機動戦士クロスボーン・ガンダム ゴースト
何度読み返しても面白いクロボンシリーズ屈指の神作品 #完結応援
機動戦士クロスボーン・ガンダム ゴースト 長谷川裕一 矢立肇 富野由悠季 カトキハジメ
カワセミ㌠
カワセミ㌠
前作にあたる【機動戦士クロスボーン・ガンダム 鋼鉄の7人】から約17年後のUC:153が舞台となっており、あのVガンダムと同時間軸の作品が誕生した事により ・Vガン本編とどう絡ませるのか? ・一応は完結したクロボンシリーズをどう復活させるのか? ・あの名作鋼鉄の7人のハードルを前にどんな作品を見せてくれるのか? 等読む前から様々な疑問や不安そして期待を持たれたガノタや長谷川先生ファンは多かったかと思いますが読めば読む程 ①Vガンダム要素(ザンスカール帝国の組織図やゾロ系MSの魅力に加えリガミリティアとの関わり合い)の取り入れ方 ②再建した木星圏ならびに新主人公フォント君の人間臭さや兄貴分カーティスさん等各陣営キャラの魅せ方の素晴らしさ ③無印~鋼鉄の敷居の広さを活かした旧陣営キャラの再登場やMS類の発展や海賊らしい戦法や武装等読めば読む程ファンが感動や脱帽する場面の嵐が巻き起こる 等々これでもかと言わんばかりの長谷川先生が送る熱量や画力が展開され様々な考えていた感じた気持ちを良い意味で覆した神作品に仕上がっている神作品だと強く実感した作品なんですよね
機動戦士ガンダム THE ORIGIN
モデルを持たない僕達の、たとえ稚拙な芝居でも…
機動戦士ガンダム THE ORIGIN 安彦良和 矢立肇 富野由悠季 大河原邦男
阿房門 王仁太郎(アボカド ワニタロウ)
阿房門 王仁太郎(アボカド ワニタロウ)
2024年3月17日 「また、死ぬよ!」(伝説の大根役者ロバート・コーツの「迷演技」,リーダーズダイジェスト『世界不思議物語』より引用)  安彦良和による表情がコミカルでいいんだけど、一年戦争後期のギレンとかシャアが中々しやがらないんだ、これが。仏頂面や一物抱えた薄笑いばっかりでさも自分等をアレクサンダー大王やナポレオンと思ってるんだろうね。あの芝居がかった態度は。それが大変不気味であるんだが、不気味ゆえに彼らは強い。彼らの心持はナポレオン、カエサルであるからだ、英雄は容赦を知らない、それ故負けも知らない。  それに比べるとホワイトベースの乗組員はケツの青いひよっこもイイとこ。たかが仲間が将軍を尻に敷くと言う粗相をした程度で目を丸くして開いた口が閉まらない。彼らの振る舞いもまた芝居がかってるが、ギレンやシャアと違ってそこには英雄を憑依させた凄みなんか無い。あるのは一身上の苦悩と戦場での生の証を立てようと足掻く青臭さ、それだけだ。  然し、彼らはハムレットやヒットラーを憑依させて何かしらの大物になろうとしているシャアやギレンと違って自分を生きている。彼らが英雄にのめり込み過ぎて自分でも何でもない暴力の化身になり果てているのに対し、ホワイトベースの乗組員はちっぽけな自分でしかないが、それを貫徹していく最中に英雄に届かなくても何かしら自分を語るヒストリーを身に着けた。詰り立場は逆転したのだ、余りにも豊かな教養とバックボーンにより得た資格で歴史に寄り過ぎた男たちは、逆説的に歴史の中での自分の立ち位置を忘れて骸か神か以外の自分の存在を忘却した。これは結局誰よりも歴史と己の対比に自覚的であり、メタ的にシャアやギレンの思想的師となっていたマ・クベが結局不出来な部下一人教育できず、歴史のダイナミズムを意識したアムロたちに敗北を喫した(『アムロ0082』)姿を見ても窺えよう。  『ガンダム』は45年続くロングランのシリーズだ。その中で築き上げられた設定や歴史はとてつもなく膨大で長くそれを専ら漁るファンも大勢いる。然しそのような流れの中に於て『THE ORIGIN』はフラットな設定に紐づいた歴史に異を唱えるように、そこでの「健全なダイナミズム」を描き出す。勿論、これは安彦良和の一存の作品であり、とても「粛清」の域に至らないのであるが、それでよいではないか(安彦もそこまで考えてはいない)。  結局、こういう作品が打切にならず大団円を迎えた辺りに「ガンダム」は恵まれた作品であり、我々はそれを盲信の観念を払拭して健全に引き継がねばならない。これは『ガンダム』の意匠を用いた歴史漫画であり、この歴史に『ガンダム』が含まれているとの告白だろう。 P.S:  或いはジオンが、事故演出家した歴史とするなら彼らはヨーロッパで、逆に自分を規定する歴史を持たず力で押しがちな連邦はアメリカなのかもしれない。然し少なくとも作品の後者には、己を語る語彙を得ようとするチャンスがあるのだ。作品ラストにジオンの残党が連邦で再就職するオチは「何物でもない」余地、ナポレオンでもヒットラーでもないモデルをさがす余地をアメリカに求めた隠喩なのかもしれない。これは余談の通り、根拠の無いトンチキ歴史観だ。忘れてくれて結構。
ハーモニー
幸福は認識を通して存在するのか、認識と独立して存在するのか
ハーモニー 三巷文 伊藤計劃
こば
こば
”人類滅亡の危機を経た、近未来。生命主義が確立し、過度の調和が重んじられる社会に息苦しさを感じていた女子高校生のトァンは、ある日、クラスの中で変わり者とされていた少女、ミァハから声を掛けられる。社会に対して否定的な言動をいとわないミァハに、最初は戸惑いながらも、徐々に惹かれていくトァン。やがてもうひとりの友人、キアンとともに、ミァハに導かれるまま、集団自殺をはかるのだった……。34歳の若さでこの世を去ったSF作家、伊藤計劃の著書を劇場アニメ化する「Project Itoh」と連動したコミカライズ企画。数々の受賞歴を誇る、伊藤計劃の小説「ハーモニー」に、漫画家の三巷文が挑む。「月刊ニュータイプ」連載時より大幅に加筆され、待望の単行本化!” 以前読んだ漫画、久々に読み返した。 合理的な管理社会が行き着く最終地点として、「意識」が不要とされる。確かに意識がなければ、完全に合理的で調和のとれた世界になるのかもしれない。不幸を感じようもない。 でも客観的に見ると、ディストピアにしか見えない。 幸福は認識を通して存在するのか、認識と独立して存在するのか、という議論を思い出した。 https://bc-liber.com/blogs/bf6cbb9b657d https://www.amazon.co.jp/%E3%83%8F%E3%83%BC%E3%83%A2%E3%83%8B%E3%83%BC-1-%E3%82%AB%E3%83%89%E3%82%AB%E3%83%AF%E3%82%B3%E3%83%9F%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%82%A8%E3%83%BC%E3%82%B9-%E4%B8%89%E5%B7%B7-%E6%96%87/dp/404104068X
ふたり暮らしのおとりよせ日和
この鍋はあと2回の変身を残している #1巻応援
ふたり暮らしのおとりよせ日和 柚子桃 司馬漬け
兎来栄寿
兎来栄寿
『めしに導かれしエルフ』の柚子桃さん&司馬漬けさんのコンビによる、新たな飯テロマンガです。 新入社員のみやこが、会社で憧れていた先輩・つばきとルームシェアをするようになるという社会人女性同士のちょっとした関係性もありながら、メインは食に置かれています。 この作品の恐ろしくて素晴らしいところは、紹介されているお取り寄せグルメはすべて実在しており、その気になれば頼めてしまうことです。そして、またすべてが美味しそうに描かれているのですよ。 最初が覚王山フルーツ大福弁才天から始まっているのが個人的にビビビと来ました。ジューシーなフルーツと求肥のもちもちとした食感のコントラスト、そこに乗っかってくる天にも昇るような上品な甘み、堪りません。 「『TAKUNABE』の極上生パスタで〆る国産牛もつ鍋チリトマト味」も大変に破壊力が凄まじいです。ビールの温存の仕方や、付属の生パスタだけでは〆が飽き足らずリゾットもやってしまうあたりは解釈一致です。 大人が楽しいのはね、こういう瞬間ですよね。いくら豪華なご飯でも、ひとりだと食べられる量も限られるし味気ないものです。しかし、気心の知れた誰かとならシェアしながら少しずつたくさん食べれますし、美味しさも何倍にもなります。みやことつばきは、性格的にも生活レベル的にも一緒にいてとても馬が合う感じがいいですね。片方だけがお酒は全然飲めないとかだと遠慮してしまうものですが、そういうこともなくハイボールやビールやワインをどんどん開けていく姿は爽快です。 今年は既に花粉も飛散しており、外に出るのが辛いという同士の方も多いことでしょう。そんなときは、この作品を読んで美味しいものを取り寄せて食べることで気分を晴らすのも良いのではないでしょうか。 グルメマンガに出てくるお店はいつも都会ばっかりでずるい! という地方の方にもお薦めです。
SAWA-元殺し屋の推し活-
推しがいる人生の始まり #1巻応援
SAWA-元殺し屋の推し活- 裏ロジ
兎来栄寿
兎来栄寿
昨日は猫のためにマンションの一室を買い、更には一軒家を建てたマンガ(『借金1000万作曲家の人生を変えてくれた猫の話』)のクチコミを書きましたが、本日紹介するこちらの作品は推し活のためにマンションをビルごと買う元殺し屋のお話です。 作者は『たぬ恋。』の裏ロジさん。画風がスタイリッシュで魅力的です。 20年余りを殺し屋として過ごしてきた主人公・サワは、父親の借金を返し終えてボスから退職金代わりの莫大な報酬と共に自由を得た身。日本のネカフェで住所不定無職として暮らす中で出逢ったのは、俳優の蒼真(そうま)。殺し屋のお仕事を終え、推し事へと目覚めていくストーリーとなっています。 冒頭の殺し屋としての仕事のシーンなどはかなりガチですし、途中で元殺し屋としての緊張感を走らせる場面もありますが、そこと推し活を楽しみ尽くすところの風邪を引きそうな温度差が良いです。推しを推して、初めて覚える感情に戸惑いながらも幸せになる人を見るのは、良いものです。 日本の文化的自体にも疎いサワですが、さまざまなものに新鮮味を感じたり戸惑いながら愚直に郷に従ったりするさまが何とも面白いです。ファンクラブに入るには住所が必要なものの、外国人で部屋を借りるのも難しいのでビルごと買ってしまうエピソードは好きです。管理人室を推しグッズ塗れにして叱られるところはろもっと好きです。 「ファンミ」が何の略かもわからないサワに、さまざまな知識を授け伝道してくれる同担のみずほさんもまた良いサブキャラクター。みずほさんの優しさや、推し活を通して生まれる絆にも大いなる良さが宿っています。グッズが溢れかえって整理整頓がし切れていない人は、みずほさんが語るオタクグッズの収納テクニックが役に立つかもしれません。 1牧の最後のエピソードの引きの強さは最高です。描き下ろしマンガも、本編の隙間を埋める面白い内容です。 推しがいる人は、きっとそこかしこで共感しながら楽しめることでしょう。
死亡遊戯で飯を食う。
彼女がデスゲームに参加し続けるたったひとつの理由 #1巻応援
死亡遊戯で飯を食う。 ねこめたる 万歳寿大宴会 鵜飼有志
兎来栄寿
兎来栄寿
『このライトノベルがすごい!2024』の新作部門1位を獲得した鵜飼有志さんの小説のコミカライズです。 女の子だけで行われるデスゲームですが、通常のデスゲームものと大きく異なる点があります。 多くのデスゲーム系作品では、主人公は自ら望んだものではないゲームに巻き込まれるパターンが非常に多いです(『バトル・ロワイアル』、『BTOOOM!』など)。 望んで参加する場合には、借金返済のためといった理由が多いです(『カイジ』シリーズや『トモダチゲーム』など)。 しかし、本作の主人公・幽鬼は自ら望んで、金銭などのためではなくゲームに参加し続けます。その動機は「99回のクリアを目指す」ということ。デスゲーム自体が生きる目的になってしまったという、バーサーカー的な存在です。 物語の最初に描かれるゲームは幸いにして協力型なので、既に27回クリアしているヘビーリピーターの幽鬼は、いわば仲間として頼りになるスーパー船井。知識もノウハウもある彼女がいればクリアは難しくない……とはいえ、そこは極限状況。次に何が起きるか、誰が裏切るかもわからない疑心暗鬼のデスゲームの醍醐味が描かれていきます。 そこそこハードな描写も出てくるので、苦手な方はご注意ください。 しかし、とにもかくにも作画の万歳寿大宴会さんの絵が大変にお強い! 女の子が全員とてもかわいいです。そんなかわいい女の子たちが、生と死のあわいで表情を歪めていく姿。福本マンガの金持ちの気分を疑似体験できるようです。 既存のデスゲーム作品へのメタ的な部分も含まれており、デスゲーム好きの方、サスペンス好きの方にお勧めです。