岩波現代文庫の感想・レビュー3件もっとアイヌのことを知りたくなるハルコロ 石坂啓 本多勝一 萱野茂starstarstarstarstar_borderかしこ和人に侵略される前のアイヌの暮らしが描かれています。小学生でも読める語り口なので分かりやすいです。アイヌの人々にとって北海道の大自然の中には数々の神様がいるとされていて、それらとまるで親切な隣人のように共存する暮らしは精神的にも文化的にもとても豊かだったんですね。読んでいて感銘を受けた風習がたくさんあるのですがその中でも、アイヌの女性は子供の頃から遊びとして刺繍の図案を練習するので大人になる時には下書きなしで着物に左右対称の刺繍を施すことが出来たというのに驚きました。美術館で実物を見たことがありましたが装飾として美しいだけでなく祈りのようなものが込められていて神秘的なものに感じられました。もっとアイヌのことを知りたくなる入門書としてぴったりです!実際の事件をモデルに描かれた短編集彼らの犯罪 樹村みのりstarstarstarstarstarかしこ樹村みのり先生といえば笹生那実さんの「薔薇はシュラバで生まれる―70年代少女漫画アシスタント奮闘記―」にも登場されていましたが、作品を読まれたことがないという方も多いかもしれません。夏目房之介先生のコラムでは「ジャンルに捉われない作家」として取り上げられていました。 https://manba.co.jp/manba_magazines/25301 私が樹村みのり先生を知るきっかけになったのが、こちらの短編集に収録されている「夢の入り口」という作品です。主人公の友達がカルトだとは知らずに講習に参加してしまい、徐々にマインドコントロールされてしまう過程が描かれています。 他にも実際の事件をモデルに描かれた作品が収録されていて、この情報だけではとても重いテーマの短編集だと思われるかもしれませんが、樹村みのり先生の力量により不快な気持ちにはなりません。ただ「こんな時に私たちはどうすればよかったのか?」ということを優しく問いかけてくださっています。こんな夢を見た夢十夜 近藤ようこひさぴよ「こんな夢を見た」で、有名な夏目漱石の『夢十夜』を漫画化した一冊。怖ろしくも幻想的な10編の夢の物語には、怪談のような少し怖いものもあれば、現実世界と歴史が入り混ざったような話、宗教性の強い話などバラエティに富んでいる。どの話にも近藤ようこ先生の筆致がドンピシャで合っていて素晴らしい。まるで白昼夢のような表現がずっと続くが、あまり意味は深く考えず感じるままに読むのが良いと思う。