが、美味しそうなお酒とそれを飲む楽しそうな女の子たちを見て浸っていきたいと思います。