山風短
短編のラインナップがエロすぎ
山風短 せがわまさき 山田風太郎
マウナケア
マウナケア
『バジリスク~甲賀忍法帖~』『Y十M(ワイじゅうエム)~柳生忍法帖~』に続く、せがわまさき作画の山田風太郎の忍法帖シリーズで、短編作品の漫画化。単行本一冊に1話収録となっています。しかし…この短編のラインナップ、原作は前2作と比べ、いささか趣が異なるというか、ずばりエロすぎ。漫画化にあたりエンタメ忍術路線から本来の山田風太郎路線によくぞ舵を切ったものだとは思いますが、評価は分かれるかもしれませんね。私は好きですけど。1巻に収められているのは大島山十郎という小姓と上杉家の物語。直江兼続や前田咄然斎(慶次郎)も出てきて賑やかな中、山十郎にまつわる謎が関ヶ原前夜の情勢に関わってくる。発想の飛躍も独創的、忍術も淫靡。幻想的な読後感を与えてくれます。2巻は「剣鬼喇嘛仏」というお話で、宮本武蔵を追う剣豪・長岡与五郎が主人公。秘術にはまりナニがアレを離さなくなってしまい孕むまでその姿で闘うという、コメディ一歩寸前なのですが、ラストにオリジナルエピローグがあり、これが何とも切ない。本編では「小便はどうするのじゃ」なんて言ってたのに…。ちなみに3巻のみ普通の現代劇、と色々な面で不思議な選択です。
ニンジャスレイヤー
ディスカバー・ジャパン!ディスカバー・ニンジャ!
ニンジャスレイヤー 田畑由秋 わらいなく 余湖裕輝 ブラッドレー・ボンド+フィリップ・N・モーゼズ ブラッドレー・ボンド フィリップ・N・モーゼズ 本兌有 杉ライカ 本兌有+杉ライカ
名無し
ディスカバー・ジャパン!ディスカバー・ニンジャ! ページの隅々からあふれだす「スリケン」「カチグミ・サラリマン」「スモトリ」といった謎の日本語に心を鷲づかみにされる『ニンジャスレイヤー』。ケバいアメリカ産のお菓子のような装丁で、本屋で異彩を放っていたこの『ニンジャスレイヤー』、コミック版も予想以上にぶっ飛んでいて、私もう夢中でございます。  『ニューロマンサー』がチバなら『ニンジャスレイヤー』の舞台は近未来のネオサイタマ(ちなみにネオサイタマは東京湾に浮かぶ“人工島”です)。犯罪組織「ソウカイ・シンジケート」が跋扈する「マッポー」の世にあって、超人的な身体能力を持ち「カラテ」と「ジツ」を操る超人的な「ニンジャ」は大企業の手先として数々の荒事をこなします。主人公は・ニンジャスレイヤーことフジキド・ケンジ。妻子をニンジャに殺され自身も重傷を負った彼は、今際の際にニンジャ・ソウルに憑依され、ニンジャを憎むニンジャとして生まれ変わります。  この、サイバーパンク好きにはたまらない設定と、確かなアクションシーンが否応なく気持ちを盛り上げるうえに、いわゆる、外国人の間違った日本観によってつくられたステキ世界&日本語が、これまでのエンターテイメント作品ではなかった、謎の娯楽性を発揮します。  物語冒頭、ソウカイヤニンジャのアーソンと、彼を襲撃したニンジャスレイヤーが対峙する緊迫したシーン、ニンジャスレイヤーはいきなり「ドーモ はじめまして ニンジャスレイヤーです」とオジギします。アーソンも「ドーモ ニンジャスレイヤー=サン アーソンです」とオジギを返します。このあいさつは、ニンジャの礼儀として古事記にも書かれていることで、決しておろそかにはできないのです!!  全くの別世界ではなく、日本と関係しているけれど実態とはまったく違うエキゾチック・ジャパンは、一度嵌り込むと止まらなくなります。女性主人公の一人称が「アタイ」。何かというと「ユウジョウ」を繰りかえすサラリーマンや女子高生。謎の「オリガミ部」……。  まるで、キリシタンに伝わるキリスト教が、永年の鎖国によって独自の信仰・カクレキリシタンとなったのと同様といってしまうのは、やっぱり言いすぎなようなのでやめますが、ガラパゴス進化のような楽しみを味わえる一冊といえましょう。